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中国農業農村部、肉牛・乳牛市況とトウモロコシなど栽培状況を公表(中国)

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 中国農業農村部は2025年4月18日、国務院新聞弁公室主催のメディア向け定例会である「第1四半期農業農村経済状況の紹介会」(注1)において、肉牛および乳牛の市況低迷への救済措置、トウモロコシなどの春季穀物の栽培状況について、記者からの質問に答える形で見解を示した。

 (注1)2024年は第1四半期と第3四半期に実施された。第1四半期の紹介会については海外情報『中国農業農村部、養豚生産能力の調整状況に関し見解を公表(中国)』(令和6年5月8日発)を、第3四半期の紹介会については『中国農業農村部、豚と牛の生産動向について見解を公表(中国)』(令和6年11月8日発)をご参照ください。

肉牛および乳牛に対する支援措置についての見解

 農業農村部発展規画局長の陳邦勲氏は、「確かに、2024年は中国の牛肉および牛乳市場は需給のバランスが崩れて価格が下落し続けたことで、飼育農家は赤字に陥ったため、それらの生産を安定化させるための文書(注2)を発出し、支援してきた。これらの取り組みが奏功し、肉牛飼育における赤字は徐々に改善しており、一部の地域ではすでに黒字化を達成した。他方で、牛乳については旧正月後の消費が落ち込む時期と重なったこともあり、価格が低いまま移行している」と述べた後、主な支援措置として以下の3つを紹介した。

1 基礎的な生産能力の安定化を着実に実施する
 母牛群の品質および生乳生産能力の向上を市町村全域で実施するなどの各種プロジェクトを組織的に実施し、地方政府によるプロジェクトへの資金支出を促す。金融関係機関との連携を強化して信用保険を推進し、飼育農家が直面している資金不足を緩和する。速報値によれば、2024年末までの主要銀行による肉牛および乳牛飼育関係者への貸付資金は1600億元(3兆1856億円、1中国元=19.91円(注3))を超えており、23年から顕著に伸びた。産業の各チェーンを密接に連携させ、酪農・乳業における生産と加工の一体的な発展も進めていく。

2 コスト削減を着実に実施する
 飼育農家が「優良な牛を残し、劣った牛を淘汰(とうた)する」よう誘導し、牛群の品質向上を図る。飼料節約プロジェクトを実施し、飼料比率の優良化(穀物および大豆かすの使用割合の縮小)、給餌の節約と無駄の抑制、飼料効率の向上を図る。なお、2024年に作物栽培で調整(注4)を行った面積は2231万ムー(148万7300ヘクタール)に及ぶ。

 (注2)中国農業農村部が肉牛乳牛生産の安定化に関して発出した通知については海外情報『中国農業農村部、肉牛乳牛生産の安定化に関する通知を公表(中国)』(令和6年11月8日発)をご参照ください。
 (注3)レートについては三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均為替相場」の25年4月末日TTS相場を使用した。
 (注4)原文では「糧改飼」といい、コメや小麦だけの単一生産ではなく、これらに加えて飼料作物または経済作物を組み合わせて栽培することを勧める取り組みのことを指す。


3 消費を着実に促進する
 生乳取引の仕組みを規範化し、生乳取引量の安定化を図る。滅菌乳に関する国家基準の修正(注5)を機に、国産生乳の利用拡大を図っていく。企業による国民の嗜好に合わせた乳製品や民族の特色を有する乳製品の開発を推進し、多様化する消費ニーズを満たしていく。また、牛肉の等級に関する基準も修正し、牛肉の品質向上と価格の適正化を進めていく。

 (注5)国家衛生健康委員会と国家市場監督管理総局が2025年3月27日に共同で発出した「殺菌乳の全国食品安全基準」の改正により、滅菌乳の原料として生乳のみを認め、全粉乳などの使用は認められなくなる。25年9月16日に施行される。

春季穀物の播種・栽培の状況および今後の措置に対する見解

 農業農村部種植業管理局長の潘文博氏は、「確かに春季に播種・栽培する穀物の量は、年間の食料生産目標の達成に占める割合が大きい。今年の春季は、例年よりも気温が高かったため関心があると思う」と述べた後、以下の通り回答した。

1 「年間食糧生産目標7500億トン程度」の目標を達成していく。
 今年も食糧生産に対する支援を強化し、小麦および早米(収穫時期が早いコメ)の最低購入価格を引き上げ、トウモロコシおよび大豆生産者とコメ生産者への資金支援を安定的に実施していく。

2 単収増加プロジェクトの実施は食糧生産能力の向上という重要な取り組みに関係する。
 単収の増加に向けて、今年の春季栽培穀物から「4つの良」、すなわち良い栽培地、良い種苗、良い機械および良い方法の融合を目指してきた。1)良い栽培地とは、地力の増進に力を入れ、また、高標準水田の整備を加速すること、2)良い種苗とは、特に抜きん出て優れた品種、具体的には食味の優れたコメ、強力粉・薄力粉用の小麦、密植性が高く機械化が進み易いトウモロコシ、油含有量が多いまたは高たんぱく質大豆などの品種のこと、3)良い機械とは、特に高性能の播種機械を利用すること、4)良い方法とは、トウモロコシにおけるより精緻な密植栽培やコメにおける集中育苗、機械による植え付けなど、単収増加に資する栽培方法を取り入れること−である。

3 市場や農家から好評となったのは配水と施肥の一体化技術である。
 このような使い勝手の良い技術は普及していく。専門家集団の力を借りた技術力を基礎として、今後も科学的に、問題があればそれを解決していくことで、「4つの良」について広範囲で成果を出していく。
【調査情報部 令和7年5月26日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9530