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米国における食品用着色料の規制・承認の動き(米国)

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 米国では、2025年に入ってから食品に使用する着色料の規制や承認が断続的に発表されている。第二次トランプ政権下で米国保健福祉省(HHS)の長官に就任したケネディ氏が提唱する「Make America Healthy Again(米国を再び健康にする)」に沿った対応とされており、米国食品医薬品局(FDA)を中心に検討が進められている。

1.米国の着色料禁止の動き

 連邦政府による着色料をはじめとする食品、医薬品および化粧品に対する添加物についてはFDAの使用承認が必要となる。加えて、着色料の規制に関しては、これまでも2023年10月にカリフォルニア州で赤色3号を含む4つの食品添加物の使用を禁止する州法が施行されるなど、各州で動きが進んでいる。
 代表的な着色料である赤色3号は、別名エリスロシンとも呼ばれる。鮮やかなチェリーレッドの色味を与えるため50年以上食品や医薬品に利用されてきた着色料であり、キャンディやゼリーなどの菓子のほか、ハムやソーセージなどの加工食品にも使用されることがある。FDAは、これまで赤色3号について人体に対する安全性に懸念はないとして使用を許可していた一方で、NGOである米国の公益科学センター(CSPI)などが提出した請願書を受け、デラニー条項(注)に基づき、25年1月15日、赤色3号の使用を許可する着色料添加規制の廃止を公表した。これにより、食品に関しては27年1月15日から、医薬品に関しては28年1月18日から赤色3号の使用は禁止されることとなる。
 
(注)デラニー条項:ヒトだけでなく、動物にがんを引き起こすことが判明した食品添加物や着色料を認可することを禁止する米国における制度。赤色3号についてラット試験で認められた甲状腺での発がんについては、ラット特有のホルモン機序によるものであるとされ、人では安全性上問題とならないと考えられており、今般の発表においても「人に危険を及ぼす科学的な根拠が認められたわけではない」とされている。米国の赤色3号に対する規制の背景については厚生労働省「赤色3号(エリスロシン)を含有する内用医薬品等の安全性について 」をご参照下さい。
写真1 新たに規制対象となる着色料を含む菓子
写真2 新たに規制対象となる着色料を含む畜産加工品
 州単位では、カリフォルニア州が前述の州法に加え、27年までに公立学校の給食から、FDAが承認していた6種類の着色料(青色1号、青色2号、緑色3号、赤色40号、黄色5号、黄色6号)の使用を禁止することとしている。これに追随し、ウェストバージニア州(25年8月)、ユタ州(26年9月)、バージニア州(27年1月)が、公立学校の給食または公立学校で販売される食品に対して着色料の使用を禁止することとしている。なお、ウェストバージニア州については、28年1月以降、州内で販売される食品についても着色料の使用を禁止することとしている。
 このような状況の中、FDAは25年4月22日、着色料を段階的に廃止する方針を公表した。赤色3号に加え、米国でオレンジの皮の着色に使用するシトラスレッド2およびソーセージなどのケーシングの着色に使用するオレンジBの承認取消手続きを開始するとともに、米国内の食品業界と連携し、6種類の着色料(青色1号、青色2号、緑色3号、赤色40号、黄色5号、黄色6号)を26年末までに食品から排除する方針としている。また、赤色3号については、食品企業に対して前倒しして使用を禁止するよう要請した。

2.FDAは、新たに3種類の着色料を承認

 FDAは2025年5月9日、食品に使用できる着色料の種類を拡大し、3つの新たな着色料添加物の申請を承認した。承認されたのは、ガルディエリア抽出物、バタフライピー抽出物、カルシウムリン酸塩である。
 ガルディエリア抽出物は、ガルディエリア・スルファリア(藻類)から抽出された青色の色素であり、主に飲料、菓子、乳製品への使用が認められた。バタフライピー抽出物は、乾燥した花びらから抽出され、鮮やかな青色から濃い紫色、そして、自然な緑色まで幅広い色調を実現できるとし、これまでも主に飲料で使用が認められてきたが、今般、シリアルやスナックへの使用が認められた。カルシウムリン酸塩は白色の着色料であり、調理済み鶏肉製品や菓子のコーティングなどへの使用が認められた。
 一方、4月22日に承認手続きを進めるとされた着色料のうち、日本では菓子などに使用されるクチナシ青は承認されなかった。
 これまでの着色料をめぐる政策の転換により、米国国内企業に加え、米国に食品を輸出する企業でも色素の切り替えなどの対応が求められることとなった。詳細については公表されていないが、HHSは、これまでに業界大手企業との意思疎通を行ってきたとしており、25年4月22日以降、タイソンフーズをはじめとする一部の大手企業は、26年末までに今回の規制の対象となる着色料の使用禁止を表明している。
【調査情報部 令和7年5月16日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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