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中国農業農村部、デジタル農畜産業の発展に関する指導意見を公表(中国)

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最終更新日:2024年11月21日

 中国農業農村部は2024年10月25日、「デジタル農業の大幅な発展に関する指導意見」(以下「指導意見」という)を公表した。これは、7月に開催された「20期3中全会」(毎年7月に開催され、その年の景気対策などが話し合われる中国共産党中央委員会全体会議)において、「三農」(農業、農村および農民)と「ネットワークによる強国」の重要性が再認識されたことを受けたものである。
 指導意見の「農業」は畜産業および水産業を含み、「デジタル農業は現代農業を発展させるための重要な切り口であり、農業強国建設の戦略的な要である」としている。以下に主な内容を紹介する。

1 全体的な考え方

 20期3中全会などで示された考え方の実現に当たっては、わが国の農業の実情に基づき、インターネット、ビッグデータ、人工知能(AI)、ロボットなどの情報技術を農業農村領域で全方位的、かつ、産業チェーン全体で普及、応用することを主軸としつつ、農業に関するすべての生産資源の生産効率と農業農村サービスの機能を引き上げることを主要な目的として取り組んでいく。
 デジタル農畜産業を推進することで、2030年までに、核心的な技術革新を遂げ、技術などの標準化や基本的な数値に関する検測の基準や仕組みを体系化し、先進的で、かつ、品質が信頼できる国産の技術・施設が広く利用されるようにする。また、農畜産用地の生産効率化、労働生産性および資源利用率を引き上げ、行政サービスの数値化を進めるなどにより、農業生産のデジタル化率を35%程度までに引き上げる。さらに、35年までの展望として、産業チェーン全体のデジタル化を進めることにより、農業生産のデジタル化率を40%以上に引き上げる。

2 デジタル技術の応用レベルの全方位的な引き上げ

(1)主要作物生産の精緻化
 「良い種苗、良い生産方法、良い施設機器、良い生産地」といった従前の方式への、最新のデジタル技術の効果的かつ有機的な活用を推進する。より正確なかん水・施肥、デジタル農業機械の配備、無人ドローンの利用および数字に基づく意思決定システムなどを一体的に実施し、耕作、生産、管理、収穫などの過程をより精緻に行う。衛星などの観測資源を積極的に活用するなどにより、気象、種苗の生育状況、農地の水分含有量、病害虫の発生状況、自然災害などの観測と予測のネットワークを合理的に整備する。

(2)農業生産施設のデジタル化の推進
 施設農業が伝統的に優勢な地区では、老朽化して効率性が悪くなった施設のデジタル化を集中的に推進し、リモートコントロール、かん水と施肥の一体的実施などのネットワーク化を進める。大・中都市の近郊およびその周辺の生産地では、地域の実情に応じて温室と植物工場などの現代生産施設を隣接させるなどにより、全生産工程における国産技術の導入を進め、これらのデジタル化を推進する。さらなる大規模化を図る事業主体については、生産工程を含む経営全体に関する情報管理システムを応用し、合理的な生産計画の策定、生産する品目・品種構成の最適化とそれらの市場供給時期の最適化などを行うことを奨励する。

(3)畜産業のデジタル化の推進
 規模化とデジタル化の両方を進め、生育環境の精緻なコントロール、家畜・家きんの生育情報の観測、AIによる疾病発生状況の診断とその拡散防止などの技術を一体的に活用するとともに、より精緻な給餌などのAI設備の広範な利用を推進する。飼料原料の栄養価および家畜・家きんの動きに応じて必要となる栄養量に関するデータベースの整備を加速し、国産飼料の配合に関するソフトウェアを普及する。

(4)漁業のデジタル化の推進
 淡水養殖については、工場化あるいは大規模化の養殖モデルに対し、デジタル化の推進を加速し、地域の実情に応じて、デジタル技術による魚群の生育状況の観測、水中の酸素含有量の増進、給餌の精緻化、疾病発生状況の診断とその拡散防止や循環型水処理施設の整備などを進める。

(5)種苗・育苗のデジタル化の推進
 国家レベルおよび省レベルで、生産現場における農作物、家畜・家きん、水生動物の遺伝資源データバンクのデジタル化を加速化する。研究機構と民間企業が連携したデジタル育種プラットフォームの建設を支持し、生産現場での経験に頼った育種からデジタル化による育種への転換を推進し、育種周期を有効に短縮する。植物の遺伝資源評価センターや家畜・家きんの性能測定センターなどの研究データの共有を進め、これらの評価、測定の効率化を図る。これらによって、中国の種苗大デジタル・プラットフォームを完備し、動植物の品種に関する証明制度や、種子についてのトレーサビリティ管理を模索する。

(6)産業チェーン全体のデジタル化の推進
 「インターネット+(プラス)」の政策を維持し、市場ニーズに応じた生産の精緻化を進める。卸売市場と加工流通関連企業のデジタル化を促進し、農畜産物の等級に応じた選別、品質測定、先進的な加工包装や鮮度保持施設などを完備した高度な加工・貯蓄・輸送モデルを実現する。

(7)農業農村サービスのデジタル化の推進
 農業と農村に関するビッグデータ・プラットフォーム、および各地の土地利用の状況を1枚の地図に落とし込む「一枚地図の整備」の取り組みを加速し、その地域における農業と農村に関する各種行政サービスのデジタル化の基盤を構築する。例えば、農業に関する防災、減災、災害発生時の対応のため、農村に属する共有資産(農地や宅地)の管理や貧困を脱した地域における反貧困政策に関する管理に関するデータの共有化などを進める。

3 デジタル農業技術の刷新と先行利用の加速化

(8)施設設備関連技術の研究開発の加速化
 農業に関する感知器や専用チップ、AI学習、ロボットなど、核心的な技術に関する研究開発を深掘りし、農業農村領域においてもAIを活用したビッグデータ分析の飛躍的な活用などを進める。

(9)デジタル農業活用モデル地区の建設

(10)デジタル農業活用支援の体系的な提供

4 デジタル農業関連産業の健全な発展を秩序的に推進

(11)標準化の加速
 デジタル農業に関して共通、かつ、要となる技術の標準化を加速するとともに、共通する技術の規範化を進める。

(12)デジタルデータの確保の強化
 情報技術を利用して農業農村領域における統計的な観測、また、その観測データの収集能力を引き上げる。産地モニターなどによるデータ収集ネットワークやインターネットなどにより各地の生産データを即時に収集するとともに、データ資源の目録を完備し、行政のデータに関する資源の共有、享受を進めることで、データの利活用を強く促す。

(13)デジタル人材育成の強化

5 組織的な実施の強化

(14)各地の行政機関による組織的なリーダーシップの強化

(15)補助金や融資、政府買い上げなどによる支援の強化

(16)経験の共有、交流の実施
 先進的な取り組み事例の視察や事例の研究などによって先進的な経験をよく学ぶとともに、その普及、宣伝を進める。また、農業領域における国際基準策定への参画などを行い、国内のデジタル農業関連の企業の国際市場への進出を支援する。

【調査情報部 令和6年11月21日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9530