調査に対する中国食肉業界の主な受け止め方。
・ 食肉の中で牛肉は突出して輸入量が多い。中国の肉牛飼養農家の中には将来を悲観して自死を選ぶ者も現れており、国家としてそのような状況にある生産者に対して何らかの措置を執るのは当然のことである。牛肉の自給率を見ると、現5カ年計画で定められた自給率目標85%に対して73%まで落ち込んでいる
(注3)。
・ 中国の牛肉市場は大きく二分される。一つは輸入牛肉の主要対象である高級牛肉市場であり、もう一つは品質が劣る加工向け牛肉の市場である。高級牛肉市場は、国産だけでは質でも量でも国内需要を満たすことができない。加工向け牛肉市場は国内生産の安定を左右する市場であり、この市場動向が国内生産を左右する。今回の調査は、近年の中国国内における牛肉需要の増加を受けて混然としてしまった牛肉市場を調査しようというものであり、牛肉生産の安定のために必要な調査である。
・ この調査によって国家間貿易に影響することは政府が意図するところではない。調査は輸入牛肉にとっても良い機会である。例えば、近年の輸入牛肉の増加を受けて、把握しているだけでも24年の1年間で上海市だけでも40以上の輸入牛肉販売事業者が新規参入した。しかしながら、これらの企業のうち1年後も残っていると見込まれるのは5社程度である。このような状況は貿易の安定から見て好ましくない。今回の調査は、このような流通実態についても知る機会となるだろう。
・ 政府は、1人当たり食肉消費量を世界平均まで引き上げる取り組みを行ってきた。既に豚肉と羊肉は世界平均以上となっているが、牛肉は未達成であり、世界平均よりも1人当たり年間1.8キログラム少ない。このため、1人当たり消費量が増えることを見越して国内市場に供給される牛肉を確保しようとする基調は変わらないだろう。
(注3)現在の5カ年計画期間中における食肉の目標値については『畜産の情報』2024年7月号「中国の畜産物を中心とした食料消費の現状と今後の展望」をご参照ください。(なお、中国の5か年計画に定められた目標には、達成することを目指す目標と、畜産物のように実際の推移を見越した予測に近い目標がある。)