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森林減少フリー製品規則の国別リスク分類が公表、日本は「低リスク国」に(EU)

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 欧州委員会は2025年5月22日、本年12月30日から適用予定の森林減少フリー製品規則(EUDR:EU Deforestation Regulation)(注1)の国別リスク一覧案(ベンチマーキングシステム)を公表した。生産国は、森林減少フリーでない産物が生産されるリスクの度合いに応じて、3つのカテゴリー(高リスク、標準リスク、低リスク)に分類され、カテゴリーに応じて必要なデューデリジェンス(DD)の内容が異なる。
 
(注1)EUDRは、牛、カカオ、コーヒー、パーム油、ゴム、大豆、木材の7品目および派生製品について、これらの生産が森林破壊(deforestation)を引き起こしていないことの調査(デューデリジェンス)と報告を義務付けるものである。事業者は、調査の結果、対象製品が森林破壊に該当しない製品であることを証明できなければ、当該製品のEU内流通は不可となる。
 EUDRの詳細は「国内関係者向けEUの森林減少防止に関する規則((EU)2023/1115)の実施にかかる要点(農林水産省、令和6年度輸出環境整備推進委託事業)」をご参照ください。

 
 日本は「低リスク国」に分類された。製品が低リスク国で生産された場合、DDにおけるリスク評価とリスク低減措置が免除される。また、事業者の検査率が最低1%以上(標準国は最低3%以上、高リスク国は最低9%以上)と優遇される。
 このほかの「低リスク国」には、EU加盟27カ国、英国、米国、豪州、ニュージーランド、中国、韓国、インド、ベトナムなど140カ国が分類された。ブラジル、アルゼンチン、メキシコ、インドネシア、マレーシアなどは「標準リスク国」となった。「高リスク国」は、ロシア、ベラルーシ、北朝鮮、ミャンマーの4カ国のみとなっている。(注2)
 
(注2)国別の分類は欧州委員会ホームページをご参照ください。
 
 欧州委員会は、このリスク分類は流動的であり、25年10月に予定されている国連食糧農業機関(FAO)のデータに基づいて、26年に再評価を行うとしている。

4月には運用の簡素化案も発表

 EUDRを巡っては、域内・域外から制度の簡素化などを求める声が上がっており、欧州委員会は、2025年4月15日にEUDRの簡素化も発表している。簡素化の内容は以下の通りである。
 (1) 事業者は、EU市場に上市する際に、デューデリジェンスステートメント(DDS)の提出が必要になるが、この提出を出荷ごとまたはバッチごとではなく、年1回の提出とすることを可とする(ただし、DDSで対象とする製品数量をDDの実施対象数量が超えた場合、新たなDDSを別途提出する必要)。
 (2) EU市場に以前上市された製品を再輸入する場合、大企業は既存のDDSを再利用可とする。
 (3) サプライチェーン下流の大企業は、供給事業者のDDSの参照番号を取得し、自身のDDSで当該参照番号を利用可とする。
 (4) 同一の代理人が、企業グループ内の複数の企業を代表してDDSの提出可とする。
 また、同時に委任規則案も公表され、検査・分析・試験目的のサンプル製品についてはEUDRの対象外とすることなどが提案されている。欧州委員会はこれらの簡素化により、事業者の負担が30%減少するとしている。
 委任規則案に対するパブリックコメントには、域内・域外の各国から、牛皮革の対象製品からの除外を求めるなど291の意見が提出されており、今後これらの意見が反映されるかが注目される。
【調査情報部 令和7年5月29日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-8527