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中国農業農村部、病死した家畜・家きんの無害化処理に関する通知を発出(中国)

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 中国農業農村部は2024年11月1日、「病死した家畜・家きんの無害化処理に関する業務のさらなる強化に関する通知」(以下「農業農村部通知」という)を各地の農業農村部門に対して発出した。
 中国の病死した家畜・家きんの無害化処理については、14年に国務院弁公庁が公表した「病死した家畜・家きんの無害化処理の枠組みの構築に関する意見」(以下「国務院意見」という)から制度化が進んできた(注1)。また、今年7月には中国人民政治協商会議(注2)全国委員会委員が「病死した家畜・家きんの無害化処理業界の高度な発展を推進することの建議」を出していた。
 以下、農業農村部通知およびその制度の基本を形作っている国務院意見、それぞれの主な内容を紹介する。

 (注1)病死した家畜・家きんの無害化処理については、2020年2月に中国農業農村部、中国財政部が連名で「病死した家畜・家きんの無害化処理業務をさらに強化することに関する通知」を発出し、22年5月に「病死した家畜・家きんと病害家畜・家きん産品の無害化処理管理弁法」が制定された。
 (注2)全国人民代表大会と合わせて「両会」と呼ばれる中国の最高意思決定機関の一つであり、中国共産党が標榜する多党協力と政治協商を体現する重要な会議。略称は「政協会議」。その全国委員が特定の行政分野に対して提言を行った場合、提言に関する分野の担当政府機関はその回答を公式ホームページ上で公開することとなっている。

農業農村部通知の背景および主な内容

 近年、各地で病死した家畜・家きんの無害化処理の枠組みの最適化が進み、関係部門の業務遂行システムが整備されつつあるものの、一方で、一部地域では責務が全うされていない。例えば、死亡家畜の不適切な処理や、殺処分した罹患家畜の頭数に応じて支払われる補助金支払の遅延などの問題が依然として存在し、疾病の伝染と環境汚染の潜在的なリスクが増加していることから、関連法令を履行し、病死した家畜・家きんの無害化処理業務をさらに強化すべく本通知を発出した、とする。
 通知の主な内容は以下の通り。

(1)無害化処理責任の厳格な遂行
 各省の農業農村部門は、国務院意見が規定する「各地方政府がその地方の処理に責任を負うこと」との属地責任に基づいて着実に責務を果たすこと。

(2)無害化処理の枠組みの適切化
 各省の農業農村部門は、地方の実情に応じて病死した家畜・家きんの無害化処理施設の合理的な配置を行うこと。具体的には、これらの仮集積施設を適切に配置し、無害化処理のカバー率を安定的に向上させ、病死した、または罹患した家畜・家きんの資源として再利用するための組織的な生物安全リスク調査評価を展開し、疾病の感染リスクを適切に遮断すること。

(3)無害化処理監督の強化
 各省級の農業農村部門は、台風、地震、洪水などの自然災害が発生したときは、直ちに被災地区において災害に起因して死亡した家畜の組織的な収集および無害化処理を指導し、徹底して洗浄・消毒を展開すること。
病死した家畜・家きんの無害化処理に関する情報化とその管理を加速させ、飼育から処理までの全工程のデータ化や、データを用いた統計分析、AIによる疾病発生予測の警報業務などを強化するとともに、これらのデータを無害化処理に対する補助金見積額の主要な根拠とすること。
 病死した、または罹患した家畜・家きんの専用輸送車両登録制度を全面的に実施し、国家獣医衛生総合情報プラットフォーム上にある病死家畜・家きん無害化処理管理情報システムを通じて、適時に車両の所有権者の営業許可証、輸送車両の車検証、輸送車両の写真等の材料をアップロードし、システムへの登録を行うこと。

(4)無害化処理補助政策の実行
 中央政府と各省の政策資金の支給を受けた市または県は、3カ月以内に補助金を適切に給付すること。

(5)無害化処理後の産業利用の厳格な管理
 関連法規に合致するとの大前提の下、病死した、および罹患した家畜・家きんを無害化処理した物については、資源として産業的に再利用することを奨励する。その際、無害化処理した物の保管および受け渡しの過程は、すべてモニターによって監視するとともに、販売に関する契約、記録および監視カメラの映像を定期的に検査し、無害化処理した物の産業利用の透明性とトレーサビリティを確保すること。

国務院意見

 同意見は、中国の病死した家畜・家きんの無害化処理について初めて体系的に整理されたものであり、その基本的な制度の骨格は今でも踏襲されている。その主な内容を紹介する。

(1)基本的考え方
 無害化処理に当たっては、国家または上位の行政機関による統一的な計画と各地方政府の属地責任、政府による監督管理と市場の自主的な運営、財政による補助と民間保険の活用、集中的な処理と各主体の自己処理、これらをそれぞれ組み合わせることを堅持した上で、飼育、と畜、輸送、経営などの各工程を網羅する無害化処理の仕組みを早急に構築すること。

(2)当事者責任の強化
 家畜・家きんの飼養、と畜、輸送および経営に従事する法人または個人は、病死した家畜・家きんの無害化処理の第一の責任者であり、病死した家畜・家きんに対し適時に無害化処理を行うとともに各地の畜牧獣医関係行政部門に対し、家畜・家きんの死亡とその処理状況を報告する義務を負う。
 大型の飼養施設およびと畜場には、病死した家畜・家きんの無害化処理施設の併設を奨励し、また、これらの施設は、地方政府が組織的に収集した、または他の生産主体で発生した家畜・家きんについて、委託を受けて有償で無害化処理を行うことができるものとする。
 個人などが少数の病死した家畜・家きんを自ら処理することについては、各地方政府が関連規則を制定し、清潔・安全に処理し、かつ、環境を汚染しないことを確保すること。

(3)属地管理責任の実行
 地方政府は、その地区の病死した家畜・家きんの無害化処理に対しすべての責任を負う。病死した家畜・家きんの収集、処理を行うだけでなく、適時に組織力を結集して病死した家畜・家きんの発生源を調査し、上級政府に報告を行うこと。省をまたいで病死した家畜・家きんを移動した場合には、農業部(注:14年当時。現在の農業農村部)が関係の中央の部門および地方政府による合同調査を組織すること。

(4)無害化処理の仕組みの整備および強化
 県級以上の地方政府は、その地区の家畜・家きんの飼育、伝染病の発生と死亡状況などに基づいて統一的な計画を策定し、病死した家畜・家きんに関する無害化の収集・処理の仕組みを合理的に整備すること。

(5)関連する補償政策の整備
 「実際に処理をした者に補助を与える」との原則に基づき、飼養頭数と無害化処理率に立脚した財政補助の仕組みを確立すること。各地において、病死した家畜・家きんの収集、処理施設の建設と実際の処理などの費用を総合的に勘案し、関連の財政補助、処理料金の徴収などの政策を制定すること。

(6)宣伝教育の強化

(7)違法行為の厳格な取締り

(8)組織的な指導の強化
 地方政府は、組織的な指導と統一的な調整力とを強化し、各工程の監督担当部門を明確にするとともに、担当職員の素質と法の執行レベルを向上させること。責任追及制を確立し、職務を果たさない職員の責任を厳しく追及すること。
【調査情報部 令和6年11月22日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9530