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25年農業所得は大幅増、畜産の1農場当たり農業現金所得も増加見込み(米国)

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 米国農務省経済調査局(USDA/ERS)は2025年2月6日、25年の農業所得見通しを公表した。これによると、農業現金所得(注1)は前年比21.7%増の1937億米ドル(30兆1049億円:1米ドル=155.43円(注2))、農業純所得(注3)は同29.5%増の1801億米ドル(27兆9951億円)と見込まれている(図1)。
 インフレ調整後でも農業現金所得は前年比18.8%増、農業純所得は同26.4%増と見込まれ、過去最高となった22年に次ぐ高水準となる。主な増加の要因は、23、24年に発生した災害への政府による損失補償となっている。
(注1)総農業現金収入(農畜産物の販売収入や政府補助金収入に、観光農園収入などの農業関連収入を加えたもの)から、農業を行うための費用および借入金の利子などの現金支出額を差し引いたもので、生産者のキャッシュフローの指標となる。
(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2025年1月末TTS相場。
(注3)農業現金所得に自家消費分などの非現金収入を加えた額から、在庫相当額の変化を反映させ、減価償却費などの非現金支出額を差し引いたもの。直接現金の増減として表れない収入や支出も反映している。
図1 農業所得の推移

牛の販売収入は0.2%減、生乳、牛乳・乳製品は2.7%増

 USDAによると、2025年の農畜産物販売収入は主要農畜産物価格の下落および生産減により、前年比0.3%減の5150億米ドル(80兆517億円)と見込まれている(表1)。
 品目別に見ると、畜産部門では肉牛(同0.2%減)は牛群縮小に伴う販売頭数減少の影響が販売価格の上昇を上回ることで、また、鶏卵(同2.2%減)は高病原性鳥インフルエンザからの回復に伴う供給量の増加による価格の下落から、それぞれ減少が見込まれている。一方、生乳、牛乳・乳製品(同2.7%増)は乳価の上昇によりやや増加が見込まれている。また、作物部門ではトウモロコシ(同4.3%減)や大豆(同6.6%減)が価格の下落により、それぞれ減少が見込まれている。
表1 農畜産物販売収入の品目別推移

政府補助金は災害に伴う損失補償などにより前年比4.5倍

 政府から生産者への2025年の補助金については、前年比4.5倍の424億米ドル(6兆5930億円)と大幅な増加が見込まれている(表2)。これは、23年から24年にかけて発生した干ばつや山火事、ハリケーンといった災害により生じた損失に対する補償額が、前年比8.2倍の357億米ドル(5兆5488億円)と大幅な増加が見込まれていることが要因となっている。一方、酪農マージン保障プログラム(注4)からの支払額については、乳価の上昇に伴い前年比約11.6%減の6800万米ドル(106億円)とかなり大きく減少が見込まれている。
(注4)全国平均乳価から飼料費を差し引いた額を酪農マージンとし、その額が酪農家各自で選択した保障水準を下回った場合に、その一部を補てんするプログラム。
表2 政府補助金の推移

生産費は飼料費の減少などにより前年比0.6%減

 生産費は前年比0.6%減の4504億米ドル(70兆14億円)と見込まれている(表3)。項目別に見ると、最大の支出となる飼料費(同10.1%減)に加えて、肥料費(同11.1%減)や農薬費(同6.0%減)についても前年に引き続いて減少が見込まれている。一方、家畜・家きん導入費(同6.5%増)は導入価格の上昇などにより、また、種苗費(同4.2%増)は作付面積の増加などにより、それぞれ増加が見込まれている。
表3 生産費の項目別推移

畜産部門の1農場当たり農業現金所得は酪農、肉用牛、養豚で大幅増

 このような背景を踏まえ、2025年の農業全体の1農場当たり平均農業現金所得は、12万8900米ドル(2003万円、前年比11.4%増)とかなり大きく増加が見込まれている。また、畜産の1農場当たり平均農業現金所得は、酪農(同25.3%増)、肉用牛(同21.3%増)、養豚(同22.0%増)、養鶏(同14.6%増)といずれも増加が見込まれている(表4、図2)。
表4 畜産の1農場当たり平均農業現金所得
図2 畜産の1農場当たり平均農業現金所得の推移
【小林 大祐 令和7年2月13日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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