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欧州投資銀行、農業分野で最大規模の融資パッケージを発表(EU)

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 欧州投資銀行(EIB)グループは2024年12月10日、EUの農業分野におけるグリーン投資や若手農業者などに対し、25年から3年間で総額30億ユーロ(4821億円:1ユーロ=160.70円(注1))の融資パッケージを展開すると発表した。
 EIBのカルヴィーニョ頭取は、同日にブリュッセルで開催されたEU農業アウトルック会議で「農業は欧州の経済と安全保障に重要であり、今回の融資パッケージはバイオエコノミー(注2)のバリューチェーン(価値を生み出す一連の流れ)と次世代の生産者の未来を確保するのに役に立つ」と述べた。
 EIBの発表によると、今回の融資パッケージは24年1月に発足した「EU農業の将来に関する戦略対話」の報告(注3)を受けてEIBグループが取り組む行動計画の一つとしている(注4)
 
(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2024年11月末TTS相場。
(注2)再生可能な生物資源やバイオテクノロジーなどを利活用し、持続的で再生可能性のある循環型の経済社会。
(注3)海外情報「EU農業の将来に関する共通理解と方向性を示す「戦略対話」の報告書が公表(EU)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003923.html)をご参照ください。
(注4)行動計画には、今回発表された融資パッケージの他、バイオ燃料などの技術開発への融資、アグリテックなどへの投資促進、農業関連団体への融資、農村地域のインフラ整備への支援の強化などが含まれる。

融資パッケージの内容

 今回発表された融資パッケージでは、(1)一般的に銀行から十分な融資を受けにくいとされる若手農業者や新規就農者、(2)ジェンダー不均衡を克服するために女性農業者、(3)持続可能な農業を達成するためのグリーン投資、に重点を置き、農業の持続可能性やバイオエコノミー活動への支援を行うこととされた。
 融資の対象となるのは、デジタルツールの導入や気候変動対策への投資、持続可能な農業の実践に関する研修、若手農業者や女性農業者による土地購入などであり、2025年前半から利用可能になる。
 また、バイオエコノミーへの支援強化の一環として、洪水や干ばつなどの発生頻度が増加していることを踏まえて、気候災害の影響を受けた生産者などに対して多くの補償を手当てする農業保険の改善も検討するとしている。

現地の反応

 欧州委員会のハンセン農業・食品担当委員は「農業分野における資金調達の課題を解決することは重要であり、今回の融資パッケージはEUの農業が発展するための一助となる」と述べ、より農業現場で活用されるために同委員会としてEIBと緊密に協力していくとした。
 欧州の若手農業者団体である欧州青年農業者協議会(CEJA)は、若手農業者の新規就農や経営継続に対して融資が受けにくいことが主要な課題の一つであるとしたうえで、今回の融資パッケージを歓迎するとするプレスリリースを出した。
【藤岡 洋太 令和6年12月13日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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