米国の主な豚肉輸出先はメキシコ、中国、日本であり、上位2カ国(メキシコ、中国)向けで豚肉輸出量全体の5割以上を占める(図4)。メキシコ向けはもも肉やバラ肉、中国向けは豚足などのバラエティミートを中心に輸出しているが、もも肉や豚足は国内の需要や輸出先が限られることから、報復関税による影響が懸念されている。
過去の米国産豚肉に対する報復関税措置は、2018年の第一次トランプ政権時にメキシコと中国が実施している
(注4)。この時は、米国が鉄鋼とアルミニウムの輸入に25%の追加関税を課したことに伴い、メキシコは米国産豚肉に20%、中国は米国畜産物などに25〜50%の報復関税をそれぞれ課した。メキシコが報復関税を課した18年6月から19年5月の米国からの豚肉輸出量は、メキシコ向けが前年比14%減、中国向けが同18%減となった。USMEFは、同期間の豚肉輸出に関する経済損失は4億米ドル(603億円:1米ドル=150.67円)、国内豚肉価格の下落も含めた経済損失は11億3000万米ドル(1703億円)にのぼったと試算している。
輸入に目を向けると、米国の主な豚肉輸入先はカナダが6割以上を占める(図5)。また、同国からは肥育もと豚や肥育豚などの生体豚を年間676万頭輸入(24年実績)しているが、これは米国の豚と畜頭数の5%に相当し、関税措置は米国内の豚肉生産にも影響を与えるとみられている。
(注4)2018年の報復関税措置については「米国産農畜産物などに報復関税を賦課(メキシコ)(平成30年6月28日発)」「米国産の畜産物や大豆など545ラインに追加関税を賦課(中国)(平成30年6月19日発)」も併せてご参照ください。