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主産地での洪水によりサトウキビ生産に大きな被害(豪州)

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最終更新日:2025年2月14日

 現地報道によると、豪州北東部のクイーンズランド州では2025年1月末から広い範囲で豪雨による洪水に見舞われており、同州で2番目に大きい農産物輸出品である砂糖の原料であるサトウキビにも大きな被害が出てきているとされている。
 同州のサトウキビ生産者団体であるCANEGROWERSは2月5日のメディアリリースで、同州北部のサトウキビ生産者が前例のない規模の災害に直面しているとし、同州政府に対し、被害を受けたサトウキビ生産者の植え替え費用の支援を要請した。同州タウンズビルからケアンズ(ハーバート地域および北部地域)にかけての広範囲にわたる洪水により、豪州最大のサトウキビ生産地域を含む一部地域では、わずか数日で6カ月分の降水量が記録され(図1、2、3)、定植されたばかりのサトウキビの多くが被害を受けているとみられている。現在、同州では災害復旧のための助成金が交付されているが、サトウキビの植え替え費用をカバーしていない。このためCANEGROWERSは、多くの生産者が25年の生産目標に達しない事態に直面していることで、莫大な負債を抱えたり廃業に追い込まれたりする可能性があるとしている。
図1
図2
図3
 同州のサトウキビ生産と再生エネルギーに関する会員組織であるQCAR(Queensland Cane Agriculture and Renewables)は2月6日、同州北東部で発生した洪水の被害状況についてメディアリリースを発表した。この中で過去のデータに基づき、年間約450万トンのサトウキビが収穫される同州ハーバート地域では、50万トンから100万トンのサトウキビが損失したと推定している(図4)。サトウキビの価格を1トン当たり50豪ドル(4894円:1豪ドル=97.87円(注1))と仮定した場合、経済的損失は2500万〜5000万豪ドル(24億4675万円〜48億9350万円)と見込んでいるが、この数字には機械などの損壊や作物の植え替えなどによるその他の損失は考慮されていない。また、同地区における25年の収穫予測については、1)24年の収穫終了が遅れたこと、2)収穫されず()場に残されたサトウキビがあること、3)24年11月から12月にかけての大雨とその後の雨天時の収穫が翌年の作物に影響を及ぼしたこと、4)これまでの生育期間中に2000ミリリットル以上の降雨があったこと―などから、現時点では楽観的な見通しは立てられないとしている。ただし、今後も悪天候が続く場合などについては、サトウキビの収穫量が下振れする可能性もあるが、現時点では300万トン以上の収穫は可能であると見込んでいる。QCARが1月13日に発表したメディアリリースでは、豪州全体で127万トンのサトウキビが収穫されず圃場に残されており、農家は8300万豪ドル(81億2321万円)の損失を被ると見込んでいる。また、QCARは今回の被害の状況を受けて、州政府と連邦政府に対し、カテゴリーD(注2)の非常事態を宣言し、洪水の被害を受けた生産者のために連邦および州政府が共同出資する災害復旧資金制度(DRFA)による資金提供を開始するよう働きかけた。
図4
(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の1月末TTS相場を使用。
(注2)自然災害やその他の大規模な緊急事態の影響を受けた個人、コミュニティ、企業、地方自治体が復旧するための財政支援を提供する制度(DRFA)において、A〜Dの4つのカテゴリー別に支援措置が発動される。カテゴリーAは災害の影響を受けた個人・世帯への基本支援、Bは公共資産の復旧や地方自治体・企業など向けの復旧支援、Cは甚大な被害を受けた地域社会、地域、部門に対する援助であり、AおよびBの追加的支援を意図している。カテゴリーDは、上記A、B、Cを超える例外的な状況での支援であり、特に壊滅的な災害や長期的な経済影響が見込まれる場合には通常の支援では不十分であるため、より特別な措置が講じられる。

 
【調査情報部 峯岸 啓之 令和7年2月14日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9806