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欧州委員会、EU農業の指針を発表(その2:貿易関係〜輸入品へのEU基準の適用を強化へ〜)(EU)

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 欧州委員会は2025年2月19日、2040年までの域内農業・食品産業の将来的な方向性とその達成のために実施する政策などを示す「農業と食のビジョン(A Vision for Agriculture and Food)」を公表した。「次世代のために魅力的な農業および食品産業を共に形成する」とされた副題が示すとおり、農業を将来にわたって持続可能かつ競争力のあるものとするため、世代交代の促進、生産者の公正な収入の確保、EUの食料安全保障・競争力の強化などに取り組むとした。この競争力強化の一環として、農産物などの輸入品へのEU基準の適用強化にも言及されている。以下は、本ビジョンで示された主な内容のうち、貿易に関するものである(注1)
 
(注1)域内産業に関する内容は海外情報「欧州委員会、EU農業の指針を発表(その1:域内支援関係〜農家への配慮をより鮮明に〜)(EU)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_004041.html)をご参照ください。
 

アニマルウェルフェア、農薬に関するEU基準を輸入品にも適用

 本ビジョンでは、これまで農業業界から要求のあった農産物などの輸入品へのEU基準の適用強化(注2)が打ち出された。特にアニマルウェルフェア(AW)と農薬に関する輸入品への基準の厳格化が挙げられた。
 
(注2)海外情報「生産者による抗議行動を受け、EU農相理事会が対案を発表(EU)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003726.html)をご参照ください。

(1)輸入畜産物に関するAW基準の適用方針

 AWに関しては、EU域内で生産される畜産物と第三国から輸入される畜産物に同じ基準が適用されるよう、AW関連法令見直しの提案を行うとした。見直しは、WTOのルールに準拠した方法で、2025年中に開始する影響評価に基づいて行うとしているが、具体的な基準の内容などについては本ビジョンでは述べられていない。なお、域内の家畜の飼養、と畜、食品のラベル表示に関するAW関連法令の改正は、2026年中に欧州委員会から見直し案が提出される予定となっている。

(2)輸入品の農薬使用に関する基準の適用方針

 農薬に関しては、域内で使用禁止となっている農薬を使用した製品を域内に輸入させるべきではないとした。この規制の実施に向けて、競争力や国際レベルへの影響も考慮し、法改正の必要性を見極めるための影響評価を2025年から開始する。

(3)その他の貿易に関する方針

 このほか輸入関係としては、EUの厳しい食品・飼料の安全関連規制の適切な実施を確保するため、タスクフォース(専任部門)を立ち上げて輸入品の管理を強化する。また、貿易相手国がダンピング行為などの不公正な貿易取引や非関税障壁を含む貿易摩擦につながる行為を一方的に行った場合の対抗として、野心的な「統一セーフティネット(Unity Safety Net)」を2025年に策定し、利用可能なあらゆる手段を用いて当該部門を保護する。
 また、EU産製品の戦略的な輸出促進や二国間貿易協定の最大限の活用、AWや植物保護製品(Plant Protect Products)などに関する国際基準の向上などにも取り組む。

関係団体の反応

 EU最大の農業生産者団体である欧州農業組織委員会・欧州農業協同組合委員会(Copa−Cogeca)は、今回のEU基準の輸入品への適用強化について歓迎の意を表した。
 一方、欧州乳製品輸出入・販売業者連合(Eucolait)は、貿易協定の活用などの農業食品に関する外交強化の必要性に同意しつつも、EUの食品輸入に関する規制は既に世界で最も厳しいものになっており、EU基準を他国にも求めることや輸入品管理の更なる厳格化は、貿易相手国との関係の強化にマイナスの影響を与えることになる、と懸念を示した。
【調査情報部 令和7年2月21日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-4397