欧州委員会の食肉中期需給見通し、牛肉と豚肉は減産、家きん肉は増産(EU)
欧州委員会は2024年12月11日、35年までのEUの農畜産物中期的需給見通し(注1)を公表した。このうち、食肉に関しては、牛肉および豚肉は持続可能性への懸念などが影響し、生産量、消費量ともに減少する一方、家きん肉は価格面などを要因とした堅調な需要を背景に、生産量、消費量ともに増加する予測となった。
品目別の概要は以下の通りであり、数値はすべて枝肉重量ベースである。
(注1)欧州委員会は、農畜産物の短期的需給見通しを年2回(2024年に年3回から年2回に減少)、中期的需給見通しを年1回(12月)公表している。今回公表された中期見通しは、24年9月末時点で実施されている政策や貿易協定を前提に算出されたものである。
(1)牛肉(子牛肉を含む)
牛肉生産量は減産傾向で推移し、2035年には22〜24年平均の673万トンから6.7%減の628万トンと予測される。これは、収益性の低下と環境規制の厳格化の影響による牛飼養頭数の減少が要因である。
牛肉消費量は、他の食肉と比較して高価であることや持続可能性への懸念を背景に減少傾向が継続し、35年には22〜24年平均の632万トンから6.7%減の589万トンと予測される。
牛肉輸出量は、輸出先での需要拡大やアニマルウェルフェアを背景に生体輸出が牛肉輸出に置き換わることなどにより、35年には22〜24年平均の54万トンから10.4%増の60万トンと予測される。主な輸出先は、近隣諸国である英国、トルコ、東欧、中東、北アフリカとみられる。
35年の牛枝肉価格は、減産による牛肉の供給減や生産コストの増加により、22〜24年平均の1キログラム当たり4.99ユーロ(802円、1ユーロ=160.70円(注2))から21.8%高の同6.07ユーロ(975円)と予測される。
(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2024年11月末TTS相場。
(2)豚肉
豚肉生産量は、環境規制やアニマルウェルフェアに関する基準の厳格化に加え、輸出機会の減少により減産傾向で推移し、2035年には22〜24年平均の2132万トンから5.6%減となる2013万トンと予測される。
豚肉消費量は、環境問題やアニマルウェルフェアへの関心の高まりに加え、脂肪分を避ける一部の消費者の嗜好が影響し、35年には22〜24年平均の1808万トンから4.9%減の1720万トンと予測される。
豚肉輸出量は、輸出先である中国、フィリピン、ベトナムなどで国内生産量の増加が見込まれ、輸入需要が減少することから、35年には22〜24年平均の331万トンから10.2%減の297万トンと予測される。最大の輸出先は英国と見込まれるが、同国の需要も減少傾向であるため、輸出先の多様化が課題となる。
35年の豚枝肉価格は、減産による豚肉供給減や生産コストの増加により、22〜24年平均の1キログラム当たり2.09ユーロ(336円)から5.9%高の同2.21ユーロ(355円)と予測される。
(3)家きん肉
家きん肉生産量は、堅調な域内需要と輸出機会の増加を背景に増産傾向で推移し、2035年には22〜24年平均の1346万トンから5.7%増となる1423万トンと予測される。ただし、環境規制の厳格化やアニマルウェルフェアに配慮した飼養方法への切替えを考慮すると、生産拡大の余地は一部の加盟国に限定されるため、直近10年間(14〜23年)の増産ペース(10年間で約2割増)を下回ると予測される。また、高病原性鳥インフルエンザの発生時期の長期化も生産動向に影響する可能性がある。
家きん肉消費量は、他の食肉より比較的低価格で健康的なイメージがあることや調理利便性の高さから堅調に推移し、35年には22〜24年平均の1241万トンから5.5%増の1310万トンと予測される。
家きん肉輸出量は、英国、サハラ以南のアフリカ諸国、アジア諸国からの需要増により、35年には22〜24年平均の188万トンから9.1%増の205万トンと予測される。
35年の家きん肉価格は、堅調な需要により、22〜24年平均の1キログラム当たり2.63ユーロ(423円)から3.9%高の同2.74ユーロ(440円)と予測される。
【調査情報部 令和6年12月19日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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