米国農務省、米国豚衛生改善計画に対する意見募集を再開(米国)
米国農務省動植物衛生検査局(USDA/APHIS)は2025年2月27日、米国の豚の衛生状態の向上や疾病の発生状況の正確な把握などを行うプログラムの提案に対し、意見募集の再開を発表した。
1.意見公募の経緯
USDA/APHISは、養豚業界と協力し、アフリカ豚熱(ASF)および豚熱(CSF)のモニタリング対象の生産施設(後述)を認定し、疾病の監視を行う「米国豚衛生改善計画(USSHIP)」を2020年から試験的に運用していた。これらの試験運用プログラムを下にUSDA/APHISは、連邦政府が主導していくための規則案を24年12月30日に発表し、意見募集を実施していた。既に1月末までの意見募集期間を終えていたが、さらなる意見を求めるために、3月31日までを期間とする意見募集の再開を発表した。
USSHIPがモデルとしたのは、家きんの衛生管理と貿易問題に対処し、改善するための業界、州、連邦政府の関係者による自主的な取り組みである国家家きん改良計画(NPIP)である。NPIPは、H5およびH7亜型鳥インフルエンザなどを監視するプログラムであり、全米の商業規模の家きんおよび家きん卵生産施設の99%以上をカバーしている。
USSHIPの主な目的は、米国内の養豚場および食肉処理施設を対象にASFおよびCSFを監視することであり、参加施設として認定を受けた施設はバイオセキュリティ、トレーサビリティおよびモニタリング検査などの要件を満たしているという情報を付して製品を販売することができる。これにより、万が一、ASFやCSFなどの家畜疾病が発生した際は、速やかに発生地域を特定し清浄性が確保されている州や農場を特定し、清浄性が確保されている地域からの出荷ができることから、国際貿易や州際取引が混乱するリスクを制限することができるとしている。また、USDA/APHISは、養豚業者やその他の業界関係者、州の家畜衛生担当者をメンバーとする諮問委員会(GCC)を設置し、生産段階における衛生管理や疾病管理に関する事項について助言を求めることとしている。
2.USSHIPの内容
同プログラムは、参加する生産施設を(1)種豚場、(2)繁殖農場、(3)肥育農場、(4)一貫生産農場、(5)小規模施設(100頭以上、1000頭未満)、(6)非商用施設(100頭未満)、(7)生体市場、(7)と畜施設の7つに分類し、米国におけるASFまたはCSFの発生ステータス(未発生時、侵入・拡大時、清浄性回復期)に応じて疾病のモニタリングを実施するものである。また、生産施設においては、事業規模や出荷などの移動履歴の提出、当局から要請があった場合の農場におけるバイオセキュリティ改善計画の提出、食肉製品が含まれる可能性のある食品残さの使用禁止などを行う。現在、米国ではASFおよびCSFはいずれも発生しておらず、農場の検査は、症状によって他の疾病の際に行う鑑別診断の一部として主に行われている。米国にASFまたはCSFが侵入した場合、USSHIPに参加している生産施設は、ASFまたはCSFの特異的な症状の有無にかかわらず、一定の頻度および抽出率で検査を行うこととしている。なお、USSHIPによる検査はあくまでもスクリーニング(選別)の一環として行われ、万が一、検査で陽性となるような場合には、国家動物衛生研究所ネットワークに所属する公的な検査機関が診断を行う。
同プログラムの運営及び監督は、各州にゆだねられており、USDAはプログラムの内容について変更や改善を行うとともに、プログラムの普及活動を行う。また、プログラムには生産者及びパッカーが参加し、飼養する豚の衛生管理の向上、疾病の検査、トレーサビリティの確保に取り組む。さらに、プログラムの内容については、GCCによるフィードバックを行い、課題や改善点などについて、USDAに助言を行うこととしている。
3.業界の反応
全米豚肉生産者協議会(NPPC)は2025年1月30日、USSHIPに対する意見書を公表した。その中で、「米国の豚肉生産者は、毎年、生産量の25%以上を100カ国以上に輸出している。米国でASFやCSFを含む越境性動物疾病(FAD)が発生した場合、推定500億米ドル(7兆5335億円:1米ドル=150.67円(注))の損失を伴う可能性がある」とし、USSHIPが連邦政府のプログラムに規定されることを強く支持している。また、米国食肉輸出連合会(USMEF)も同日にコメントを提出し、「FADが発見された場合、貿易は停止されるが、監視および追跡システムの強化により、移動や貿易の再開がより迅速に行なわれるようになる。米国の豚肉加工業者および輸出業者は、今後も引き続きこのプロセスに参加し、支援していく所存だ」としている。また、動物用医薬品の開発および製造企業を代表する組織である動物衛生機構(AHI:Animal Health Institute)は、ASFおよびCSFのみならず、豚流行性下痢も監視対象に含めることを推奨するとしたコメントを提出している。
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2025年2月末TTS相場。
【調査情報部 令和7年3月24日発】
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