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スペイン、アニマルウェルフェア規制の開始時期を1年延長(EU)

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 スペイン農業食料環境省(MAPA)は2025年3月7日、同国における豚1頭当たりの飼養面積拡大などを定めた勅令159/2023(2023年3月8日公布)を改正し、既存の豚舎などへの25年3月9日からの規制開始時期を1年間延長すると発表した。
 同規制を巡っては、生産者団体などが(1)中小規模の養豚生産者にとって豚舎改修などのコスト負担、(2)豚飼養頭数の減少による収益性の悪化−などを理由に規制の緩和や適用開始時期の後ろ倒しを求めていた。

アニマルウェルフェア規制の厳格化

 勅令159/2023は、豚の断尾を減らすために、尾かじりの防止を目的として、豚1頭当たり最低飼養面積の拡大(表)など、EUの豚指令と同等の基準としていた従来の規制を、より強化したものとなっている。
 同規制が公布された2023年3月8日以降、新設される豚舎については同規制が適用されているが、既存の豚舎については2年間の移行期間が設けられていた。
表
 1年前(24年3月)には、スペインの主要豚肉産地であるカタルーニャ州(図)の複数の生産者団体が共同で声明を発表し、養豚生産者の生産コスト上昇と生産量が減少する中、豚舎の改修は収益性に大きな影響を与え、同州の養豚生産の競争力を損なう可能性があるとして、規制を見直すことを求めていた。
 また、青年農業者連合(ASAJA)と農畜産生産者調整委員会(COAG)によると、規制に対応するためには養豚場1戸当たり30万ユーロ(4713万円:1ユーロ=157.10円(注))を超える投資が必要となり、肥育豚の飼養頭数が年間400〜800万頭減少する可能性があると指摘されている。
 
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2025年2月末TTS相場。
図

MAPAは規制の一部見直しを検討

 MAPAによると、今後、さらなる勅令の改正を行う見通しとされており、業界団体などに対して、養豚場の1頭当たり飼養面積基準の緩和などを盛り込んだ規制の一部見直し案を提示している。
 今回の適用開始時期延長を受けて、スペインの農業団体である小規模農業畜産業者連合(UPA)は、MAPAが適用開始時期の延長と規制の見直し案を提示したことに評価するとした声明を発表した。
【藤岡 洋太 令和7年3月18日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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