中央一号文件の精神に則り、以下の方策を進める。
(1)養豚の生産能力に対する監督とコントロールを適切に行う
豚生産能力管理調整方策を着実に実施し、母豚の飼育頭数を適切に押さえ、生体豚の生産能力を合理的な範囲に維持する。主要なメディア、WeChatグループ、公益性のある動画などを活用し、多様な生産主体に対する啓発を強化する。飼育主体に対して産出能力の優良化を促し、価格が下落すると見込まれるときには肉付きの良い豚は出荷しつつ産出能力の低い母豚や弱った子豚の淘汰(とうた)を進めるなどにより出荷総量は押さえ、市場情勢に反した盲目的な生産能力の拡大を抑制する。大養豚企業の金融リスクを常に注視し、その経営や負債の状況を緊密に捕捉することでリスク予測を強化し、企業が立地する地域の政府が責任を負う属地責任を徹底し、負債率が高い企業に対しては個別指導を行うなどにより、金融リスクの解消を図る。
(2)肉牛、酪農への支援を促進する
2024年に7部門が共同で発出した「肉牛乳牛生産の安定化に関する通知」をさらに一歩推し進め、財政的、金融的措置による支援を強化し、飼養農家が困難な時期を乗り越えられるよう支援する。母牛群の拡張と品質向上を図る政策を推進し、また、細やかな対応により飼養農家に可能な限り迅速に資金が届くように務めることで生産基盤の優良化、安定化を図る。さらに、金融部門と協力し、肉牛や乳牛、畜舎などを動産担保とすることや、貸付期間の延長、継続貸付の実施などにより、当面の経営困難を乗り切れるよう支援し、地方政府による利子補給を奨励する。牛肉の輸入と生産が協調する仕組みを整え、商務部が主導している輸入牛肉に対するセーフガード調査
(注4)に協力する。牛肉の品質に関する基準を策定し、生鮮牛肉、生乳についての消費宣伝を強化し、品質の向上と価格の適正化を促す。
(注4)海外情報「中国商務部、輸入牛肉に対するセーフガード措置実施の調査を開始(中国)」(令和7年1月28日発)をご参照ください。
(3)乳業における生産と加工の一体化を進める
滅菌(殺菌)乳に関する新たな国家基準についての解説・宣伝を強化し、また、還元乳に関する基準・標識調査を展開するとともに、滅菌乳の新国家基準の着実な実施を加速する。さらに、乳業における生産と加工の一体化を推進する政策通知の発出を進め、酪農・乳業に対する政策を着実に実施することにより、乳業各社が原料となる生乳を安定的に調整できる比率を高めるとともに、条件が合う場合には酪農場の近隣で加工を行うことも推奨し、酪農家の収入増の可能性を広げる。乳業生産能力向上推進などのプロジェクトにより、家庭牧場や酪農合作社(組合)などの新しい経営主体を育成し、乳業の産業チェーン全体の協調的な発展を促進する。
(4)違法な豚と畜行為などに対する厳格な取り締まりを実施する
豚と畜産業の秩序だった発展を促し、法に基づかないと畜を厳格に取り締まる。行政区域の境目、既に取り締まったことのある小規模と畜場や違法と畜場密集地点など、生体豚の仲介所となりやすい区域を対象に、定期的に網の目方式の調査を実施し、不適切なと畜、不適切な薬品の添加、病死した家畜の食用加工といった行為を厳格に取り締まり、行政罰と刑事罰を厳密に組み合わせる。また、政府関係の獣医チームの育成を適切に行い、職務履行能力を向上する。さらに、検疫制度の実施を着実に行い、監督業務におけるデジタル技術の導入を加速し、年内に動物検疫に関する証書のペーパーレス化を進め、関係データの相互利用を強化し、行政による監督機能の向上を図る。
(5)疾病管理を強化する
アフリカ豚熱のような重大動物疾病に対する的確な防疫、ブルセラ症のような人畜共通感染症への発生源からの防疫、また、野生動物に対する疾病コントロールなどにより、区域をまたぐ重大動物疾病の発生を確実に予防する。疾病に関する報告制度をより確実なものとし、村全体、飼養場全体を対象とする調査や飼育場入口などでの抽出調査を着実に実施する。疾病の発生状況について、速報、週報および月報で提供する。疾病発生時の対応体制を改善する。清浄地区、無疾病地区などを設定し、また、疾病の追跡と動態管理を強化する。区域によって異なる防疫措置を取り、大区画内における防疫、検疫、流通管理、と畜管理などの相互連携を推進する。
(6)草原型畜牧業のレベルアップを加速する
畜産業における飼料節約プロジェクトをさらに推進する。「飼料作物の高品質発展
(注5)を進めることに関する意見」
(注6)を着実に実施し、各地域における耕作地、草原などの土地資源の合理的な利用を進め、飼料作物の生産を積極的に展開する。アルカリ性土壌の草地化を進め、安定的な飼料作物生産地を造成する。食糧利用から飼料利用への転換や「暖かな季節は適度に放牧し、寒い季節には畜舎や半畜舎で飼養する」などの生産モデルを推進する。飼料作物についても観測の仕組みに組み込み、健全な飼料統計観測・調査の仕組みを整備する。草原型畜牧業のレベルアップ・プロジェクトを推進し、他地域でも展開・推奨可能な経営モデルを作り、収集する。草原に関する補助・奨励政策を着実に実施し、環境保全との協調的発展を図る。
(注5)中国政府が進めるすべての政策は基本となる5か年の方針または計画に基づく。現在の5カ年期間である21年から25年までの政策スローガンの一つに「高品質発展」があり、あらゆる産業の量から質への転換を目指すとの意味が込められている。
(注6)2024年10月、国家発展改革委員会、農業農村部および国家林業草原局が連名で発出した文書。30年までに優良な飼料作物の生産面積は1.35億ムー(900万ヘクタール)、生産量は1.3億トンとし、牛と羊の優良飼料需要の85%を満たす、とした。