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インド政府が100万トンの砂糖輸出を許可(インド)

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最終更新日:2025年1月24日

 インド消費者問題・食糧・公共配給省は2025年1月20日、同省のプレスリリースを通じ2024/25年度(10月〜翌9月)に100万トンの砂糖輸出を許可することを発表した。今回の輸出許可は国内の余剰在庫の解消と国内価格の安定、さらに製糖工場ひいてはサトウキビ生産者の支援を目的としている。  同国の近年の砂糖輸出については、21/22年度に過去最高である1120万トンを輸出して以来、気候変動に伴うサトウキビの減産や国内需要の確保、エタノールの生産拡大などを目的に輸出が制限されてきた(図1)。
図1
 製糖工場は24/25年度が終了する9月30日まで、直接または輸出業者を経由して輸出することが可能である。輸出を希望しない場合は、3月31日までに輸出割当量の一部または全部を放棄するか、輸送コストの負担忌避から輸出割当量を他の製糖工場の国内割当量と交換するかを選択できる。例えば、港から遠いパンジャブ州やウッタル・プラデーシュ州の製糖工場が輸送コストの高騰を理由に輸出を望まない場合、港に近い他の製糖工場の国内割当量と輸出割当量を交換すれば、双方にメリットがある。  100万トンの輸出割当量は過去3年度(21/22、22/23、23/24年度)の平均的な砂糖生産量に基づき、過去3年度のうち少なくとも1年度で操業した製糖工場間で按分される。同省は15州518の製糖工場に輸出枠を按分し、各製糖工場の過去3年度の平均砂糖生産量の3.174%を一律に割り当てている。州ごとの輸出割当量では、主要生産州であるマハラシュトラ州で最大の37万4996トンとなり、次いでウッタル・プラデーシュ州が27万4184トンとなっている(図2)。
図2
 同省の大臣は本決定についてSNSへの投稿で、サトウキビ生産者5000万世帯と労働者50万人を支援し、砂糖部門を強化すると述べている。
 また、これまで砂糖の輸出許可を政府に訴えてきたインド砂糖・バイオエネルギー製造業者協会(ISMA)は、同様にSNSへの投稿を通じて政府による本決定を歓迎する声明を発出しており、製糖工場の資金流動性を高め、サトウキビ生産者への迅速な支払い確保に貢献するとした。
 今回の発表に対して海外の反応を見ると、日本に多くの砂糖を輸出する豪州では、豪州砂糖製造業者協議会(ASMC)がプレスリリースを発表し、インドの決定は世界的な市場の混乱を招き、豪州の砂糖産業を脅かすものと伝えている。インドはかつて政府による砂糖産業への輸出補助金が国際市場での公平な競争を歪めているとして、21年に世界貿易機関(WTO)から協定違反と裁定されている(注1)

 また、発表後の1月21日のニューヨーク粗糖先物相場(3(がつ)(ぎり))は、17日の1ポンド当たり18.22セント(注2)から同17.79セントまで下落し、24年8月以来となる17セント台を記録した。


(注1)詳細については、2022年1月13日付け海外情報「WTO紛争解決委、インドの砂糖政策を協定違反と裁定」をご参照ください。
(注2)1ポンドは約453.6グラム、1米セントは1米ドルの100分の1。

 
【調査情報部 峯岸 啓之 令和7年1月24日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9806