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仏ラクタリス社、小売業者との価格交渉前に国内日用消費財向け生乳取引価格に合意(EU)

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 フランスの乳業最大手のラクタリス社(注1)は11月15日、フランス生乳生産者ラクタリス出荷団体(Unell)(注2)との共同声明で、2025年のフランス国内FMCG(日用消費財)向け生乳取引価格が合意に達したことを公表した。これによると、25年の国内日用消費財向け生乳取引価格は1000リットル当たり477ユーロ(1リットル当たり77円:1ユーロ=160.70円(注3))とされている。また、今回初めて、アニマルウェルフェアの向上と温室効果ガス排出量の削減を目的に、同4ユーロ(643円、1リットル当たり0.6円)のCSR(企業の社会的責任)奨励金が導入された。
 この合意によりラクタリス社は、早急に小売業者との価格交渉に入ることができるとしている。
(注1)ラボバンクによる乳業の売上高ランキングで、ラクタリス社は世界第1位に位置付けられている。海外情報「2023年の世界の乳業ランキングトップ20を公表(EU)」をご参照ください。
(注2)Unellは2012年、ラクタリス社に生乳を出荷するフランスの生産者などで設立された団体であり、17年にフランス政府から酪農部門の生産者団体(AOP:d'association d'organisation de producteurs)として認められ、ラクタリス社との価格交渉において大きな影響力を持つ。
(注3)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2024年11月末TTS相場。

 
 ラクタリス社が決定する生乳価格は、その内訳の5割が国内日用消費財向け、2割が輸出日用消費財向け、3割が粉乳などの産業用途向けで構成されている。同社は同価格の決定に先立ち、国際価格に左右される廉価な産業用途向けの生乳について、集荷量を削減するとの発表を行っていた(注4)
(注4)海外情報「仏ラクタリス社、フランス国内での生乳集乳量削減を公表(EU)」をご参照ください。

今回の合意の背景

 ラクタリス社が、早急に小売業者との価格交渉に入ることができるとした背景には、11月12日にフランス第3位の小売業者であるアンテルマルシェ社が、生乳生産者と乳業メーカーとの価格交渉が合意に達するまでは、乳業メーカーとの2025年の価格交渉を拒否するとのプレスリリースを発表していたことが挙げられる。

 アンテルマルシェ社は、ラクタリス社が小売店頭価格引き下げのため生乳取引価格を低く設定しているとの生乳生産者の訴えに言及し、同プレスリリースは生乳生産者を支援するとの公約に沿ったものとして、生乳生産者と乳業メーカーとの合意の期限を12月15日としていた。アンテルマルシェ社のコティヤール会長は、「生乳生産者が自ら受け取る価格を知らないうちに、乳業メーカーと小売業者とが価格交渉を行うことをやめる」と述べた。

 例年、小売業者と乳業メーカーとの価格交渉は、翌年の3月1日には終了するとされている。

生産者団体の反応

 フランスの酪農生産者団体である全国酪農生産者連盟(FNPL:Fédération  Nationale des Producteurs de Lait)は11月12日、生乳取引価格の交渉について、乳業メーカーが生乳生産者との合意後に小売業者と交渉することは当然のこととし、アンテルマルシェ社のプレスリリースを歓迎し、この2段階の価格設定をエガリム法に加えるよう働きかけていくとしている。
【渡辺 淳一 令和6年12月9日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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