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中国農業農村部、豚肉市況と牛肉・生乳価格下落に関し見解を公表(中国)

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 中国農業農村部は10月25日、国務院新聞弁公室主催のメディア向け定例会である「第3四半期農業農村経済状況の紹介会」(注1)において、豚肉の市況と肉牛および乳牛産業に対する救済措置について、記者からの質問に答える形で見解を示した。

 (注1)中国農業農村部が直近で見解を示していた紹介会については海外情報「中国農業農村部、養豚生産能力の調整状況に関し見解を公表(中国)」(令和6年5月8日発)をご参照ください。

 記者からの質問は、1)価格が上昇に転じた豚肉の市況および第4四半期の市況に関する見解、2)価格の下落により多くの牛飼養農家が赤字に陥っている肉牛農家および酪農家に対する措置についての見解、というものであった。

豚肉の現下および第4四半期の市況に関する見解

 質問に対して中国農業農村部党組織成員の李敬輝氏は、「豚肉産品は国民の関心が高い食品」と述べた後、市況への見解および今後の市況安定化に向けた取り組みについて以下のとおり回答した。

1 農業農村部の調査によれば、2024年9月の豚肉価格は8月に比べて3.2%下落し、それまで連続していた豚肉価格の上昇は5カ月で打ち止めとなり、10月以降も小幅な下落が続いている。この理由は、上半期に生体豚の飼養頭数が増え出荷が増加したことにある。これに対して農業農村部は養豚企業、業界団体および専門家と協議を重ねた。今後、豚肉消費の増加時期に入ることから豚肉価格が大きく下落する可能性は低く、平均すれば豚1頭当たりの利益を確保することができるとの見方で一致している。
  注意を要することは、今年に入って母豚の生産効率も上昇し続けていることである。子豚の成長速度も速くなっており、出荷までの期間を6カ月とすると、現在飼育している豚が出荷されるのは来年の旧正月の後、すなわち豚肉消費が落ち込む時期に重なることが予想され、その際は豚肉価格が下落する可能性がある(注2)。生産の周期に十分な注意が必要である。

 (注2)ある中国業界メディアは、2024年1月から10月までの平均で1頭当たり204元(4304円、1元=21.10円)の利益があり、前年同期比では278元(5866円)の増加となったが、25年の旧正月(1月末から2月初旬)の後には赤字になる可能性がある、と報じた。なお、レートについては三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均為替相場」の24年11月末日TTS相場を使用した。

2 今後、市況の安定化に向けて、生産量と市場のニーズのバランスを取ることが極めて重要である。農業農村部では引き続き、1)需要動向の注視と観測結果に基づく速やかな指導、2)各地方行政レベルにおける飼養頭数に対する監督、3)疾病に対する指導の強化を行っていく。秋冬は豚が病気に罹患しやすい時期であり、出産、肥育、輸送およびと畜の各工程において、消毒を徹底し、疾病を予防し、かつ、疾病発生時には速やかに対処する。

肉牛農家および酪農家に対する見解

 質問に対して中国農業農村部副部長の張興旺氏は、「この質問は今年農業農村部にとって一番重要な問題であり、かつ、最も困難な課題である」と述べた後、以下のとおり回答した。

1 価格の下落により多くの牛飼養農家が赤字に陥っているというのは、中国の肉牛産業が今後健全に発展できるのか、ということに関わる問題である。昨年から続く牛肉価格の下落に対して多方面で多くの取り組みを行ってきた結果、最近では過剰生産のさらなる拡大は抑えられつつあり、価格も上昇傾向がみ見られ、赤字状況の改善が図られつつある。
  農村において、肉牛および酪農の問題が突出していることに対し、生産コストを下げるための取り組み、金融支援の強化など、農業農村部はあらゆる手段を講じて牛飼養農家を支援してきた。2024年9月に「肉牛乳牛生産の安定化に関する通知」(注3)を発出した後、主要生産地である内モンゴルや新彊ウイグル自治区などの省でも積極的な取り組みが行われ、牛の飼養に対する補助金や生乳の加工(粉末化)に対する補助金などが出されたことにより、牛飼養農家の問題は緩和されつつある。

 (注3)2024年9月に発出された「肉牛乳牛生産の安定化に関する通知」については海外情報「中国農業農村部、肉牛乳牛生産の安定化に関する通知を公表(中国)」(令和6年11月8日発)をご参照ください。

2 今後も「5つの強化」を中心に各種措置の確実な実施を進める。「5つの強化」とは、1)生産動向の監視、2)母牛の生産効率・繁殖効率の向上と母牛群の構成の適正化、3)飼料の供給保障、4)金融面での支援、5)技術指導、これらの強化である。
【調査情報部 令和6年12月2日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9530