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中国商務部、輸入牛肉に対するセーフガード措置実施の調査を開始(中国)

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 中国商務部は2024年12月27日、輸入牛肉に対するセーフガード措置(注1)の実施に関する調査を開始したことを公表した。これに対し、中国食肉業界団体大手の中国肉類協会は25年1月17日、在中国の主要関係国大使館や業界団体を招いた外事交流会(注2)の質疑応答で、当該調査や今後の中国の牛肉市場などについての受け止めを紹介した。以下、その概要を紹介する。
 
 (注1)WTO(世界貿易機構)設立協定の一部である「セーフガード協定」およびGATT(特定産品の輸入に対する緊急措置)第19条により認められた、「国内産業に重大な損害等を与え又は与えるおそれがあるような増加した数量の輸入に対して、かかる損害を防止するために、当該輸入国政府が発動する関税引上げ・輸入数量制限の緊急措置」のことを指す。
 (注2)中国肉類協会主催の外事交流会については海外情報「中国食肉業界団体、24年の振り返りと25年の見通しを紹介(中国)」(令和7年1月28日発)をご参照ください。

輸入牛肉に対するセーフガード措置の実施に関する調査の概要

 2024年11月、中国畜牧業協会のほか、吉林省、遼寧省、内モンゴル自治区、貴州省など九つの省および自治区の畜産関係の団体は、中国国内の牛肉産業を代表して当該調査実施の請願書を提出した。
 申請によれば、中国における牛肉関連産品の輸入量は19年から24年上半期にかけて急増し、23年は19年に比べて64.9%増加、24年上半期は19年上半期に比べて106.3%増加した。また、総供給量のうち輸入品が占める割合も20.6%から30.9%に増加し、中国国内生産量と比較しても国産を100%とした場合の輸入品の比重は24.9%から43.9%へと増加した。
 このような状況を受けて中国商務部は、と畜・加工した牛肉産品(生鮮・冷蔵または冷凍された枝肉、骨付きおよび骨無し牛肉)を対象として、19年1月1日から24年6月30日までを対象期間に関係事業者などからの調査を行う(通常は調査開始から起算して8カ月以内に調査を終えるが、特殊な事情があったときは適切な期間を延長することができる)としている。

上記調査に対する中国食肉業界の受け止め

調査に対する中国食肉業界の主な受け止め方。

・ 食肉の中で牛肉は突出して輸入量が多い。中国の肉牛飼養農家の中には将来を悲観して自死を選ぶ者も現れており、国家としてそのような状況にある生産者に対して何らかの措置を執るのは当然のことである。牛肉の自給率を見ると、現5カ年計画で定められた自給率目標85%に対して73%まで落ち込んでいる(注3)

・ 中国の牛肉市場は大きく二分される。一つは輸入牛肉の主要対象である高級牛肉市場であり、もう一つは品質が劣る加工向け牛肉の市場である。高級牛肉市場は、国産だけでは質でも量でも国内需要を満たすことができない。加工向け牛肉市場は国内生産の安定を左右する市場であり、この市場動向が国内生産を左右する。今回の調査は、近年の中国国内における牛肉需要の増加を受けて混然としてしまった牛肉市場を調査しようというものであり、牛肉生産の安定のために必要な調査である。

・ この調査によって国家間貿易に影響することは政府が意図するところではない。調査は輸入牛肉にとっても良い機会である。例えば、近年の輸入牛肉の増加を受けて、把握しているだけでも24年の1年間で上海市だけでも40以上の輸入牛肉販売事業者が新規参入した。しかしながら、これらの企業のうち1年後も残っていると見込まれるのは5社程度である。このような状況は貿易の安定から見て好ましくない。今回の調査は、このような流通実態についても知る機会となるだろう。

・ 政府は、1人当たり食肉消費量を世界平均まで引き上げる取り組みを行ってきた。既に豚肉と羊肉は世界平均以上となっているが、牛肉は未達成であり、世界平均よりも1人当たり年間1.8キログラム少ない。このため、1人当たり消費量が増えることを見越して国内市場に供給される牛肉を確保しようとする基調は変わらないだろう。

 (注3)現在の5カ年計画期間中における食肉の目標値については『畜産の情報』2024年7月号「中国の畜産物を中心とした食料消費の現状と今後の展望」をご参照ください。(なお、中国の5か年計画に定められた目標には、達成することを目指す目標と、畜産物のように実際の推移を見越した予測に近い目標がある。)
【調査情報部 令和7年1月28日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9530