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中国農業農村部、肉牛乳牛生産の安定化に関する通知を公表(中国)

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 中国では、牛肉価格の下落が止まらない状況が続いている。今年に入り牛肉価格は11カ月連続で下落を続け、2024年9月第3週の牛肉平均消費地卸売市場価格は1キログラム当たり68.31元(1492円、1中国元=21.84円(注1))と、この5年で最低となった。このような状況に対し中国農業農村部は24年9月14日、肉牛および乳牛の飼養農家が赤字経営となり困難に陥っている(注2)として、「肉牛乳牛生産の安定化に関する通知」を発出した。

 (注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均為替相場」の2024年10月末日TTS相場を使用した。
 (注2)牛肉価格の動向と専門家の見方、また、6月に農業農村部が出された「肉牛生産の安定化に関する通知」については海外情報「中国農業農村部、肉牛生産の安定化に関する通知を公表(中国)」(令和6年7月31日発)を、同部が8月に実施した業界関係者などとの座談会については海外情報「中国農業農村部、乳牛および肉牛の生産現場の課題に対する対策を示唆(中国)」(令和6年8月29日発)をご参照ください。

「肉牛乳牛生産の安定化に関する通知」の概要

 「肉牛乳牛生産の安定化に関する通知」は、各地の農村農業部門ほか関連部門に対し、次の7つの対策において相互に協力し、飼養農家や関連企業から意見を吸い上げる仕組みを整え、その意見を常に聴取することで、まだ小さな芽のうちに問題を解決することを求めるものである。その主な内容は以下の通り。

(1)肉牛および乳牛の基礎的な生産能力の安定化
 肉牛については母牛の基礎的な生産能力を最優先事項とし、母牛群の頭数を安定的に管理しつつその品質向上も着実に加速することで、母牛の産出能力と繁殖効率を向上させること。
乳牛については、大規模農家や乳牛飼養合作社などの新しい経営形態を育成し、その施設整備の改善、優良な品種を良好に飼養する方策の普及、経営能力の向上を促すこと。

(2)飼養農家の飼料コストの確実な低下
 飼料コストを下げるため、飼料を適切に使い、適切に貯蓄する政策を促進すること。具体的には、発酵トウモロコシ殻、ウマゴヤシ、飼料用燕麦などの優良な飼料を主とし、各地域の特色ある飼料用植物を併用するとともに、飼料不足の発生を防ぐため、飼料生産の安定化や、その貯蓄、輸送のための基礎設備の建設などを加速すること。

(3)乳業における生産と加工の一体的な発展の推進
 乳資源の管理を確実なものとし、生乳の販売を安定化するため、生産と加工の一体的な発展を引き続き推進すること。具体的には、県(中国における基礎的な行政区)単位で生産能力の向上および優良化を進め、生乳大生産地の総合的な生産能力の向上を図るとともに、六次産業化を進めること。

(4)貸付措置の強化
 飼養経験が豊富で管理レベルも比較的高い農家は貸付信用レベルが高いとしてホワイトリストに列記するなどにより、金融機関が適切なリスク管理をしつつ融資ができるように促すこと。また、各地の農業農村部門は金融部門と積極的に協力し、牛や家きん、大型飼養機器などの動産を担保とする貸付が進むよう、抵当化と、そのための評価、譲渡、処分などの仕組みの構築を進めること。

(5)脱貧困地域および脱貧困住民による牛関連産業への支援の強化
 牛肉関連産業は、一部の経済未発展地区においては、脱貧困地域および脱貧困住民を支える重要な収入源となっている。個々の農家に有効な対策を実施することで、可能な限り牛肉などの価格下落がこれらの飼養農家に影響を及ぼすことがないようにすること。

(6)牛肉および乳製品の消費の促進
 新旧両方のメディアを総合的に活用し、ショートムービーのプラットフォームや公式ホームページ、スマートフォン・アプリケーション上の公式ページなどの宣伝媒体に、牛肉および乳製品の消費を促す欄を開設し、新鮮な牛肉および乳製品の品質や栄養価、その地域の特色ある牛肉飲食文化などを紹介することによって消費を促進すること。また、牛肉および乳製品に関する科学的な知識の普及を進め、「学生用乳製品」の普及や地元で利用できる消費券の発行などの方法によって消費を造ること。

(7)技術指導サービスの強化
 獣医学関連の支援機構、業界団体学術機関など各地の技術集団の能力を十分に発揮させ、これらの機関による農村訪問や飼養農家によるこれらの機関への訪問などを進めること。また、良質な飼料の効果的な利用や農業副産物の飼料化、精緻化された飼養管理、優良品種の選別、防疫など、生産過程における重要な節目それぞれについて、座学や現場指導などの技術指導を強化すること。

中国の牛肉および生乳の価格とコストの動向

 本通知公表の背景として、現在の中国における消費地卸売市場の牛肉小売価格や生産コストの動向を紹介する。なお、2023年の中国の牛肉消費量は約1027万トンであり、前年比4.0%の伸び率であった。業界メディアは、価格下落の最大の要因は供給過多にあるとしている。

(1)牛肉(骨を除く)の消費地卸売市場価格はこの36カ月間下落傾向にあり、2023年1月には過去最高の1キログラム当たり87.33元(1907円)となったが、同年7月には平均80元(1747円)程度、24年5月には同70元(1529円)を割り込むまでに下落した。

(2)生体牛(中程度の大きさ)の消費地卸売市場価格もこの36カ月間下落傾向にあり、2022年11月に最高の1キログラム当たり37.51元(819円)となったが、23年5月には同35元(764円)を割り込み、24年3月にはさらに同30元(655円)を割り込むまで下落した。

(3)牛肉の小売価格も下落を続けており、2024年の春節(旧正月。中国では年間を通じて消費が最も伸びる時期)以降、数カ月で下落幅は20%に達した。業界メディアによれば、この下落は輸入牛肉の供給過多により輸入牛肉の価格が下落したことに起因しており、輸入牛肉に品質で劣る国産牛肉の消費が落ち込み、そのために価格も下落したとされている。24年上半期の牛肉輸入量はすでに144万トン(前年同期比17%増)であり、そのうち5月の伸び幅が最大で前年同月比30%増にまで達した。

(4)生乳価格も下落しており、業界メディアは、生乳価格が損益分岐点を超えて下回ったために多くの乳牛飼養農家が乳牛の売却を行い、その数は2023年上半期で約90万頭に達し、またそれが牛肉として市場に出回ったことでさらに牛肉価格が低迷したとしている。また、24年8月に出荷された肉牛(1頭500キログラム換算)は平均で1頭当たり1062元(2万3194円)の赤字となった。
【調査情報部 令和6年11月8日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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