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欧州委員会、食肉の短期的需給見通しを公表(EU)

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 欧州委員会は2024年10月8日、農畜産物の短期的需給見通し(注1)を公表した。このうち、24年の食肉(牛・豚・鶏)の需給見通しの概要について紹介する。
 
(注1)欧州委員会は、農畜産物の短期的需給見通しを年2回(24年に年3回から年2回に減少)、中期的需給見通しを年1回(12月)公表している。

牛肉

 2024年の牛肉生産量は、前年比0.5%減の642万9500トンと見込まれ、前回(5月)の見通しから1.9ポイント上方修正された(表1)。24年上半期の牛肉は、トルコ向け輸出の増加や中欧での放牧条件の悪化による早期出荷により前年同期比3.0%増加したものの、イタリアやスペインなどで肥育素牛が減少していることから、年末にかけて減産が見込まれている。
 EU産牛肉の枝肉価格は高値で推移すると見込まれるため、肥育生産者の収益性は改善する一方、消費は減少し、同年の消費量は前年比1.5%減の616万9900トン(一人当たり9.6キログラム)と予測されている。
表1
 同年の牛肉輸出量は、生産量が減少傾向であるものの、23年3月に再開したトルコ向け輸出などが堅調に推移することが見込まれることで、前回見通しから7.0ポイント上方修正され、前年比10.0%増の57万7300トンと予測されている。
 同年の牛肉輸入量は、ブラジルからの輸入が減少していることなどから、前回の見通しから4.0ポイント下方修正され、前年比2.0%減の31万7700トンと予測されている。

豚肉

 2024年上半期(1〜6月)の豚肉生産量は、ポーランド(前年同期比9.3%増)やハンガリー(同8.3%増)などで前年同期を上回ったことから、EU全体で同1.7%増の1053万1120トンとなった。24年の豚肉生産量は、EU域内外の需要の低迷などにより、前回見通しから0.1ポイント下方修正され、前年比0.5%減の2072万4400トンと予測されている(表2)。
 同年の豚肉消費量は、例年夏場にみられる需要の増加がみられず横ばいで推移しており、年末にかけて1人当たりの消費量は減少すると見込まれるため、前回見通しから0.1ポイント下方修正され、前年比0.2%減の1789万8600トン(1人当たり30.9キログラム)と予測されている。
表2
 同年の豚肉輸出量は、中国での需要減退などによる輸出の減少が見込まれる一方、韓国や低価格品の市場であるフィリピンやベトナム向けの輸出が堅調であることから、前回見通しから1.5ポイント上方修正され、前年比2.5%減の293万2400トンと予測されている。
 同年の豚肉輸入量は、主要輸入元である英国からの輸入は減少が見込まれるものの、新たな自由貿易協定(FTA)が発効したチリからの輸入(注2)が増加するため、前回見通しから0.5ポイント上方修正され、同1.5%減の10万6600トンと予測されている。
 
(注2)海外情報「EUとチリがFTAに関する新協定に署名(EU)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003710.html)をご参照ください。

家きん肉

 2024年の家きん肉生産量は、高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)の同年前半の発生が少なかったことに加えて、飼料価格の下落や家きん肉価格が高値で推移することから生産量の増加が見込まれ、前回見通しから2.3ポイント上方修正され、前年比4.0%増の1392万0600トンと予測されている(表3)。
 同年の家きん肉消費量は、旺盛な需要と生産量の増加により、前回見通しから1.6ポイント上方修正され、前年比3.8%増の1287万1400トン(1人当たり25.1キログラム)と予測されている。
表3
 同年の家きん肉輸出量は、英国やアフリカ、アジア向けの輸出が堅調に推移することが見込まれることから、前回見通しから4.0ポイント上方修正され、前年比3.0%増の188万3300トンと予測されている。
 同年の家きん肉輸入量は、主要な輸入元であるブラジル、ウクライナなどからの輸入が減少していることから、前回見通しから3.5ポイント下方修正され、前年比0.5%減の83万4100トンと予測されている。
【藤岡 洋太 令和6年10月18日発】
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