畜産 畜産分野の各種業務の情報、情報誌「畜産の情報」の記事、統計資料など

ホーム > 畜産 > 海外情報 > 2025年 > ドイツでの口蹄疫発生から1カ月が経過、豚肉価格が軟化(EU)

ドイツでの口蹄疫発生から1カ月が経過、豚肉価格が軟化(EU)

印刷ページ
 ドイツでは2025年1月10日、北東部のブランデンブルク州で飼養されていた水牛から、同国では1988年以来となる口蹄疫の感染が確認された(注1)。口蹄疫の発生から約1カ月が経過した2月17日時点で、2例目の感染は確認されておらず、ドイツ養豚生産者協会(ISN)は、EU理事会から同国の対応は迅速であったとの評価を受けたとしている。

(注1)海外情報「ドイツで1988年以来の口蹄疫が発生、水牛での感染を確認(EU)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_004004.html)をご参照ください。

ドイツ政府による口蹄疫への対応

 口蹄疫の感染が確認された農場の周囲には制限区域が設けられ、発生農場から半径3キロメートルの保護区域(Protection Zone)と同10キロメートルの監視区域(Surveillance Zone)が設定された(図1)。区域内では反芻(はんすう)動物や豚など口蹄疫に感受性のある家畜およびその由来製品の移動が禁止され、周辺では200頭以上の動物が殺処分されたほか、監視区域内の酪農家(1戸)は、2月9日までの30日間、生乳を廃棄処分することとなった。
図1
 その後、2例目の感染が確認されていないことから、2月11日に保護区域が解除され、監視区域に統合された。監視区域は早ければ2月25日に解除される可能性もあるが、口蹄疫清浄地域としての認定を受けるための国際ガイドラインに準拠するため、発生農場周辺の特定の措置と調査は4月11日まで継続される見込みである。なお、感染源や感染経路については依然として確認中である。

口蹄疫発生による影響

(1)豚肉

 2024年のドイツの豚肉生産量は、前年比1.9%増の430万トンとなった。16年以降、同国の豚肉生産量は減産傾向で推移していたが、これにより8年ぶりの増産となった。一方、足元では口蹄疫の発生を受け、英国など主要輸出先からの輸入禁止により国内の豚肉価格は軟化している。同国の豚枝肉卸売価格を見ると、口蹄疫発生前の25年第1週(24年12月30日の週)の100キログラム当たり201.71ユーロ(3万2649円:1ユーロ=161.86円(注2))から、第6週(25年2月3日の週)には10.6%安の同180.42ユーロ(2万9203円)へと下落している(図2)。

(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング格式会社「月末・月中平均の為替相場」の2025年1月末TTS相場。
図2
 ISNは、口蹄疫による価格下落による損失額は、年始からの3カ月で約1億ユーロ(約162億円)になると見込んでいる。

(2)牛乳・乳製品

 関係者によれば、発生農場の所在する地域は、主要生乳生産地域ではないことから、生乳生産への影響は限定的とみられる。同国の2025年1月の生乳価格は、前月並みの100キログラム当たり55.59ユーロ(8998円)で推移した。
 また、乳製品部門の影響評価は現時点では困難であるが、25年1月末時点でドイツからの牛乳および乳製品の輸入を全面的に禁止している国はチリ、ペルーなど少数に限られ、日本を含む多くの国がウイルスを不活性化する処理(加熱処理など)が施された製品であれば輸入を許可している。
【調査情報部 令和7年2月21日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-4397