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中国のネットブロガー、牛肉情報に高い関心(中国)

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 上海市在住のビジネス関係の記事を掲載しているブロガーが、中国の牛肉業界に関する状況や課題、可能性などに関する記事を掲載したところ、掲載から一週間で5000回を超える閲覧数があった。中国の牛肉に対する関心事項の一例として、その内容を紹介する。
 ブログの読者からは、「中国の肉牛飼養農家が困っている状況がよくわかった」「国産牛を意識して買おうと思った」とのコメントが寄せられている一方、「データの貼り付けだけで、結局何を言いたいのかわからない」との批判もあるがデータに基づいた記事であることが分かる。

牛肉の供給状況

 中国では、輸入牛肉への依頼度が増えている。2024年の輸入量は287万トンに達し、国内消費の22%を占め、輸入先はブラジル、アルゼンチンが60%を占めた。(輸入の中心となる)冷凍牛肉は輸出先での出荷から国内で消費されるまで、8から10もの流通過程を経ており、輸出先の生産地価格に比べて40%以上も価格が高く、そのことが、中国の牛肉価格の変動要因となっている。
 他方で、中国の牛肉生産能力は構造的な矛盾を抱えており、生産量は779万トンに及ぶものの、乳牛由来の牛肉も多く、また、零細飼養農家(1戸当たり飼養頭数9頭以下)が多いなどの生産モデルが残存していることで、牛肉の品質に不安定性をもたらしている。

牛肉の流通状況

 中国の牛肉の流通は、サプライチェーンが非効率で、(流通過程での)ロスが多いという特徴を有している。
 サプライチェーンが非効率になる主な理由は、いたずらに流通経路が長いことにある。肉牛の飼養場から末端消費地まで、と畜、卸売市場、小売業と多層に渡る流通過程があり、コールドチェーンのカバー率は県(中国の基層行政区)以下では30%を切っており、ロス率は10〜15%にも達している。
 また、情報の非対称性による問題も多い。輸入業者と国内加工工場との間には需給のミスマッチが生じており、例えば2023年には一時期、港湾で100万トン以上の冷凍肉が滞留する事態が発生し、価格を押し下げる要因となった。

牛肉の消費状況

 中国の牛肉の消費は、近年消費経路が多様化し、食肉の中でも特に品質に対する需要が高まっている。
 消費を牽引するのは飲食業界であり、火鍋、焼肉といった場面での消費が80%を占める。とはいえ、2024年は景気停滞を受けて飲食業でも単価抑制の動きがあり、40%の飲食関係企業が高価格商品である牛肉メニューの数を減らした。
 品質に対する需要とは端的には高級化路線が明確になったことであり、グラスフェッド(牧草飼育)の牛肉でも肉質の良いものは価格が30〜50%上昇し、有機認証を受けた牛肉の年間消費額も25%以上上昇した。しかしながら、牛肉の等級制度が整っていないことにより、「同じ価格なのに品質にばらつきがある」との問題が生じている。

牛肉が直面する課題・リスク

 中国の牛肉は次の課題・リスクに直面している。

ア 過剰生産
 2024年、牛の出荷価格は1キログラム当たり11元(229円(注))にまで落ち込み、飼養農家の1頭当たりの赤字は平均1600元(3万3280円)を超え、かつ、8カ月連続で赤字となっている。

イ 輸入圧力の増加
 ブラジルの出荷価格は中国よりも安く、2025年も引き続き輸入量が高い水準を維持することで、国産牛の利益率が圧迫されると見込まれる。

ウ 品種のボトルネック
 優良品種(例:アンガス種)は輸入に頼っており、国産繁殖技術の遅れが品種改良を制限している。

エ 疾病予防圧力の上昇
 口蹄疫などの発生により、2023年の肉牛死亡率は20年と比較して12%上昇しており、飼養リスクが高まっている。

 (注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均為替相場」の2025年2月末日TTS相場である1元=20.80円を使用した。

牛肉の可能性

 中国の牛肉は次の可能性を秘めている。

ア 大規模飼養の拡大。
 トップ企業は「企業+飼養農家」モデルを急速に拡大しており、政府も産業チェーン全体の規模化を進めている。

イ 環境衛生管理の強化
 政府は,「肉牛肉羊増量品質向上行動」のために30億元(624億円)を投入しており、今後、高機能の飼養環境施設やふん尿処理施設の建設が進む見込みである。

ウ デジタル飼養の普及
 2026年には、飼養施設でのデジタル化率が35%に達し、人件費コストが30%低下することで出荷効率の向上が見込まれる。

エ トレーサビリティの普及
 ブラジルの「牛肉チェーン」方式のように、牧場から食卓までの全チェーンの追跡が可能となることで、国際市場における(中国産牛肉の)信頼が向上する。

オ 輸出の拡大
 「一帯一路」が中東、東南アジア市場に及ぶことで、2025年の輸出量は10万トンを超える可能性がある。

業界団体に求めること

 牛肉関係の業界団体には次のことが求められる。

ア 基準の制定
 グレインフェッド(穀物肥育)、有機認証などに関する中国の認証基準を定め、「同じ価格で品質が異なる」問題を解消すること。

イ データの裏付けの提供
 取引のためのプラットフォームを整備し、流通過程で価格がつり上がる事象を抑制し、サプライチェーンの透明性を向上させること。

ウ 国際協力の推進
 ハラル認証の制定に参画する、細胞培養肉に関する国際基準を制定するなどにより、国際的な発言力を増進すること。
【調査情報部 令和7年3月26日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9530