カナダ牛肉産業、インドネシアとの包括的経済連携協定を歓迎(カナダ)
カナダ政府は12月2日、インドネシアとの包括的経済連携協定(CEPA)の交渉妥結に関する共同声明に署名した。同協定は26年の発効が見込まれており、カナダの牛肉産業はインドネシアへの牛肉輸出につながるとして賛意を表明している。
1 協定の概要
カナダとインドネシアのCEPAは、物品やサービスの貿易自由化や投資の促進、規制慣行、知的財産権など、多岐にわたる内容を規定している。同協定は2021年6月に交渉が開始され、2年半の間に10回の交渉を経て今回の妥結に至った。これに伴い、衛生動植物検疫(SPS)措置(注1)の二国間対話に関する覚書(MOU)が併せて締結された。その対象品目としてカナダの牛肉が含まれており、今後の協議を通じて輸出要件の確認に向けた取り組みが見込まれている。カナダにとってインドネシアは東南アジア最大の輸出市場であり、主に小麦や大豆といった農産物、工業製品、天然資源などが輸出されている。今回の協定に関してカナダのエング国際貿易相は、「両国の企業や投資家が市場を開拓するのに適した時期が来た」と述べている。
2 カナダの牛肉輸出および業界団体の反応
カナダ産牛肉は、国内生産量の4割が輸出に仕向けられている。このうち、米国向け輸出が8割以上を占めており(図1)、業界では輸出先の多様化を求める声が挙がっていた。一方、インドネシアの牛肉輸入量を見ると、中間所得者層の拡大などに伴う旺盛な需要から24万トン(23年実績)と10年間で2.2倍に増加しており、今後も成長が見込まれている(図2)。
こうした中、今回の交渉妥結についてカナダ肉用牛生産者協会(CCA)は、「CEPAおよび牛肉に特化したMOUの双方で前向きな結果を得られたことについて、カナダ政府の交渉チームに感謝する」と述べた。また、カナダ食肉評議会(CMC)は「カナダが中国市場から排除されて以来(注2)、CMCは新たな牛肉市場開拓のため、インドネシアとの関係構築を主導してきた。今後はハラール認証などの市場要件や、食品安全監査への迅速な対処が必要となるだろう」と述べている。
共同声明の署名に伴い、カナダ・インドネシア両国の食肉大手企業間では牛肉輸出に関する覚書が取り交わされた。これにより、貿易要件や市場環境が整い次第、牛肉輸出の開始が見込まれている。
(注1)動植物の輸出入にあたり、検疫、規格設定、輸入禁止など、人、動植物の生命または健康を守るため実施される措置。WTOの定める基準に反しない範囲で、科学的根拠に基づいた適切な保護水準を設定することが求められる。
(注2)中国は、21年12月にカナダで非定型牛海綿状脳症(BSE)の症例が検出されて以来、カナダ産牛肉の輸入停止措置を続けている。
【小林 大祐 令和6年12月13日発】
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