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2025/26年度予算案、野党は緊縮財政と批判(NZ)

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 ニュージーランド(NZ)のウィリス財務大臣は2025年5月22日、2025/26年度(7月〜翌6月)予算案を発表した。3党連立政権(国民党、ACT党、NZファースト党)として予算案を発表するのは今回が2回目となり、新たな企業投資を促し経済の持続的な回復を目指すとともに、財政健全化と債務削減にも重点を置くとした。また、今回示された24/25年度から28/29年度までの年平均新規支出額は1億3380万NZドル(115億7370万円:1NZドル=86.50円(注1))と、前年度の予算案で示されていた3億2050万NZドル(277億2325万円)から大きく減少しており、野党は生活費高騰に苦しむ国民に寄り添っていないとして批判を強めている。
 農業関連予算では、既存の基金である「持続可能な食品と繊維の未来基金(注2)」を組み替え、対象範囲を拡大した「第一次産業成長基金」に4年間で2億7903万NZドル(241億3610万円)を新たに措置しているものの、その他に農業に特化した新たな支援は措置されていない。一方で、継続的な予算としては、バイオセキュリティ対策を中心に25/26年度単年で11億1965万NZドル(968億4973万円(対前年比▲3.5%))が措置されている(図)。

(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の25年4月末TTS相場。
(注2)NZの第一次産業の持続可能な発展を支援するための基金。業界団体などと共同出資する形で、木質バイオマスの利活用や家畜の真菌性皮膚症の迅速診断技術の開発など、さまざまなプロジェクトに投資を行っている。
図
 また、農業に特化した予算ではないが、関連する新規予算の詳細は以下の通り。なお、各予算額は今後4年間の総額となる。

1. 遺伝子技術規制機関の設立

(2287万NZドル:19億7823万円)
 連立政権を形成する国民党は「バイオテクノロジーの活用」を公約の一つとして掲げ、遺伝子技術の利活用により、気候変動への対応やヘルスケア産業の推進、自然環境の保護、農業生産性の向上などを目指すとしている。現在、遺伝子技術の利用規制の廃止や規制機関の設立を盛り込んだ法案が提出されており、今年中に可決される見込みとなっている。

2. 7つの王立研究機関を統合した3つの新たな研究機関の設立

(2000万NZドル:17億3000万円)
 研究機能の効率化とイノベーションの促進を目的として、農業系の政府研究機関であるアグリサーチを含む7つの王立研究機関を統合し、1)バイオエコノミー、2)地球科学、3)健康と法医学−それぞれに特化した3つの機関への再編を支援する。なお、アグリサーチはバイオエコノミー部門に統合される。

3.資源管理法改革の推進

(2384万NZドル:20億6216万円)
 現政権は持続可能な資源管理の促進を目的として、資源管理法の見直し(注3)を進めており、同予算では新たな法律への円滑な移行や、地方自治体や農業をはじめとする各事業者の新たな規制への対応等を支援する。

(注3)海外情報「ニュージーランド政府、資源管理法改正案の概要を発表(NZ)」をご参照ください。

4.輸出支援 -貿易協定の活用、非関税障壁の解消、アジアとの関係強化

(8375万NZドル:72億4438万円)
 貿易黒字の増加を目的として、インド、シンガポール、その他東南アジアの諸国との関係強化、非関税貿易障壁への対応、既存の自由貿易協定の活用拡大に向けた取り組みを支援する。
【調査情報部 令和7年5月29日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03‐3583-4389