■ 全国政治協商委員会委員の昝林森氏(注2)
近年、肉牛産業が直面する課題として、飼養農家と飼養企業の利益が圧迫されていることが挙げられる。輸入牛肉価格がより安価なことで、多くの肉牛飼養農家が規模を縮小し、食肉処理企業もと畜を止めて、より利益が得られる輸入牛肉の加工を行っている。国産牛は生産コストが比較的高いため、輸入牛肉と比べて競争優位性がない。また、牛肉の消費力が落ちていることも問題である。
(中央一号文件
(注3)に記載された)「肉牛および乳牛産業の困難を緩和」に対する提言として、今回の両会期間中に、畜牧産業におけるリスク予測とそのコントロールの強化について訴えることを考えている。目下の困難の緩和には多大な労力を伴うが、それでもなおそれと同時に肉牛産業と食肉の位置づけは何か、市場ニーズは何かといったことを俯瞰的かつ明確に把握し、対応していく必要がある。国産牛は中級・低級の牛肉需要にはおおむね対応することができ、一部の高級牛肉需要にも対応可能である。市場で不足しているのは高級牛肉であり、牛肉の輸入に対しては輸入割当を適切に運用する必要がある。
また、これまでの各種措置の結果、2月の旧正月期間終了後、特に中央一号文件の公表以降、市場に自信が戻ったこともあり、多くの関係者が牛肉価格は上昇に転じたと感じている。地域によってはさらに良い反応が出ている。
(注2)2018年に全国人民代表大会代表に選出され、23年からは全国政治協商委員会委員。中国の農学部系大学でもトップクラスの西北農林科技大学国家肉牛改良センター主任のほか、同大学牛業生物技術・応用国家地方連合工程研究センター、全国肉牛遺伝資源改良計画専門家指導チーム副チーム長、全国畜牧業標準化技術委員会副主任、国家家畜・家きん遺伝資源委員会顧問、農業農村部肉牛遺伝資源改良・生物技術育種刷新チーム首席専門家などを兼務する。
(注3)2025年の中央一号文件中畜産業に関する内容については海外情報「中国が今年の一号文件を発表、初めて肉牛に言及、養豚は安定化へ(中国)」(令和7年3月7日発)をご参照ください。