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英国の生協、農家向け持続可能性基金を設立(英国)

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 英国の消費生活協同組合(Co-op)は1月20日、持続可能な農業に向けた取り組みを支援するために、82万ポンド(1億6647万6400円、1英ポンド=203.02円(注1))の「持続可能性基金」を設立し、英国の農家への支援を発表した。
 
(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2024年12月末TTS相場。
 
 Co-opの農業支援の一環として、2014年には、Co-opの小売店で販売するすべての鶏肉、豚肉、牛肉および羊肉、さらにそれらを原料として使用する商品も英国産にすると公約している。こうした公約は英国の小売店では初であり、Co-opの小売部門で販売されるケージフリーの鶏卵、牛乳およびクリームも英国産のみを販売している。

支援の概要

 肉用牛農家および酪農家は、温室効果ガス(GHG)排出量の削減や農場での環境保全の取り組みに対して持続可能性基金から支援金を受け取ることが可能となる。

(1)酪農部門
 Co-opは農業支援団体SAX(Soil Association Exchange)(注2)と協力し、140の提携している酪農家にGHGの排出削減や生物多様性および土壌の健全性を評価できる指標の導入を進める。この取組によって酪農家は(1)施肥量の削減、(2)燃料効率の向上、(3)太陽光など再生可能エネルギー利用のための投資についてSAXの支援と、Co-opからGHG排出量の削減に対するプレミアムの支払いを受けることができる。
 
(注2)SAXは、ロイズ銀行グループの資金提供を受けて設立された農業技術の助言などを行う団体。現在は、持続可能な農業を支援する慈善団体のSoil Associationの支援を受けている。英国の農業政策が直接支払制度から環境土地管理制度に移行する中で、新しい排出削減方法を模索している農家を支援する。
 
(2)肉畜部門
 Co-op農業部門の肉用牛農家に対する支援で繁殖成績の向上から飼料の質の向上まで、さまざまな持続可能な取り組みを導入する「牛肉持続可能性プロジェクト(Beef Sustainability Scheme)」(注3)を拡充する。同プロジェクトは2年間の試験運用を経て本格稼働することとなり、今年中にCo-opが小売りを通じて販売する牛肉の15%を同プロジェクトによりGHG排出削減が図られた牛肉に置き換え、5年間で10万トン以上のGHG排出量の削減を目指している。
 
(注3)2024年に試験運用が開始されており、食肉加工業者のDunbiaが農家を技術的に支援する。25年は、肉用牛農家に加え、めん羊農家も対象となる。
 Co-opのフッド最高責任者は「英国の農家は多くの課題に直面しており、彼らが不安や恐怖、怒りを感じているのを見てきた」と述べ、「英国農業には支援が必要であり、Co−opが提供する肉や乳製品のすべてを英国産とするべく毎年数億ポンドを投資し、持続可能性と気候変動に取り組む農家の支援を約束する」と付け加えた。
 また、Co-op酪農部門の代表で酪農家でもあるブラモール氏は「現在の不確実な時代にはサプライチェーン全体で協力する必要があり、我々農家は、持続可能性に対し自らの責任を果たしたいと考えている。そのためには支援が必要であり、Co-opが彼らの努力に対し金銭で報い、気候変動問題に取り組む上で農家の役割を支援することは素晴らしいことである」としている。
【渡辺 淳一 令和7年1月27日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-8527