インドネシア向け豪州の生体牛輸出が好調(豪州)
2024年の豪州の生体牛輸出頭数は、76万6044頭(前年比13.2%増)とかなり大きく増加し、そのうち7割をインドネシア向けが占めている(図1)。インドネシアでは、豪州から輸入された生体牛を自国内の肥育場で育て、と畜処理し、生産された牛肉は主にウェットマーケットと呼ばれる生鮮食品を取り扱う市場で販売されている。豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、このような市場では、消費者は安価なものを選ぶ傾向があり、インド産の水牛肉やブラジル産の牛肉などに比べて豪州産は価格競争力を有することから、豪州産生体牛の安定した輸出につながっているとされている。また、同国の消費者は、食品の生産システム、原産地、ハラール認証に関して、より透明性を求めるようになってきており、透明性の高い生産システムとトレーサビリティに対する評価が高い豪州産牛肉は、消費者に好まれているとされる。
24年のインドネシア向けの生体牛輸出頭数は、53万7274頭(前年比49.2%増)と前年から大幅に増加した(図2)。また、25年1〜3月の輸出頭数を見ると、8万4292頭(前年同期比8.8%増)と前年を上回る水準にある。この背景には、同国にとって豪州が唯一(注)の生体牛輸入先であることに加え、インドネシアからの堅調な需要があるとみられる。
また、インドネシア政府は2030年までに1人当たりの牛乳消費量を倍増するという野心的な目標を設定している中で、輸入に頼らず国内の牛乳生産量を大幅に増やすとの方針から、今後4年間で100万頭の乳牛の輸入を計画している。同国政府は、栄養価の高い食事を小学生や中学生(イスラム全寮制学校および特別支援学校を含む)、妊婦、幼児、授乳中の母親などに無料で供給するために、国産の牛乳と牛肉の生産強化を目標に掲げている。
(注)インドネシアの乳牛および肉牛の頭数を増やす取り組みの一環として、2025年1月に同政府はブラジルからの生体牛の輸入解禁を発表したため、今後はブラジルからの輸入も見込まれる。
現地報道によると、生体牛の主要輸出地域である豪州北部では、肉牛の生産を後押しする好調な雨季が続いたことで、輸出可能な牛の頭数増が見込まれている。なお、インドネシア・オーストラリア包括的経済連携協定(IA−CEPA)に基づき、豪州はインドネシアに対して、25年は前年の生体牛輸出頭数を上回る70万頭の去勢牛の無関税枠を確保している。
一方で、豪州の輸出業者は、(1)生体牛輸出に際して豪州海事安全局の厳しい認証基準を満たす船舶のみ使用が可能なこと、(2)南米産生体牛に対する中東からの需要により船舶が利用され、利用可能な大型船舶の確保が難しくなっていること−などから、輸送能力が、例年に比べて不足していることを懸念している。
【田中 美宇 令和7年4月18日発】
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