農業農村部発展規画局長の陳邦勲氏は、「確かに、2024年は中国の牛肉および牛乳市場は需給のバランスが崩れて価格が下落し続けたことで、飼育農家は赤字に陥ったため、それらの生産を安定化させるための文書
(注2)を発出し、支援してきた。これらの取り組みが奏功し、肉牛飼育における赤字は徐々に改善しており、一部の地域ではすでに黒字化を達成した。他方で、牛乳については旧正月後の消費が落ち込む時期と重なったこともあり、価格が低いまま移行している」と述べた後、主な支援措置として以下の3つを紹介した。
1 基礎的な生産能力の安定化を着実に実施する
母牛群の品質および生乳生産能力の向上を市町村全域で実施するなどの各種プロジェクトを組織的に実施し、地方政府によるプロジェクトへの資金支出を促す。金融関係機関との連携を強化して信用保険を推進し、飼育農家が直面している資金不足を緩和する。速報値によれば、2024年末までの主要銀行による肉牛および乳牛飼育関係者への貸付資金は1600億元(3兆1856億円、1中国元=19.91円
(注3))を超えており、23年から顕著に伸びた。産業の各チェーンを密接に連携させ、酪農・乳業における生産と加工の一体的な発展も進めていく。
2 コスト削減を着実に実施する
飼育農家が「優良な牛を残し、劣った牛を淘汰(とうた)する」よう誘導し、牛群の品質向上を図る。飼料節約プロジェクトを実施し、飼料比率の優良化(穀物および大豆かすの使用割合の縮小)、給餌の節約と無駄の抑制、飼料効率の向上を図る。なお、2024年に作物栽培で調整
(注4)を行った面積は2231万ムー(148万7300ヘクタール)に及ぶ。
(注2)中国農業農村部が肉牛乳牛生産の安定化に関して発出した通知については海外情報『中国農業農村部、肉牛乳牛生産の安定化に関する通知を公表(中国)』(令和6年11月8日発)をご参照ください。
(注3)レートについては三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均為替相場」の25年4月末日TTS相場を使用した。
(注4)原文では「糧改飼」といい、コメや小麦だけの単一生産ではなく、これらに加えて飼料作物または経済作物を組み合わせて栽培することを勧める取り組みのことを指す。
3 消費を着実に促進する
生乳取引の仕組みを規範化し、生乳取引量の安定化を図る。滅菌乳に関する国家基準の修正(注5)を機に、国産生乳の利用拡大を図っていく。企業による国民の嗜好に合わせた乳製品や民族の特色を有する乳製品の開発を推進し、多様化する消費ニーズを満たしていく。また、牛肉の等級に関する基準も修正し、牛肉の品質向上と価格の適正化を進めていく。
(注5)国家衛生健康委員会と国家市場監督管理総局が2025年3月27日に共同で発出した「殺菌乳の全国食品安全基準」の改正により、滅菌乳の原料として生乳のみを認め、全粉乳などの使用は認められなくなる。25年9月16日に施行される。