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英新政権の農業関連予算案、予算規模は維持も生産者団体から批判の声(英国)

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 英国政府は10月30日、7月に発足した労働党新政権として初となる予算案を発表した。このうち、農業関連予算の概要は以下の通り。

農業関連予算規模は維持も、直接支払制度の減額措置は加速

 環境・食料・農村地域省(DEFRA)の2025/26年度(4月〜翌3月)予算は、前年度比2.7%増となる75億ポンド(1兆5226億円、1ポンド=203.01円(注1))が措置された。このうち、イングランドでのより生産的で環境的に持続可能な農業への移行支援、すなわち直接支払制度や持続可能な取り組みに対する奨励金制度(環境土地管理制度(ELMS)(注2))については、24/25年度および25/26年度の2年間で合計50億ポンド(1兆151億円)が措置され、従来と同程度の年間24億ポンド(4872億円)の水準が確保された。なお、この予算額には気象災害による大雨などの被害を受けた生産者への支援となる農業復興基金への6000万ポンド(122億円)の拠出が含まれる。
 DEFRAは、同日公表したプレスリリースの中で、直接支払制度の減額措置に関し、さらなる加速についても言及した。英国(イングランド)はEU離脱以降、28年までに直接支払制度を段階的に縮小・廃止する代替として、ELMSを拡充することとしている。また、25年以降の直接支払制度については、3万ポンド(609万円)の算定額に対して76%の削減が適用され、3万ポンドを超える部分については100%削減される。これは、21年以降の削減率の増加率を大幅に上回るものとなる(表)。一方、直接支払制度の所要額が減少することにより、ELMS予算は25/26年度には過去最高に達する見込みとしている。
 
(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2024年10月末TTS相場。
(注2)英国の農業関連政策の詳細は「EU離脱後の英国における畜産関連農業政策などの動向」をご参照ください。
表

相続税の課税措置を強化、生産者団体は不満を表明

 また、英国政府は、現行で最大100%の控除率が適用されている農業用・事業用資産の相続税について、課税措置を強化するとした。2026年4月6日以降、100万ポンド(2億円)の資産価額までは100%控除されるが、それ以上の資産価額については控除率が最大50%となり、原則40%の税率が適用される。例えば200万ポンド(4億円)の資産であれば、20万ポンド(4060万円)の相続税が課税されることとなる。
 今回の予算案についてイングランドとウェールズの農業界を代表する全国農業者連合(NFU)は、予算規模の維持は評価したものの、農家が事業を継続することを困難にし、食料生産コストを大幅に増加させる可能性があると強く批判した。
【調査情報部 令和6年11月8日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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