中国農業農村部、化学肥料の供給と農業科学の発展に関し見解を公表(中国)
最終更新日:2024年12月4日
中国農業農村部は10月25日、国務院新聞弁公室主催の報道機関向け定例会である「第3四半期農業農村経済状況の紹介会」において、化学肥料の供給および農業科学の発展に必要な民間企業の活用について、記者からの質問に答える形で見解を示した。
記者からの質問は、1)秋は化学肥料の使用が最も多い時期であり、秋冬の播種に向けて今後も需要が伸びていく中での、化学肥料の市況への見解、2)農業科学の発展は企業と不可分の関係である、今後どのように企業を活用して農業科学の発展を支援していくのかについての見解、というものであった。
化学肥料の今後の市況に関する見解
質問に対して農業農村部総農園師の潘文博氏は、「畑に咲く一輪の花は、すべて肥料に支えられている」という言い回しを紹介した後、化学肥料の今後の市況に関する見解について以下のとおり回答した。
1 秋冬は化学肥料の使用量が増える時期であり、農耕地における総需要量は1380万トン、肥料総量に換算すれば約1900万トンに上る(注1)。化学肥料は重要な農業生産資材であり、収穫の増加分の40%以上、ひいては食料生産の安定に貢献している。政府はかねてから化学肥料の安定供給を極めて重視し、昨年と今年の2カ年にわたって一号文件(注2)で「農業資材の供給と価格の安定化に関する仕組みを整備する」ことを明記した。農業農村部としても関係行政機関と協力して、化学肥料の生産、輸送、貯蔵、貿易、市場管理および施肥といった多様な領域を対象に総合的な取り組みを進めてきた。今年に入り、化学肥料の供給は安定し、価格は下落傾向が見られ、食料の生産の重要な支柱となっている。
(注1)中国農業科学院などが発表した「中国農業緑色発展報告書2024」によれば、2022年の農業用化学肥料の総使用量は5079.2万トンで前年比2.2%減少し、7年連続で減少した。また、コメ、小麦およびトウモロコシの化学肥料使用率は41.3%(農薬使用率は41.8%)であった。
(注2)一号文件とは、中国政府が毎年公表する文書。その年に最も重視する政治課題が取り上げられるとされ、2004年からは二十年間毎年「三農」(農業、農村、農民)が主題になっている。
2 今後も農業農村部は化学肥料の供給と価格の安定に向けて、4つの措置をとる。すなわち、1)生産の安定化。重点企業が生産計画を達成することができるよう、石炭、電気および電気の使用を保障する。2)貯蔵の促進。需要が高い肥料を備蓄し、市場の状況に応じて放出、供給する。3)価格動向への監視の強化。4)科学的な施肥の強化。土壌分析の結果に基づく施肥や有機肥料の活用などにより、適切な施肥を推進していく。
民間企業による農業科学の発展に対する見解
質問に対して農業農村部副部長の張興旺氏は、「中国農政の今後の方針は、食糧保障と重要農産品安定供給能力の一層の強化であり、そのためには農業科学分野における科学技術の刷新と推進力とが極めて重要になる」と述べた後、以下のとおり回答した。
1 農業農村部は、政府方針の実現に向けて農業技術の刷新を極めて重要なものと位置づけ、技術体系全体のレベルアップと、民間企業主導による産学連携の枠組みが機能するよう支援を行ってきた。
例えば、企業が国家プロジェクトに参画し、重要な役割を果たすことを支持しており、育種分野におけるいくつかの重要なプロジェクトについては、参加機関のうち民間企業が全体の51%を占めている。また、民間企業主導によるプロジェクトも推進しており、農業新技術産業モデル地区などでこれら企業主導の農業科学技術刷新連盟などが創出されている。また、現代農業産業科学刷新センターなどが整備する農業科学に関する情報プラットフォームには、既に2700社に及ぶ高度な農業技術を有する民間企業が参加している。条件を満たす農業技術関連の民間企業には、株式市場への上場も推奨している。
2 今後、農業農村部はこれら農業科学関連企業のデータを整理し、わが国の農業分野はどの領域で競争力を有しているのか、潜在能力のある民間企業はどこかを洗い出し、対象とする技術領域をより明確にした上でこれら企業の支援を行っていくこととしている。今後もこれらの民間企業が直面する課題を適切に支援し、民間企業の自主的な技術刷新、その成果の利用促進などを進めていく。
【調査情報部 令和6年12月4日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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