畜産 畜産分野の各種業務の情報、情報誌「畜産の情報」の記事、統計資料など

ホーム > 畜産 > 海外情報 > 2024年 > 中国農業農村部、豚と牛の生産動向について見解を公表(中国)

中国農業農村部、豚と牛の生産動向について見解を公表(中国)

印刷ページ
 中国農業農村部は2024年10月25日、国務院新聞弁公室主催のメディア向け定例会である「第3四半期農業農村経済状況の紹介会」(注1)において、現下の豚と牛の生産動向について、記者からの質問に答える形で見解を示した。

 (注1)前回の第1四半期状況の紹介会については「中国農業農村部、養豚生産能力の調整状況に関し見解を公表(中国)」(令和6年5月8日発)を、また、24年下半期の中国畜産業の生産と供給に対する見通しについては「中国農業農村部、畜産業の「質の高い発展」についてメディア懇談会で説明(中国)」(令和6年8月8日発)をご参照ください。

中国の第4四半期の豚生産見通しと政府の支援方針

 記者からの質問は、(1)第4四半期(2024年10〜12月)の豚生産の見通し、(2)豚生産の安定化のために今後中国農業農村部が行う措置についての見解、というものであった。
 これら質問に対して同部所属の李敬輝氏は、「豚肉は市民生活にとって不可欠な産品であり、メディア含め多くの方が豚の価格と供給状況に関心を持っている」とした後、主に次のように回答した。

1 第4四半期の豚生産見通しについて

 全国の繁殖用母豚飼養頭数は、2024年第3四半期(7〜9月)末で4062万頭であり、これは3900万頭という適正な飼養頭数(注2)の104.2%に相当する。つまり、合理的な範囲に収まっているということである。
 子豚の頭数を見れば、生産頭数は24年3月から増加し、一般的に飼養に要する6カ月の期間を加味すると、ちょうど秋冬の消費が伸びる時期に供給されることになるため、市場の需給バランスに合った状態にあると言える。
 他方で、今年から母豚の生産効率が向上し、子豚の産出頭数がこの数カ月間比較的早く増加していることを考えると、これらの子豚が市場に出回るのは来年の春節(旧正月。中国では年間を通じて消費が最も伸びる時期。25年は1月29日)明けの、例年消費が落ち着く時期に重なってしまうと予想される。そうなった場合、豚肉価格は大幅に下落する可能性がある。養豚に携わる者はこのことに注意を払い、合理的な生産管理を行う必要がある。

 (注2)農村農業部が適正とする繁殖用母豚の飼養頭数については海外情報「中国農業農村部、豚の飼養頭数調整のための方策を改訂(中国)」(令和6年3月12日発)をご参照ください。

2 今後、中国農業農村部が行う措置について

 中国農業農村部は、「政策によって生産量を安定化させ、市場によって供給量を調整する」方策を堅持する。具体的な措置は次の3点に集約される。

(1)市場観測の強化
 豚の生産と市場の動向を常に観測、分析し、適時に公的情報を発信し、市場見通しを適切に指導する。

(2)豚肉生産量の安定化
 中央と地方の各政府関係部門がそれぞれの責務を果たすよう、責務を明確にし、繁殖用母豚という元栓の管理を適切に行う。豚の生産量を合理的な水準に収め、来年の春節以降に予想される生産過剰による豚肉価格の大幅な下落問題に備える。

(3)疾病の予防
 秋冬は豚の疾病が発生し易い時期のため、豚の生産、輸送、と畜に関するすべての工程において、清掃および消毒を徹底し、疾病に対する観測を強化し、適時に疾病の発生リスクを感知できるようにする。

中国の肉牛および乳牛の生産動向と政府の支援方針

 記者からの質問は、(1)現下の肉牛および乳牛の生産動向についての見解、(2)今後、中国農業農村部が行う飼養農家を支援するための措置についての見解、というものであった。
 これら質問に対して同部副部長の張興旺氏は、「牛市場は今年最も重要な課題の一つであり、かつ、困難なものの一つである」とした後、主に次のように回答した。

1 生産動向についての見解および政府による支援の状況について

 牛の生産動向は、飼養農家の収益に留まらず、肉牛産業全体の健全な発展にも関連する。最近の度重なる努力によって、肉牛の飼養頭数は調整が進み、乳牛の飼養頭数の増加速度も緩やかとなり、価格が緩やかな上昇傾向に転じたことから、飼養関係者の赤字状態もある程度緩和されている。
 このように、肉牛および乳牛の生産問題が突出していることについて、中国農村農業部は今年、牛の生産動向を高度に注視し、数度にわたる専門会議を開催したほか、主要生産地区に専門チームを派遣して調査および指導を行ってきた。この成果に基づき24年9月には、「肉牛乳牛生産の安定化に関する通知」(注3)として支援策をとりまとめた。地方政府も生産補助など各地の実情に合わせた支援を行っており、政策効果が連動的に表れていることで、生産現場の困難な局面はある程度緩和されている。

 (注3)「肉牛乳牛生産の安定化に関する通知」については海外情報「中国農業農村部、肉牛乳牛生産の安定化に関する通知を公表(中国)」(令和6年11月8日発)をご参照ください。

2 今後、中国農業農村部が行う措置について

 中国農村農業部は引き続き、各地が「肉牛乳牛生産の安定化に関する通知」など関連政策を確実に実行するよう指導する。通知の実施における重点は、次の「5つの強化」である。

(1)観測の強化
 適切な動向の分析を行い、業界動態に関するデータを適時発信することによって飼養関係者による牛の適切な生産調整を指導する。

(2)生産安定化の強化
 母牛群の頭数を安定的に管理することを基本として、母牛の産出能力と繁殖効率を向上させる。生産量を管理してこそ持続的な発展が可能となる。

(3)飼料作物の供給保障の強化
 飼料を適切に使い、適切に貯蓄する政策を強化する。

(4)金融支援の強化

(5)技術指導サービスの強化
【調査情報部 令和6年11月8日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9530