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中国食肉業界団体、24年の振り返りと25年の見通しを紹介(中国)

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 中国食肉業界団体大手の中国肉類協会(注1)は2025年1月17日、在中国の主要関係国大使館や業界団体を招いた外事交流会を開催し、24年の中国畜産物の振り返りと25年の取組方針を紹介した。また、質疑応答では、25年の牛肉市場や、適正な母豚飼養頭数についての考え方などを回答した。
 交流会の参加者は、肉類協会から陳会長、副会長2名、設立準備中の和牛(注2)産業委員会担当者などが、外国機関からは、米国、カナダ、フランス、英国、ベルギー、豪州およびウルグアイの在中国大使館、豪州・ビクトリア州および英国・北アイルランドの北京事務所、米国食肉輸出連合会(USMEF)、カナダ豚肉協議会(CPC)、ブラジル動物性タンパク質協会(ABPA)、ウルグアイ食肉協会(INAC)、欧州連合(EU)および世界自然保護基金会(WWF)などの職員や市場担当者などが参加した。また、日本からは当機構関係者が初めて参加した。
 協会からの主な説明内容と質問への回答は以下の通り。

 (注1)中国肉類協会の活動内容の例については海外情報「中国畜産団体が牛肉の品質などに関する団体基準の策定に着手(中国)」(令和6年5月8日発)をご参照ください。
 (注2)中国では、「和牛」は「日本産牛肉」ではなく「高級牛肉」一般を指すものとして使用される。

中国畜産物について24年の振り返りと25年の協会の取組方針

(1)24年の振り返り
 2024年、中国の畜産物(食肉のほか、内臓、豚の鼻や耳などを含む)の輸入量は666.6万トンであり、前年比では9.7%の減少となった。内訳は豚と羊が減少、牛と家きんが増加し、世界全体の貿易量と同様の傾向がみられたが、豚が3割も減少した影響が大きかった。
 中国の食肉消費の傾向を一言で表せば「安定しつつも下降」であり、消費量は前年同様1億トン以上ではあったものの、70万トンの減少となった。これは輸出量63万トンとほぼ同じ量であり、消費の減少は今後も続くと見込まれる。その理由は人口の減少、高齢化および若者の消費の変化である。中国の人口はこの1年間で139万人減少した。ここ数年は毎年100万人以上減少しており、減少幅は大きくなっても小さくなることはない。高齢化もこの1年間で2%進み、60歳以上の人口比率はもはや22%に達している。畜産業界としては輸出が必須になっているが、中国の食肉は競争力がなく、現在の輸出は加工品に偏っている。
 業界全体を振り返れば、24年は業界内競争が激しく、多くの企業にとって困難な年であり、売上げが増加した企業でも純利益は減少した。オンラインでの消費比率は既に都市圏では70%に達しており、これは、オンラインの消費プラットフォームそのものや、それを提供する企業の発言力が無視できないほど大きくなっているということでもある。24年はこれまで関係の薄かった飲食業担当の政府部門との意見交換も行った。同部門からの関心が高くなっていることを感じた。業界全体としては今後も楽観できない状況が続くだろう。

(2)25年の取組方針
 2025年、当協会は次のような取り組みを行う。

ア 産業チェーン全体を対象として、川下から川上、すなわち消費傾向を捉えた生産モデルの構築を目指す。豚、牛、羊に共通する発展モデルはない。養豚業界では上位10社の売上げが中国全体の30%を占めているが、他の畜種では数社で大きなシェアを占めるというようなことは見られない。各業界に合った発展モデルの構築、転換が必要である。

イ 加工や小売り部門で成功している企業などとの連携を強化する。と畜部門の利益率は5%に満たず、と畜部門だけで産業の成長は見込めない。従来のように形式的に大規模な会議を開催するというのではなく、成功している企業2、3社を招いた小規模な会議を重ね、実際に各地域で中小企業を束ねながら成功事例を作っていくということが重要である。

ウ 飼養技術の観点から生産コストの縮減を目指す。24年の輸出量の増加を支えたのは新技術、新設備の導入であった。25年もこの新技術の導入に着目してコスト縮減を図る。

エ 技術や品質の引き上げに向け、食肉に関する基準の策定を進める。当協会では以前から畜種別にいくつかの基準を策定してきた。優良な食肉を識別できるラベルの普及も重要と考えており、輸入食肉が既に作成された、あるいはこれから作成するこれら畜種別の基準やラベルを利用することを歓迎する。外国機関は、世界的な食肉企業であっても中国でブランドとして認知されていないということをよく考えてほしい。これからの中国では、消費者に識別されることがますます重要になるだろう。

オ 同様に、飼養農家や中小企業を対象とした研修を行う。今年は輸出だけをテーマとする研修も初めて行う予定である。産業の発展は詰まるところ人にあり、農家や企業が自ら考え、改善していかなければ産業は発展しない。

 以上のほか、輸出支援、川下から川上までいる会員間のマッチングの強化、海外との連携強化などを行う。海外との関係では、特に基準策定や技術に関心があり、協会や会員がブラジル、欧州(ドイツ、オランダ、ベルギー、フランス)、日本への視察を予定している。基準や技術は業界の共通用語である。

25年の牛肉市場の見通しと適正な母豚飼養頭数について

(1)25年の牛肉の生産と価格動向の見通し
 中国の牛肉関係者の多くは、2025年の中国産牛肉の生産量は減少と見込んでいる。市場価格は上下の変動はあるだろうが1年後は安値になっているとみられている。ただし、中国の1人当たり牛肉消費量については、世界平均より低いため、増えるとの見方もある(注3)

 (注3)中国における牛肉生産と消費については海外情報「輸入牛肉に対するセーフガード措置に関する調査への中国関係業界の見方」(令和7年1月28日発)をご参照ください。

(2)適正な母豚飼養頭数についての考え方
 中国では5年に一度、畜産物についての自給率目標を定めている(注4)。現在は第14次5カ年計画期間中であり、豚肉については2025年の生産量は5500万トン程度、自給率は95%程度と目標値が定められている。適正な母豚飼養頭数は、この目標値を基本として設定されている(注5)
 これらの数値はおおむね現状に合致しており、その前の5カ年計画で定められた目標よりも実際の推移に近く、より正確な目標が定められたと考えている(注6)。この目標が設定されたのは20年頃であり、前回の目標策定(アフリカ豚熱が蔓延する前の15年頃)に比べ、政府が畜産業の動向をより正確に捉えようとしたことの表れと理解している。現在の母豚の適正飼養頭数(「3588万頭から4095万頭の間」)も実際の動向に合っており、こういう規模感ではないかと考える。
 次の5カ年計画については、年間豚肉生産量は5500万トンをわずかに下回るものになるのではないかとの見方がある。

 (注4)現在の5カ年計画期間中における畜産の主要な目標値については『畜産の情報』24年3月号「中国における畜産業の生産基盤強化に向けた取り組み」および同24年7月号「中国の畜産物を中心とした食料消費の現状と今後の展望」をご参照ください。
 (注5)中国養豚業界における母豚飼養頭数の位置づけについては海外情報「中国農業農村部、豚の飼養頭数調整のための方策を改訂(中国)」(令和6年3月12日発)をご参照ください。
 (注6)中国の5カ年計画に定められた目標には、畜産物については、達成することを目指す目標と、畜産物のように実際の推移を見越した予測に近い目標がある。
【調査情報部 令和7年1月28日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9530