NZ、ドイツと温室効果ガス削減に関するパートナーシップを締結(NZ)
ニュージーランド(NZ)政府は2024年10月25日、ドイツと世界的な農業由来の温室効果ガス(GHG)排出削減に取り組むことを目的としたパートナーシップを締結したと発表した。近年、NZは伝統的な友好国であるドイツとGHGの関係で協力体制を深めており、今回のパートナーシップ締結は、23年9月にドイツ連邦食料・農業省(EBML)やNZ第一次産業省(MPI)などの支援を受けて立ち上がった「NZとドイツの気候変動に関する農業対話(Agri-DENZプロジェクト)」のさらなる発展を目的としている。両国ともに期限を設けたGHG排出削減目標(表1)を掲げていることから、農業のGHGに関するグローバル・リサーチ・アライアンス(GRA)(注1)をはじめとした世界的枠組みのみならず、地域特性が異なる両国間の関係強化を図ることにより、気候変動に対応した食料システムの確立を加速させる狙いがあると考えられる。また、本プロジェクトは、グローバルサウスを中心とする第三国との定期情報交換が目的の一つとなっており、プロジェクトの成果を共有することで、地球規模のGHG排出量削減に寄与することも意識しているとみられる。
(注1)2009年12月にコペンハーゲンで開催された気候変動枠組条約第15回締約国会議(COP15)において、ニュージーランド(NZ)が中心となって設立された農業分野のGHG排出削減等に関する研究ネットワーク。
Agri-DENZプロジェクト
本プロジェクトは、主にNZ農業温室効果ガス研究センター(NZAGRC)(注2)とドイツのチューネン研究所(注3)間の相互協力によって、地球規模の気候変動の影響に対する解決策を開発することを目標とし、三つの成果分野を設定している(図)。成果分野①の科学技術交流の枠組みでは、現在進行している研究プロジェクトが五つあり、土壌管理による炭素貯留方法の開発が重点的に進められている(表2)。
(注2)2009年にMPIが設立した研究開発機関。NZ独自の農業システムと環境から排出されるGHGを削減するためのアイデアと技術を生み出すことを目的としている。
(注3)正式名称はヨハン・ハインリッヒ・フォン・チューネン研究所。EBML傘下の連邦研究機関のうちの一つ。15の研究所を持ち、主に農村地域・農林漁業に関する研究と政策提言を行っている。
また、成果分野③の第三国とのネットワーキングについては、本プロジェクトから資金提供を行い、2024年4月に「サハラ以南における食品ロスおよび食品廃棄物防止に関するワークショップ」をケニア・ナイロビで開催している。本取り組みは、15年に開催されたG20首席農業研究者会議(МACS―G20)(注4)で発足した「食品ロスおよび食品廃棄物に関する協力イニシアティブ」の活動の一環として実施されており、25年のG20議長国である南アフリカを招致して行うなど、単なる第三国への知識共有にとどまらず、地域ネットワークの強化を図る目的があるとみられる。
(注4)G20各メンバーや国際研究機関の首席農業研究者および農業研究行政官が参集し、世界における研究の優先事項を協議するとともに、各メンバーおよび国際研究機関の連携を強化することを目的とした会合。
【調査情報部 令和6年11月1日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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