欧州委員会は2024年10月2日、森林破壊防止のための調査(デューディリジェンス)の義務化に関する規則(EU Deforestation Regulation、以下「EUDR」という)の適用を1年延期とする提案を行った。欧州理事会および欧州議会からの承認が得られれば、規則が適用されるのは大企業については25年12月30日から、中小事業者については26年6月30日からとそれぞれ1年延期されることになる。
EUDRは、牛、カカオ、コーヒー、パーム油、ゴム、大豆、木材の7品目および派生製品について、これらの生産が森林破壊(deforestation)を引き起こしていないことの調査と報告を義務付けるものである。事業者は、調査の結果、対象製品が森林破壊に該当しない製品であることを証明できなければ、当該製品のEU内流通は不可となる
(注1)。
(注1)詳細は海外情報「森林破壊防止のための調査の義務化に関する規則が発効(EU)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003571.html)をご参照ください。
今回の提案の背景には、大企業への適用が24年12月30日に迫る中で、米国、ブラジル、インドネシアなど該当する産品の輸出国や一部の加盟国から、9月時点で実施に関する詳細な情報が公開されていないことや準備期間が十分でないことなどを理由に、適用延期を求める声が上がっていた。また、9月25日には、EU最大の農業生産者団体である欧州農業組織委員会・欧州農業協同組合委員会(Copa-Cogeca)など域内の28関係団体が共同声明を発し、実行に向けた具体的な内容が明らかにされていない状況では、適切な準備を行うことは不可能であり、拙速に実施されれば、食品・飼料・木材製品などのサプライチェーン、農村経済、消費財などに深刻な悪影響を及ぼすため、適用開始を遅らせる決定をできるだけ早く行うよう要請していた。
欧州委員会はプレスリリースの中で、「こうした懸念の声は認識しており、今回の1年の適用延長の提案は、世界中の関係者を支援し、円滑な実施に移行するためのバランスの取れた解決策である。また、EUDRの目的や内容に疑問を投げかけるものではない」としている。