豪州政府、すべての食肉輸出施設からの中国向け輸出再開を発表(豪州)
豪州連邦政府は12月3日、アルバニージー首相とコリンズ農林水産大臣他2大臣による共同声明として、中国が豪州の食肉処理・加工施設に対して行っていた輸入一時停止措置をすべて解除し、中国向け赤身肉の全面的な輸出が再開されたことを発表した。
中国は2020年半ばから22年初頭に豪州の一部の食肉処理・加工施設に対して輸入一時停止措置を講じていたが、23年12月に3施設、24年5月に5施設
(注)の停止措置を解除していた。現地報道によると、今回対象となった残りの2施設はクイーンズランド州のオーストラリアン・カントリー・チョイス(Australian Country Choice)およびジョン・ディー(John Dee)とされている。中国は、豪州と中国間の政治的緊張が高い時期に、「規制問題」を理由にこれら施設からの食肉の輸入を停止していた。
(注)詳細は、畜産の情報2024年7月号「24年第1四半期の牛肉生産量はわずかに減少」をご参照ください。
中国は豪州産牛肉の主要輸出相手国
豪州にとって中国は、米国、日本、韓国と並び主要な輸出先である。2019年の中国向け牛肉輸出量は約30万トン(輸出量全体の24%)と、豪州の最大の輸出先であった。しかし、豪州からの輸入の一時停止措置などの影響もあり、23年には約21万トン(全体の19%)に減少し、米国、日本に次いで3番目の輸出先となっている(図)。
中国の牛肉輸入量は、国内での牛肉生産量が増加基調にある一方、国内需要を満たすため、増加傾向で推移している(表)。23年の輸入実績を見ると、豪州からの冷凍および冷凍牛肉輸入量は22年と比較して増加しているものの、20年を下回っている。
連邦政府のコメント
今回の輸出再開についてアルバニージー首相は、「豪州の輸出業者、食肉処理・加工業者、生産者にとって素晴らしいニュースである。また、貿易や雇用にとっての勝利であり、連邦政府は常にそれを支持する」との声明を発表している。また、コリンズ農林水産大臣は、「2023/24年度(7月〜翌6月)に豪州は、農業、漁業、林業生産の70%以上を世界169の市場に輸出し、これまでで最も多様な貿易となった。過去12カ月間に豪州のすべての施設からの食肉停止が解除されたことで、今までの努力が報われた」との声明を発表している。
食肉業界団体の反応
豪州の食肉業界団体である食肉産業評議会(AMIC)なども、今般の中国による輸入一時停止措置の解除を歓迎する旨の声明を発表している。AMICのライアンCEO(最高経営責任者)は 「政府や中国の業界パートナーと協力しながら、たゆまぬ努力を続けてきた結果であり、豪州の食肉産業の品質保証および規制システムの強さを示している。さまざまな承認済み製品を通じて中国との取引を希望する豪州の食肉加工業者のアクセスをさらに拡大するのに役立つ」と述べている。
豪州の牧草飼育牛団体であるCattle Australiaは、「豪州産牛肉を世界中の消費者に提供し続けるため、中国や他の国々との継続的な対話を楽しみにしている」とコメントしている。
【田中 美宇 令和6年12月5日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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