国際情報コーナー 農畜産物全般、畜産、野菜、砂糖、でん粉の海外情報、輸出促進対策などの記事、統計

ホーム > 国際情報コーナー > 海外情報 > 海外情報(砂糖) > 洪水被害を受けたサトウキビ生産者に対し、追加支援を決定(豪州)

洪水被害を受けたサトウキビ生産者に対し、追加支援を決定(豪州)

印刷ページ

最終更新日:2025年3月26日

 豪州北東部のクイーンズランド州北部では、2025年1月末から広い範囲で豪雨による洪水に見舞われ、同州第2位の輸出農産物である砂糖の原料となるサトウキビにも大きな被害が発生した(注1)。同災害について同州は、サトウキビ生産者に対してカテゴリーC(注2)に該当する災害復旧のための助成金を交付するとし、その額は最大2万5000豪ドル(238万円:1豪ドル=95.23円(注3))となる。しかし、深刻な被害を受けたサトウキビ生産者に対して額が不十分であると業界団体からの声を受け、連邦政府および州政府は3月12日、災害の度合いをカテゴリーDに引き上げた。これにより、サトウキビ生産者には最大7万5000豪ドル(714万円)の助成金が交付されることとなった。
 
(注1)これまでの経過状況については、2025年2月14日付け海外情報「主産地での洪水によりサトウキビ生産に大きな被害(豪州)」および3月12日付け海外情報「豪州、砂糖の中期的見通しと洪水被害の状況(豪州)」をご参照ください。
(注2)自然災害やその他の大規模な緊急事態の影響を受けた個人、コミュニティ、企業、地方自治体が復旧するための財政支援を提供する制度(DRFA)において、A〜Dの4つのカテゴリー別に支援措置が発動される。カテゴリーAは災害の影響を受けた個人・世帯への基本支援、Bは公共資産の復旧や地方自治体・企業など向けの復旧支援、Cは甚大な被害を受けた地域社会、地域、部門に対する援助であり、AおよびBの追加的支援を意図している。カテゴリーDは、上記A、B、Cを超える例外的な状況での支援であり、特に壊滅的な災害や長期的な経済影響が見込まれる場合には通常の支援では不十分であるため、より特別な措置が講じられる。
(注3)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2月末TTS相場を使用。

 

生産者団体、追加支援は現実的な再建コストを反映と評価

 クイーンズランド州のサトウキビ生産者団体であるCANEGROWERSは、壊滅的な自然災害から立ち直ろうと奮闘している生産者にとって、再建コストは膨大であり、当初の額では不足だとし、今回の助成金の増額は生産者の努力と地域の復興に大きく寄与するものと評価している。また、増額のために必要な情報を提供した生産者に感謝の意を表し、洪水被害の規模や復旧に要する実際の費用など、生産者から寄せられた詳細な報告が追加支援を求める根拠となったとしている。さらに、連邦政府および州政府と同州の農業界の協力により今回の増額が得られたとし、同州の生産者が復興と繁栄のために必要な支援を受けられるよう、引き続き両政府に働きかけていくとしている。

支援増額の一方、問題も残る

 今回の洪水被害について同州のサトウキビ生産と再生エネルギーに関する会員組織であるQCAR(Queensland Cane Agriculture and Renewables)は、カテゴリーDの災害に引き上げられたことについて感謝の意を表し、数億豪ドルの経済的損失を被ったサトウキビ生産者や第一次産業従事者にとって、この増額は「人生を変えるような支援」になると述べている。同組織の代表は、今回の増額は、同州の農業団体、政治家、公務員、そして自らの被害状況を共有した生産者などによる数週間にわたる働きかけの成果であるとしている。しかしQCARは、今回の助成金が公平に分配され、真に必要とする人々のもとへ届くことを保証しなければならないと指摘し、その一例として、サトウキビの収穫作業を副業として請け負う者が、今回の支援から漏れる可能性について言及している。また、現在の支援対象が新植されたサトウキビのみとされ、株出し栽培用サトウキビが今回の支援対象とならない点についても再度指摘しており、この問題について引き続き対応を求めている。特に洪水の被害が深刻なハーバート地域で新植されるサトウキビは、生産されるサトウキビ全体のわずか16%を占めるに過ぎず、多くが株出し栽培によって支えられている。
 
【調査情報部 峯岸 啓之 令和7年3月26日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9806