畜産 畜産分野の各種業務の情報、情報誌「畜産の情報」の記事、統計資料など

ホーム > 畜産 > 海外情報 > 2025年 > 2024年の中国飼料業界、家きん向けを増やす(中国)

2024年の中国飼料業界、家きん向けを増やす(中国)

印刷ページ
 中国畜産業メディアは2025年1月17日、24年の中国飼料業界の状況を振り返った記事を公表した。その主な内容は以下の通り。

2024年の中国飼料業界総括

 2024年の中国の飼料生産量は3億1000万トンと、前年からやや減少の見込みである(注)。養豚などの生産現場で生産調整が進んだことで、飼料生産も影響を受け、大手飼料企業は軒並み減産に陥った。この結果、業界の集約化が一層進み、最新の統計によれば24年の飼料業界国内上位20社の総飼料生産量は2億トン超と、全国の約65%を占める見込みで、これは23年に比べて約4%の上昇となる。

 (注)中国飼料工業協会の発表によれば、2023年の総生産量は3億2200万トン、22年は3億200万トン、21年は2億9300万トン、20年は2億5200万トンとされる。よって、これと比較すると2024年は前年比3.7%減となる。

 これら20社は大きく三つに分類できる。一つ目は年間飼料生産量が1000万トンを超える企業が合計7社あり、生産量の多い順に1)広東海大グループ、2)新希望六和股份有限会社、3)牧原股份有限会社、4)温氏食品グループなどである。このうち3位の牧原と4位の温氏は自社生産した飼料を自社使用する農業・牧畜業会社である。二つ目は年間生産量が500〜1000万トンの企業が合計7社、三つ目は年間生産量が270〜400万トンの企業が合計6社であった。注目に値するのは、飼料業界では強者は常に強いという傾向があるとされる中、業界首位の広東海大グループの飼料生産量が前年比9%増になっただけではなく、二つ目に分類された2社も同13%増になった点である。
 24年の畜種別の飼料生産量を見ると、肉用家きん向けが小幅な増加となった以外は、24年第1四半期から第3四半期までの3期の合計では、前年同期間に比べて養豚向けは1億200万トン(前年同期比6.8%減)、採卵用家きん向けは2288万トン(同5.9%減)、反芻(すう)動物向けは1081万トン(同11.4%減)、水産物向けは1859万トン(同2.8%減)であった。
 業界10位の飼料企業関係者は、「25年も飼料企業の利益率は下降し続けるだろう。激化する国内競争を受け、多くの企業が自主的に退場するか、淘汰(とうた)されるだろう。飼料は既に利益率が低い商品となっており、業界競争が激しくなる中、技術力で優位性を示すことは難しく、それよりも原料の購買力と全体の運営能力とが試される」と語っている。

養豚向けおよび家きん向け飼料の状況

 養豚向け飼料は、飼料業界にとって最も重要な部分である。養豚向け飼料は稼げるとの神話は2024年に消え失せ、大手飼料企業は供給と価格で激しい競争を繰り広げた。業界第2位の新希望六和の工場関係者によれば、国内の養豚業では、一定頭数規模の生産を行う農場が既に全体の70%を超え、そのうち50%超の農場は飼料企業でもあるため飼料を外部購入する必要がなく、加えて、外部購入する場合でも安値を要求して購入先となる飼料工場の利益を圧縮することになるため、多くの飼料企業は新たな市場として家きん生産に着目することとなった。そのため、24年の飼料市場では家きんが一つの着目点となった。養豚向けが振るわなかったことを受け、最大手である広東海大などの企業は積極的に家きん向けを増やし、24年の飼料市場競争を勝ち抜いた。しかしながら、近年は大手家きん企業も徐々に飼料の購買比率を下げ、飼育と飼料生産を合わせた運営を実現している。このため、将来的には家きん向け飼料の販売を行う企業にとって、厳しい状況となることが予想される。大手家きん企業の飼料関係者によれば、同社の24年の飼料生産量は約380万トンと前年から80万トン程度増加し、自社の家きん飼養羽数の増加に合わせて自前の飼料生産量を増やしていくという。

飼料企業の海外進出状況

 厳しい競争を受け、特に飼料生産、販売を中心に行う企業にとっては輸出が新たな成長の機会となっている。2023年の全世界の飼料総生産量は12億9000万トンであり、アジア・太平洋、ラテンアメリカおよびアフリカでいずれも増加した。
 海外の飼料市場は成長の余地が大きく、中でも東南アジア、アフリカ、ラテンアメリカなどの地域では肉たんぱく需要の増加と消費構造の変化が進んでいるため、飼料需要も拡大している。広東海大は投資者からの質問に対し、多様な方法によりこれら地域での飼料生産の拡大に向けた取り組みを行っていると回答した。同社は24年上半期、海外での飼料販売量が100万トンを超え、前年同期比で30%増加している。また、新希望六和の関係者によれば、同社はインドネシア、ベトナム、エジプト、フィリピン、インドなどの地域で海外業務を展開しており、24年第1〜3四半期には、海外での飼料販売量は前年同期比で14%増加し、そのうち70%が家きん向け飼料であったという。同社の社長は別メディアからのインタビューに対し、「農業・畜産業は長期に渡る経営が必要であり、一部の多国籍企業に見られるような進出先の資源を搾取するやり方ではなく、その地域の関係者が長期に渡って生活できるよう、信用を構築し、その地域に溶け込むようなやり方をしていく」と語っている。
【調査情報部 令和7年3月26日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9530