米国・インディアナ州知事は2025年5月6日、州内における細胞性食品(動物の細胞をその生物の体外で人為的に培養して得られた製品)の製造や販売を禁止する法案に署名した。これにより同州法は7月1日より施行される。
同州法は、インディアナ州内における細胞性食品の製造、流通、販売を禁止している
(注1)。違反した場合は、最大1万米ドル(143万5700円:1米ドル=143.57円
(注2))の罰金に加え、繰り返しまたは継続的に違反した者については、裁判所による販売差止命令の対象となる。この禁止措置は、25年7月1日から27年6月30日までの時限措置となっている。また、27年7月以降、同州で細胞性食品を販売する場合には「これは模造肉製品( IMITATION MEAT PRODUCT )です」という文言を表示する必要がある。法案を提出したベアード州下院議員(共和党)は、「食肉生産者を保護し、消費者に対する食品の透明性、安全性を確保するためのもの」と目的を述べ、2年間の時限措置は、細胞性食品が比較的新しい製品である中、消費者への安全性が確認されるための猶予期間であるとした。
細胞性食品の普及を推進する非営利団体のグッドフードインスティテュート(GFI)によると、細胞性食品の販売などを禁止する州法は、24年に12の州で審議されたものの、同年中に成立・施行された州はフロリダ州とアラバマ州
(注3)の2州のみであったとされる。しかし、25年に入ると、ミシシッピ州およびモンタナ州の2州においても州法が成立した。そして、今般の州法成立により、インディアナ州はこれらの州に続く5番目の州となった(図、表)。さらに、25年5月時点で、イリノイ州やネブラスカ州でも細胞性食品の販売などを禁止する法案が提出されている。このうち、ネブラスカ州では5月14日に上院で法案が可決されており、米国で6州目の事例になると見込まれている。
なお、フロリダ州法に対しては、細胞性食品の製造に取り組むアップサイド・フーズ社が24年8月、州際通商(州間商取引)条項に反するなどとして訴訟を提起しており、現在も係争中となっている。
一方で、米国食品医薬品局(FDA)は25年3月7日、細胞性食品企業のミッション・バーンズ社による培養豚脂の市販前協議
(注4)を終了し、米国の細胞性食品企業に対する3例目の承認を行うなど、製造サイドにおける前向きな動向もみられる。
(注1)同州法では、培養して得られた食肉製品(cultivated meat product)を禁止の対象としている。
(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2025年4月末TTS相場。
(注3)海外情報「アラバマ州が培養肉などの細胞性食品の製造・販売を禁止、米国で2州目(米国)」をご参照ください。
(注4)FDAによる任意の安全性評価。今後、外食店および小売店での販売が計画されているが、正式な販売には米国農務省(USDA)による施設や製品ラベルの承認が必要。23年6月、細胞性食品企業2社が鶏細胞性食品の販売承認を得て、一部地域の外食店において試験的に提供を行った。詳細は海外情報「鶏細胞性食品企業2社、米国農務省から販売認証(米国)」をご参照ください。