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GMトウモロコシ輸入制限はUSMCA違反と裁定(米国、メキシコ)

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 米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の紛争解決パネル(以下「パネル」という)は2024年12月20日、メキシコ政府による遺伝子組換え(GM)トウモロコシの輸入制限について、科学的根拠がなくUSMCA違反に当たると判断し、45日以内にUSMCAの規定を遵守するよう勧告した。本紛争では、メキシコ政府が23年2月に発出した大統領令により、GMトウモロコシは健康や環境に対する懸念があるとして、食用用途への利用を禁止し、輸入を制限したことや、飼料向けなどに対して、段階的に利用制限措置を講じたことに対して、米通商代表部(USTR)が、USMCAの規定に違反しているとして、パネルの設置による是正を求めていた。現地報道によると、今回の結果を受けて、メキシコ政府はパネルの決定に不服を表明しつつも、USMCAの規定に従う意向を示している。

メキシコの23/24年度トウモロコシ輸入量は記録的な数字に

 メキシコのトウモロコシ消費の約半分は飼料向けやコーンスターチ製造に仕向けられ、残りは食用向け(主にトルティーヤ(注1))となっている。その中で食用向けの原料となる白とうもろこしの多くは国内で自給している一方、飼料向けのほとんどは輸入に依存している。米国農務省/海外農務局(USDA/FAS)によると、飼料向けの消費量は増加傾向にあり、2012/13年度(9月〜翌8月)の770万トンから22年/23年度は1980万トンとなり、過去11年間で2.6倍に増加している。
 メキシコにとって米国はトウモロコシ輸入量の9割以上を占める最大の輸入先であり、輸入量は飼料需要の増加などから増加傾向で推移している(図)。USDA/FASの予測(24年1月時点)によると、23/24年度の輸入量は、国内生産の減少により、2480万トン(前年度比27.7%増)と大幅な増加が見込まれており、中国を抜いて世界1位の輸入量となる。

(注1)トウモロコシの粉から作る伝統的な薄焼きのパンであり、メキシコでは主食とされている。

 
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 国内のトウモロコシ生産状況を見ると、22/23年度まで毎年度約2700万トン前後で推移していたが、23/24年度は、干ばつの影響などから2350万トン(同16.3%減)と大幅な減少が見込まれている。現地報道によると、生産地のシナロア州、ソノラ州、タマウリパス州の各州で発生した干ばつの影響のほか、収益性の高いベリー類などへの作付け転換や、耕作放棄地の増加などが生産減につながったとされている。24/25年度の生産量についてUSDA/FASは、2370万トン(同0.9%増)とわずかながらも増加に転じることから、同年度の輸入量は2450万トン(同1.0%減)とわずかに減少すると予測している。
 USDA/FASによると、トウモロコシ生産量が減少する中で、国内のトルティーヤの価格は2018年12月の1キログラム当たり14.7ペソ(129円:1ペソ=8.77円(注2))から24年8月は同24.2ペソ(212円、62%高)と大幅に上昇している。

(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2024年12月末TTS相場。
【伊藤 瑞基 令和7年1月23日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:伊藤 瑞基)
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