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米農務省、乳牛のHPAI感染に対処するため新たな生乳検査戦略を発表(米国)

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 米国農務省動植物衛生検査局(USDA/APHIS)は12月6日、乳牛の高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)感染拡大に対処するため、新たな連邦命令を発表するとともに、全米を対象とした生乳検査戦略を策定した。USDAは、同戦略の実施を通じて検査の進捗状況を適切に把握しながら、酪農場のバイオセキュリティ対策の強化などを支援し、乳牛でのHPAI感染の収束を図るとしている。

新たな連邦命令と生乳検査戦略

 USDAによると、2024年3月に初めて乳牛のHPAI感染が確認されて以降、12月17日までに16州860件の感染事例が報告されている。直近30日間ではカルフォルニア州およびネバダ州の2州で感染事例が報告されており、現地報道では、未検査の症例が存在する可能性について指摘する声もある。
 乳牛のHPAI感染拡大に対処するため、USDAによる24年4月の連邦命令では、搾乳用の乳牛が州をまたいで移動する際の遺伝子検査の実施が義務付けられたほか、7月には感染乳牛の損失費用の補てん、11月には検査体制の支援といった対策が相次いで発表された(注)。今回の連邦命令は生乳検査の強化を目的としたものとされ、新たに(1)酪農家や集送乳業者、乳製品加工業者などによる殺菌前の生乳サンプルの提供(2)陽性が確認された酪農場での家畜の出入りなど疫学情報の提供(3)検査機関および獣医師による陽性例の報告の3点を義務付けている。また、USDAが各州と連携し検査を行うために、全米生乳検査戦略(NMTS)が策定された。同戦略は、検査の実施状況などに応じて各州の取り組みを以下の5段階に分類するとしている。
 
(1)生乳初期検査の実施
 すべての州を対象として、乳製品加工施設の貯乳タンクなどで生乳のサンプル検査を実施。陽性の検査結果が出た場合は(3)感染州における対応に移行。過去30日間に感染が確認されていない州(暫定的非感染州)は、サンプルが州内の乳牛群を代表している場合、少なくとも4回の検査で陰性結果が出れば、(4)非感染州での定期検査に移行。
 
(2)州におけるサーベイランス実施
 暫定的非感染州は、州によるサーベイランス(監視)の実施により(1)の検査に代えて非感染州へ速やかに移行することが可能。陽性の検査結果が出た州は(3)に移行し、陰性が確認された州は(4)に移行。
 
(3)感染州における乳牛群の特定と対応
 感染が確認された州は、牛群を迅速に特定し、バイオセキュリティの強化などの迅速な対応とサーベイランスを実施。疾病の収束が確認された場合、(4)に移行。
 
(4)非感染州での定期検査の実施
 定期検査を実施するとともに、予防または再発防止に努める。陰性の結果が続いた場合、検査の実施頻度を毎週から毎月、四半期ごとなどへと下げる。感染が確認された場合は(3)に戻る。
 
(5)米国における乳牛でのHPAI感染の収束
 すべての州が(4)に移行した後、国と州が連携しサーベイランスを実施。すべてのサーベイランスで陰性が確認された場合、米国において乳牛でのHPAI感染の収束を宣言。
 
 第1段階の初期検査は、まずカリフォルニア州、コロラド州、ミシガン州、ミシシッピ州、オレゴン州、ペンシルバニア州の6州で開始される。12月17日には、追加で7州(インディアナ州、メリーランド州、モンタナ州、ニューヨーク州、オハイオ州、バーモント州、ワシントン州)の検査実施が発表され、今後も段階的に対象州が追加される見込みとなっている。
 
(注)「【海外情報】米農務省、乳牛でのHPAI感染等に対して新たな対策を発表(米国)(令和6年11月21日発)」も併せて参照ください。
【小林 大祐 令和6年12月20日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9533