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中国の野菜価格、生産過剰や流通コスト削減などから下落が継続(中国)

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最終更新日:2025年3月28日

 中国では、野菜価格の下落が続いている。価格下落の状況、その原因について関係者の声などを紹介する。

価格下落の状況

(1)中国野菜協会の公表データ
 2025年1月の全国28カ所の野菜産地平均価格は、1キログラム当たり2.91元(61円(注1))と前年同月比6.1%安となり、この5カ年の最低価格と同等の水準を記録した。
 北京新発地(中国でも上位規模の消費地卸売市場)の2月22日から28日までの野菜加重平均価格も、同3.24元(67円)と前年同期の同3.62元(75円)と比べて10.5%の下落になった。前週に比べても1.5%安となり、同市場では2月の月平均全体でみても1月に比べて下落した。

 (注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均為替相場」の2025年2月末日TTS相場である1元=20.80円を使用した。
写真 中国杭州市卸売市場の野菜エリア
(2)天津市の野菜調製・加工企業の状況
 天津市で野菜の洗浄、カット、包装などを行う企業は、野菜農家との直接契約により、1日当たり8000キログラムもの野菜を取り扱っている。この企業によれば、「昨年の今頃は、トラック1台分の野菜に対して5000元(10万4000円)強を支払っていたが、今年は4000元(8万3200円)も払えば買えてしまうため、約20%は安くなっている」という。

(3)天津市の食品スーパーの状況
 天津市内で200平方メートルに満たない野菜売り場で100種類以上の野菜を取り扱っている食品スーパーは、「最近の野菜価格は昨年に比べてかなり安い」としている。500グラム当たりの価格を例にすれば、きゅうりは昨年の3元(62円)強から1.98元(41円)に、トマトは同6元(125円)前後から2.99元(62円)に、いずれも大きく下がっている。また、1日当たりの野菜の客単価は、昨年の約30元(624円)から今年は約25元(520円)に落ち込んでいる。一方で、客数は前年比11.6%増となり、売り上げ全体では販売量が同30%増、売上額が同22.5%増となっている。

価格下落の原因

 野菜価格下落の要因について野菜市場関係者は、(1)過剰生産、(2)物流コストの低下にあるとしている。

(1)過剰生産
 野菜価格下落の要因について、河北省(北京市および天津市に隣接、中国の北側に位置)の野菜生産者は、「華南の野菜を華北に運ぶことが定着している中で華南からの野菜供給量が増えたことが原因」と語る。また、雲南省(中国の西南に位置)の野菜生産企業も同様に、「2023年は天候不良、天災などで野菜の生産量が少なく、野菜価格が高騰したことから、24年は多くの野菜生産企業が増産した」と語る。雲南省(注2)の有名野菜生産企業は、前年から栽培面積を1万ムー(667ヘクタール、1ムー=0.0667ヘクタール)拡大したとされ、地域の平均生産量を踏まえれば、これで16万トンもの増産となる。野菜の卸売市場として全国的に有名な山東省寿光市の野菜生産者と取引をする市場関係者は、「生産量が市場の需要を上回っていることで価格が下がる」と価格下落の要因を述べている。

 (注2)雲南省の野菜栽培面積は2000万ムー(133万3333ヘクタール)を超えており、とうがらし、大型はくさい、中型はくさい、にんじん、キャベツ、しょうが、トマト、きゅうりなどの生産量は全国の60%を占め、省全体の生産量の70%は全国150以上の都市と40以上の国外(地域)で販売されているという。

(2)物流コストの低下
 野菜の価格下落の要因として、物流コスト、中でも冷蔵保管コストの低下と産地直送が増えたことによる中間費用の削減を指摘する声がある。

ア 冷凍保管コストの低下
 中国物流・購買連合会コールドチェーン専業委員会の公表データによれば、2024年の国内冷蔵施設需要面積1760万立法メートルに対し、貸出可能面積は3654万立法メートルとされる。供給面積が需要面積の2倍に及んでいるということは、半分近い冷蔵施設の借り手がいないということである。
 ある冷蔵施設会社の経営者は、「5年前に1.2億元(25億円)かけて雲南省に冷蔵施設会社を設立し、35の冷蔵施設を整備した。全部貸し出してはいるものの、今年の1施設当たりの貸出金額は約6万元(125万円)前後と、昨年に比べて10万元(208万円)以上安くなった」とし、地域の冷蔵施設が急速に増えたことで、半分以上が使われていない飽和状態になっていると語る。

イ 産地直送の増加による中間コストの削減
 寿光市の卸売市場の野菜卸業者は、「海吉星社(注3)の設立で状況が一変した。北京新発地市場から高い価格で仕入れていた小規模卸売業者も、いまでは海吉星社のネットワークを活用し、雲南省、海南省、福建省などから直接配送・購入することが可能となった。同社のネットワークは北京市、天津市、河北省はもとより、山東省、遼寧省といった野菜生産地の二次卸業者からも直接野菜を仕入れることができる」として、流通網の改善効果を掲げた。このような動きは、各地で起きている可能性がある。

 (注3)海吉星社は、深(しんせん)市の上場企業である深市農産品股有限公司とフランスの企業が共同で設立した農産物の直送サービス、コンサルティングなどの提供を行う企業である。野菜卸売業者は同社と契約することで、同社のネットワークを活用して自社の顧客に直送サービスの提供が可能となる。具体例として、野菜卸売業者は卸売市場を介さずに直接野菜生産地の二次、三次卸業者と取引を行い、数十のスーパーマーケットやレストラン、インターネットプラットフォームに野菜を提供している。

【調査情報部 令和7年3月28日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9530