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ドイツで1988年以来の口蹄疫が発生、水牛での感染を確認(EU)

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 ドイツ連邦食料・農業省(BMEL)は2025年1月10日、ドイツ北東部のブランデンブルク州のメルキッシュ・オーダーラント群(Märkisch-Oderland)で飼養されていた水牛から、同日に口蹄疫の感染が確認されたと公表した。現地報道によれば、水牛14頭のうち3頭の死亡を飼養者が発見し、このうち1頭から口蹄疫ウイルスが検出された。残り11頭はすでに殺処分されている。
 同国での口蹄疫の発生は1988年以来となる。EUとしても2011年にブルガリアで確認されて以来となる。
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 ブランデンブルク州は、感染が確認された農場の周囲に制限区域を設け、発生農場から半径3キロメートルの保護区域(Protection Zone、最低15日間)と同10キロメートルの監視区域(Surveillance Zone、最低30日間)を設定した。この区域からは、反芻(はんすう)動物や豚など口蹄疫に感受性のある家畜およびその由来製品の移動が禁止される。
 さらに、同州は、25年1月15日までの間、同州全域で反芻動物や豚などの生体、肉、家畜排せつ物の移動を禁止した。
 疫学調査を実施している連邦政府のフリードリヒ・レフラー研究所(連邦動物衛生研究所、FLI)は1月11日、感染した水牛の口蹄疫ウイルスの血清型(注1)をO型と特定したと発表した。しかし、感染源や感染経路は1月13日現在で不明としている。また、同研究所は、当該血清型のワクチンは入手可能であるが、EUでの口蹄疫のワクチンの予防的接種が一定条件下でのみ認められていることを踏まえて、現時点では感染状況の把握が最優先事項であり、ワクチンの使用は今後の感染状況などを踏まえて判断するとしている。
 
(注1)口蹄疫ウイルスには、O、A、C、Asia1、SAT1、SAT2およびSAT3の7種類のタイプ(血清型)がある。
 
 BMELは、今回の口蹄疫の発生により同国はワクチン非接種口蹄疫清浄地域としてのWOAH(国際獣疫事務局)ステータスを失うことになるとしている。
 ドイツでの口蹄疫発生を受けて、輸入側でも早急な対応が取られている。我が国では、1月11日付けでドイツ産偶蹄類由来製品等(注2)の輸入一時停止措置が講じられた。また、1月13日現在で、韓国、メキシコ、シンガポール、カナダ、アルゼンチンでもドイツ産畜産物(注3)の輸入停止措置が取られている。
 
(注2)肉製品、乳製品、牛精液などの偶蹄類由来製品、穀物のわら、飼料用の乾草など(乳製品については、口蹄疫ウイルスを不活化する処理(加熱等)がなされたことを確認されたものを除く)。
(注3)肉製品、乳製品、皮革製品、牛精液などで、輸入停止の対象品目は国によって異なる。

 
 さらに、今回の口蹄疫発生が確認されたブランデンブルク州から子牛の生体を輸入していることが確認されたオランダでは、24年12月1日以降に同州からの子牛を受け入れた125以上の農場で口蹄疫の検査が実施される。加えて、口蹄疫感染のリスクを最小限に抑えるため、オランダ全国で子牛の輸送(注4)が禁止されるとともに獣医師などを除く農場への人の訪問も禁止されることとなった。
 
(注4)と畜用の輸送を除く。

政府と業界の発表

 BMELオズデミル農相は、速やかに感染経路を特定することが重要であると強調し、ブランデンブルク州全域での反芻動物などの移動規制を評価した。また、牛などの輸出については、「EU域内向けは地域主義が適用されるため、口蹄疫発生地域を除く地域からの輸出が引き続き可能であり、第三国への輸出については、できるだけ早く輸出できるよう、全力を尽くす」と述べた。
 ドイツの農業生産者団体であるドイツ農民連盟(DBV)のルクヴィート会長は、連邦政府とブランデンブルク州政府に対して口蹄疫の発生拡大を食い止めるための迅速な対応を求め、輸出市場を失うことなどによる畜産農家の経済的な影響を考慮した救済措置が必要であると述べるとともに、畜産農家に対しバイオセキュリティ対策の強化を呼び掛けた。
【調査情報部 令和7年1月15日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-8527