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アーラとDMKの合併により、欧州最大の酪農協誕生へ(EU)

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 デンマークの乳業最大手アーラフーズとドイツの大手乳業DMKグループ(いずれも酪農協同組合)は2025年4月8日、両社が合併の意向であることを発表した。合併に向けた具体的手続きとして、今後、6月に双方の代表委員会による承認と、25年末までに規制当局の認可が必要となる。今回の合併により、売上高190億ユーロ(3兆868億円:1ユーロ=163.58円(注1))、組合員数1万2000戸以上、年間1900万トンの集乳量を誇る欧州最大の酪農協同組合が誕生することになる。
 合併後の社名はアーラが予定されており、デンマークに本社が置かれる。
 両社の発表によると、今回の合併は高品質の乳製品生産と技術革新を強化し、より良い乳価の維持につながるとしている。
 DMKグループのミュラー最高経営責任者は、アーラフーズとの合併により「欧州の生乳生産量の減少が予測されている中で、ブランド製品とプライベートラベルの組み合わせによる多様な製品群の提供や、より多くの国における販売が可能となる 」と述べた。
 
(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2025年3月末TTS相場。

合併により売上高は世界第4位へ

 オランダの農協系金融機関ラボバンクによると、2023年のアーラフーズとDMKグループの売上高は、世界の乳業ランキングでそれぞれ第7位と18位になっている(注2)。今回の合併により、単純な売上高の合算では同年4位のフランスのダノンを上回る規模となる。
 
(注2)海外情報「2023年の世界の乳業ランキングトップ20を公表(EU)」をご参照ください。

生産者と飼養頭数が減少するEU

 近年、EUでは環境規制の強化などを背景に、酪農生産者と乳用経産牛飼養頭数の減少が続いている(図)。アーラフーズの組合員は2020年の9406人から24年には7624人に減少している。1頭当たりの乳量の増加により域内全体の生乳生産量は横ばいを維持しているが、欧州委員会は、中期的には西欧を中心に生乳生産量は減少傾向で推移していくと予測している(注3)
 
(注3)海外情報「欧州委員会の生乳・乳製品中期需給見通し、生乳は減産、チーズは増産(EU)」をご参照ください。
図

ドイツの酪農生産者団体は乳業の寡占化を懸念

 ドイツの酪農生産者協会(BDM)は、今回の合併により、乳業の寡占化が進み、生産者がさらに弱い立場になる可能性があるとして懸念を表明した。そのうえで、生産者の利益を守るために、EUの「単一共通市場(CMO)」政策により定められている生産者の交渉力強化に関する規則に基づき、事前の書面契約による生乳取引を行うよう求めた。
【藤岡 洋太 令和7年4月11日発】
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