(1) 「肉牛および乳牛産業の困難を緩和」
「三農」が一号文件で取り上げられるようになった2004年以降、中国畜産業(豚、牛、羊のほか鶏、鴨などの家きんなど)のうち、具体的な施策が記載されてきたのはおおむね豚だけである。そのような中、25年一号文件では初めて肉牛・乳牛について「困難を緩和する政策を着実に実施し、生産能力の安定を図る」と明記したことに業界の注目が集まっている。
25年1月、農業農村部はメディア懇談会を開催して24年の畜産業を「(23年に経営困難に陥っていた)養豚業界は既に苦境を脱したが、肉牛・乳牛業界はいまだに赤字状態で若干の改善に留まっている。この局面を完全に脱するには一層の努力が必要である。肉牛・乳牛産業の健全で持続的な発展を推進するため、農業農村部は関係部門と協力して生産・市場の動向監視を強化し、肉牛・乳牛産業の困難を緩和する政策を着実に実施し、技術指導を強化し、生産を安定させ、産業の対応力を増強する」と振り返っていた。25年一号文件の記載はこれを指したものと理解されている。
「困難を緩和(する政策)」(中国語では「纾困」)は、一般的には財政支援、税制優遇、貸付支援などの経済面での支援や就業支援などを指すとされ、業界は今後の具体的な支援策に期待を向けている。
(2) 養豚は「安定的な発展の促進」へ
豚は、肉の生産量が家畜の中で最多であり、主要な食料を安価で安定的に供給するとの政府の基本方針に関わる食料であること、それにも関わらず2018年のアフリカ豚熱のまん延によって大きく飼育頭数が減少したことから、19年以降、毎年一号文件で取り上げられてきた。24年の一号文件では「豚の生産能力調整の仕組みを最適化」とされていたが、これが25年一号文件では「豚の産出能力の監視と調整を適切に行い、安定的な発展を促進する」との記載に変えられた。
メディアに対し、農業農村部養豚産業監視予測首席専門家は、「24年は生産現場の実情に基づく生産コントロールの最適化と調整が進んだ。今年の政策の重点は、昨年改訂した豚生産能力管理調整方策
(注4)に基づく生産・市場動向の観測・予測を適切に行い、養豚生産量を合理的な範囲内に収めていくことになるだろう。25年の養豚生産量は、全体的に見れば小幅な変動に留まると見込んでいる」と述べた。
養豚業界は25年一号文件の記載を好意的に受け止めており、発表翌日の2月24日には上場する養豚企業の株価も上昇した。たとえば、大手会社「新希望」は取引停止直前にまで上昇、「大北農」は7%の上昇となった。
(注4)豚生産能力管理調整方策の改訂については海外情報「中国農業農村部、豚の飼養頭数調整のための方策を改訂」(令和6年3月12日発)をご参照ください。