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2025/26年度のサトウキビの公正収益価格を引き上げ (インド)

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最終更新日:2025年5月13日

 インドの首相が委員長を務める内閣経済対策委員会(CCEA)は2025年4月30日、2025/26年度(10月〜翌9月)のサトウキビの公正収益価格(FRP:Fair and Remunerative Price)を公表した。同価格は実質的な最低買取価格であり、製糖工場はこれを上回る価格で生産者からサトウキビを買い取ることが法的に義務付けられている。また、同価格は農業コスト・価格委員会(CACP:Commission For Agricultural Costs And Prices)の勧告に基づき、各州政府やその他の利害関係者との協議を経て決定される。

サトウキビのFRPは前年度からやや引き上げ

 2025/26年度のサトウキビのFRPは、1キンタル(100キログラム)当たり355ルピー(650円:1ルピー=1.83円(注1)、前年度比4.4%高)と前年度から同15ルピー(27円)引き上げられた(図)。基準となるサトウキビの糖回収率は従前と変わらぬ10.25%とされ、糖回収率が0.1%上回るごとに同3.46ルピー(6.33円)の上乗せ、同じく0.1%下落するごとに同額の減額がされる。ただし、サトウキビ生産者の利益を保護するため、糖回収率が9.5%を下回る場合には減額を行わず、一律に同329.05ルピー(602円)が支払われる。公表されたFRPは、25年10月1日から開始する25/26年度において、製糖工場が生産者からサトウキビを買い取る際に支払われる価格に適用される。

(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の4月末TTS相場を使用。
図

業界はFRP引き上げを歓迎する一方、砂糖の最低販売価格の引き上げも要請

 インド砂糖・バイオエネルギー製造業者協会(ISMA)など砂糖業界団体は、FRPが引き上げられたことに歓迎の意を示した。これにより、インド国内に約5500万戸あるサトウキビ生産者の収益が25/26年度には2000億ルピー(3660億円)以上増加し、総額で約1兆2000億ルピー(2兆1960億円)に達するとしている。また、FRPの引き上げはサトウキビ生産者の生活を向上させるだけではなく、サトウキビが重要な収入源となっている農村の経済全体を強化するとした。
 その一方で、製糖業者から卸売業者などへの砂糖の最低販売価格(MSP:Minimum Selling Price)やエタノールの調達価格をサトウキビのFRPの引き上げに整合させるよう中央政府に要請した。MSPは、サトウキビ生産者の利益の保護や製糖業者の収益を改善するため、2018年6月に1キンタル当たり(注2)2900ルピー(5307円)で導入され、19年2月には同3100ルピー(5673円)に改訂されたが、それ以降は据え置かれている。
 ISMAは、FRPの引き上げはサトウキビ生産者に利益をもたらす一方で、製糖工場にとっては原料コストの上昇にもつながることにも言及し、砂糖の販売価格とエタノールの調達価格が同様に調整されることで、製糖工場は財政的な負担なしにこれらのコスト増を吸収することができるとしている。また、このような調整により、製糖工場はキャッシュフローが改善し、サトウキビ生産者に適時に支払うことができるとした。
 さらに、西インド製糖協会(WISMA)も同様にサトウキビのFRP引き上げを歓迎し、MSPについても引き上げの必要性を強調した。具体的には、砂糖業界を財政危機から脱却させるために、MSPを1キンタル当たり4200ルピー(7686円)に増額するよう中央政府に要請するとした。
 
(注2)MSPは通常1キログラム当たりの価格で表されるが、ここでは1キンタル(100キログラム)当たりの値に換算したものを示した。
 
【調査情報部 峯岸 啓之 令和7年5月13日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9806