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豪州、砂糖の中期的見通しと洪水被害の状況(豪州)

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最終更新日:2025年3月12日

 豪州農業資源経済科学局(ABARES)は2025年3月3日、2025/26年度(7月〜翌6月)および中期的な砂糖の生産・輸出見通しを公表した(注1)

(注1)ABARESは豪州の農畜産物の生産見通しである「Agricultural Commodities Report」を四半期ごとに公表しており、6月、9月、12月には短期的見通しを、3月には中期的(向こう5年度)見通しとなる。なお、この見通しはデータのみの公表となる。

25/26年度の砂糖生産量はかなりの程度増加も、輸出量はやや減少

 2025/26年度の豪州のサトウキビ収穫面積は36万9000ヘクタール(前年度比1.0%増)とわずかな増加が、サトウキビ生産量は3022万9000トン(同4.8%増)とやや増加が、それぞれ見込まれている(表1)。また、砂糖生産量は416万6000トン(同6.3%増)とかなりの程度増加が見込まれているが、砂糖輸出量は302万1000万トン(同3.6%減)とやや減少が見込まれている。砂糖生産量の増加要因についてABARESは、労働力の確保が改善し、24/25年度と比較してより生育に適した季節的条件が整うことを反映したものとしており、後述する洪水の影響は加味されていない。
表1

世界の砂糖需要は増加基調、豪州の輸出量は生産量の7〜8割を維持

 また、ABARESは29/30年度までの世界および豪州の中期的な見通しについて報告している。このうち、世界の砂糖生産量および消費量は増加基調となり、29/30年度にはそれぞれ生産量では2億971万トン、消費量では2億719万トンと見込まれている(表2)。輸出量についても同様に増加基調となり、29/30年度には7743万トンと見込まれている。この結果、世界の期末在庫量は1億トン台、期末在庫率は50%台での推移が見込まれている。一方で、砂糖価格については下落基調となり、29/30年度には名目ベースで1ポンド当たり17.6米セント(26.5円:1米ドル=150.67円(注2、3))と見込まれている。

(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2月末TTS相場を使用。
(注3)1ポンドは約453.6グラム、1米セントは1米ドルの100分の1。
表2
 豪州については、砂糖生産量は27/28年度にピークとなる435万1000トンが見込まれているが、22/23年度の461万7000トンは上回らないとされる。一方、砂糖輸出量は300万トン台で推移し、生産量に占める輸出量の割合は7〜8割を維持すると見込まれている。輸出額は名目ベースで26/27年度の25億4000万豪ドル(2418億842万円:1豪ドル=95.23円(注2))以降は、下落基調が見込まれている。このため、サトウキビ生産者への利益についても下落基調となり、29/30年度には名目ベースで1トン当たり50.4豪ドル(4800円)と見込まれている。

主産地クイーンズランド州の洪水被害、鉄道などのインフラにも影響か

 ABARESは、2025年1月下旬から2月上旬にクイーンズランド州北部で発生した洪水被害(注4)についても言及しており、多くの地域で1000ミリメートルを超える降水量が記録され、広範囲での洪水、作物や農業インフラの損失、長期的な道路閉鎖が発生したとしている。被害の全容はまだ明らかにされていないが、現地報道によると、サトウキビは洪水やサイクロンにも耐える比較的回復力のある作物であるが、新植されたサトウキビの一部が失われる可能性が高いと報じられている。現地のサトウキビ関係者からは、洪水がサトウキビの生産性に及ぼした影響は収穫開始時期の7月ごろまで把握できないと指摘している。また、25/26年度の収穫を前に、サトウキビ産業を支える鉄道インフラへの被害も懸念されている。

(注4)詳細については、2025年2月14日付け海外情報「主産地での洪水によりサトウキビ生産に大きな被害(豪州)」をご参照ください。

業界は災害復旧のための助成金が不十分と訴える

 現在、同州ではカテゴリーC(注5)に該当する災害復旧のための助成金が交付されており、その額は最大2万5000豪ドル(238万円)となっている。この助成金にはサトウキビの改植費用も含まれており、業界は一定の評価をしているが、同州の農業団体であるAgForceは、5000万豪ドル(47億6150万円)相当のサトウキビが洪水被害を受けていると推定しており、深刻な被害を受けたサトウキビ生産者に対しては不十分な額であるため、連邦政府に対しカテゴリーDへの引き上げを求めている。

(注5)自然災害やその他の大規模な緊急事態の影響を受けた個人、コミュニティ、企業、地方自治体が復旧するための財政支援を提供する制度(DRFA)において、A〜Dの4つのカテゴリー別に支援措置が発動される。カテゴリーAは災害の影響を受けた個人・世帯への基本支援、Bは公共資産の復旧や地方自治体・企業など向けの復旧支援、Cは甚大な被害を受けた地域社会、地域、部門に対する援助であり、AおよびBの追加的支援を意図している。カテゴリーDは、上記A、B、Cを超える例外的な状況での支援であり、特に壊滅的な災害や長期的な経済影響が見込まれる場合には通常の支援では不十分であるため、より特別な措置が講じられる。
 
 これを受けて、同州のサトウキビ生産者団体であるCANEGROWERSやAgForceは、州および連邦政府に対して洪水の影響を受けたサトウキビ生産者に対する助成金の基準額を、少なくとも現在の3倍となる7万5000豪ドル(714万円)まで引き上げるよう働きかけている。
 また、同州のサトウキビ生産と再生エネルギーに関する会員組織であるQCAR(Queensland Cane Agriculture and Renewables)は、被害を受けたサトウキビの改植に対する財政支援について、株出し栽培用サトウキビも考慮すべきと述べている。これは、現在の支援対象が新植されたサトウキビのみとされており、株出し用のサトウキビについても被害を受けているのに対象とされていないためである。
 現地報道によると、豪州東部沿岸地域にはさらにサイクロン「アルフレッド」が接近し、豪雨による洪水や突風による停電が広範囲で発生したとされ、すでに勢力を弱めて熱帯低気圧に変わっているが、引き続き大雨が予想されている。クイーンズランド州南部およびニューサウスウェールズ州北部を含む地域では、同国のサトウキビ生産量の1割程度が生産されており(図)、一部地域ではサトウキビ圃場(ほじょう)で洪水が発生したと報じられている。
図
【調査情報部 峯岸 啓之 令和7年3月12日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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