中国山東省で現代施設農業発展大会が開催(中国)
日本貿易振興機構中国青島事務所ほか日中韓の関係機関は2024年10月18日、山東省潍坊市で「2024現代施設農業発展大会」と題する政府関係者および業界関係者による講演会と、農業施設や農業機械、即売会などの展示会イベントを開催した(写真)。
講演会では中国農業農村部元副部長、同部規画設計研究院施設園芸研究センター主任、オランダ施設農業協会中国代表のほか、中国野菜協会会長などが冒頭挨拶と講演を行った。以下に、中国野菜協会会長の講演概要を紹介する。
1 中国の現代施設農畜産業の定義および位置付け
中国の現代施設農畜産業とは、先端的な情報通信技術、生物関連技術、施設整備技術および先進的な経営管理モデルを利用し、動植物の成長を調節できる環境を整え、一定程度自然への依存を脱却して、高効率な生産を行うことを言う。施設園芸、施設畜産、水産物の養殖などのほか、これら生産を支えるサービス提供施設も含む。
現代施設農畜産業は、食料の安定供給を可能とする極めて重要な産業形態である。また、施設農畜産業による大規模化、標準化、機械化、デジタル化および環境保全の進展は、農業の現代化を進める要である。
2 これまでの成果
現代施設農畜産業は主に次の4つの成果を上げてきた。
(1)施設利用の拡大
2023年末時点で中国の施設農畜産業面積は4000万ムー(266万8000ヘクタール(注))に及び、そのうち野菜が80%以上を占める。これは、世界の施設農畜産業面積の80%に当たる。また、豚、乳牛および鶏の施設利用率は、それぞれ68%、76%、79.7%(鶏卵鳥)および83.3%(ブロイラー)である。
(2)生産能力の向上
2021年末時点で施設野菜の栽培量は2億3000万トンに及び、全国の野菜総生産量の30%に達した。また、施設で生産された肉類、家きん卵類、乳・乳製品類の生産量はそれぞれ9748万トン、3563万トンおよび4197万トンであり、全国の生産量の約7割を占めた。
(3)技術および施設整備の導入・改善
施設農畜産業では、栽培管理の自動制御、施水施肥の一体化、動植物の成長動態の観測などのほか、インターネット、AI技術など、より新しい技術の導入も加速している。例えばハウス栽培における機械化導入率は42%以上となった。
(4)資源の節約
水、用地および施肥の節約が進み、露地に比べて水利用で50%の節約が、農薬および肥料の使用量ではそれぞれ30%および20%以上の節約が実現した。省力化も進み、例えば全自動鶏舎では必要とする労働力が約4分の1に減少し、総合生産効率が3.75倍向上した。
(注)1ムーを0.0667ヘクタールとして換算。
3 今後の取組方向
今後、取り組むべき方向は、主に次の3つである。
(1)生産能力の安定化に重点を置いた施設の高度化
老朽化した、あるいは分散している施設を集中的に改築、改装し、より省エネルギーで、かつ、高度な技術を利用した施設基地を建築すること。また、大都市周辺により大規模かつ高度な施設の建設を進めることなどを指す。
(2)効率化に重点を置いた施設および経営モデルへの転換
(3)備蓄、鮮度保持、乾燥などの機能を有した物流施設・拠点の建設
畑から消費地まで、産業チェーン全体で効率的な施設を整備することにより、農副産物の供給における損失と無駄の抑制を目指す。
また、今後さらに利用を促進すべき技術は、主に、1)ビッグデータの分析と活用、2)クラウド技術の利用、3)農業のIoT(Internet of Things。すべてのモノがインターネットに接続され、情報が相互に共有される仕組み)の実現、4)デジタル灌漑(かんがい)の実現、5)無人生産・観測の実現、6)農業機械の自動化、7)栽培管理の精緻化、8)e-コマースとの連動の強化、9)金融サービスの利用の促進、である。
このうち、4)デジタル灌漑とは、施設内に設置した観測機器などによりリアルタイムで土壌の水分含有量や作物が必要とする水量を測定し、自動計算・調整機能によって放水量および時間を管理することをいう。より正確に放水の過程を管理できるため、水使用量の節約、放水効率の向上のほか、作物のより好ましい生育が可能となる。
5)無人生産・観測とは、主にドローンによる農薬散布、播種などをいう。ドローンによってリアルタイムに写真や映像を見ながら観測と分析を行うことができるため、病害虫の発生状況も即時に把握することができる。また、ドローンを利用して生育状況の観測を行えば、さらに多岐にわたる問題の早期発見も可能となる。
8)e-コマースとの連動とは、インターネット上の仮想店舗、物流、保管など、物の流れにおいて重要な節目でデータを集積することにより、農畜産品の生産から販売までの全過程の追跡および管理を可能とすることをいう。これによって、情報の非対称性が緩和され、また、中間コストが削減できることにより、農畜産物の流通効率と市場競争力、両方の向上を図ることができる。同時に、これらの過程を全体的に引き上げることによって、物流コストの減少のほか、農畜産物の品質と安全性の向上も可能となる。
【調査情報部 令和6年10月25日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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