欧州委員会は2024年10月2日、EUDRの円滑な実施のために適用開始を1年延期することを提案した。背景には、米国、ブラジル、インドネシアなど該当する産品の輸出国だけではなく、一部の加盟国やEU域内の業界団体からも適用延期を求める声が上がっていたことがある
(注2)。
EU理事会は24年10月16日にこの提案を承認したが、欧州議会では同年11月14日、適用の延期に加え、森林減少リスクに応じた国別の分類
(注3)に関して、従来の「高リスク」、「標準リスク」、「低リスク」の3分類に加えて、義務要件が大幅に緩和される「リスクなし」を新設することを含めた内容で改正案を議決した。これは欧州議会最大会派の欧州人民党グループ(EPP)が主導し、EUDRの実施に伴う事務負担の軽減を意図したものであった。
EU理事会と欧州議会の議決内容が一致していないため、この「リスクなし」の取扱いについて3者(欧州委員会、EU理事会、欧州議会)での協議が行われ、結果として今回、「リスクなし」の新設は行わず、適用延期のみでの合意となった。「リスクなし」分類の導入については、分類された国とされなかった国とで負担が大きく異なるため、反対意見が強かったとみられる。
(注2)海外情報「欧州委員会、森林破壊防止のための調査の義務化に関する規則の適用延期を提案(EU)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003933.html)をご参照ください。
(注3)EUDRでは、EU加盟国および第三国は、国全体またはその一部について、森林破壊のリスクに応じてリスク分類されることになっている。森林減少のリスクに応じて(1)高リスク、(2)標準リスク、(3)低リスクの3つのリスクに分類され、「高リスク国」には監視を強化する一方、「低リスク国」についてはより簡素化した調査が実施可能とされている。