中国最大のベーカリー展示会に国内主要乳製品企業などが出展（中国）

　中国最大のベーカリー（製菓・製パン）業界の展示会であるベーカリーチャイナ（中国国際烘培展覧会）が2025年5月19〜22日に上海市で開催された。同大会には、ベーカリー業界に関係する業態（原材料系のほか設備系、包装資材系、国際関係など）の企業が30の国と地域から2200社以上出展した。
　今年の同展示会は、同じく食品関係の展示会として中国トップクラスを誇るSIAL・上海^（注1）と会期が重複したことから、大手企業がどちらに出展するか注目を集めたが、乳製品企業の多くは、最大手の伊利をはじめとして本ベーカリーチャイナへの出展になった。
　以下に、最近の中国の乳製品の消費とベーカリー市場の状況、ベーカリーチャイナに出展した乳製品企業の模様を紹介する。

　（注1）海外情報「上海で開催された国際肉類大会、業界関係者が今年も講演（中国）」（令和7年6月6日）をご参照ください。

　中国乳業協会が2024年7月に発表した「中国乳業品質報告2024」によれば、23年の中国の1人当たり乳製品消費量は42.4キログラム（家庭内、外食など消費形態を問わない）であり、これは政府が推奨する「食事バランスガイド2022」の推奨年間消費量（109.5〜182.5キログラム）の22.6〜37.7％に留まっている。同協会は30年に1人当たり乳製品消費量が50キログラムに達する可能性があるとしているが、24年は同35.9キログラム（前年比15.3％減）に留まったとされ、前年からかなり大きく減少した。
　農畜産物の生産・経営が専門の大学教授によれば、中国人の乳製品消費が伸びない最大の理由は中国人の半数以上が乳糖を分解する酵素が不足していることを挙げており、牛乳の消費が伸び始めたのはミルクティー（中国語で「奶茶」）の消費が増えてからだとされている。そのほか、そもそも牛乳を飲む習慣がないこと、牛乳よりも安い製品（豆乳、ココナッツミルク、オーツミルクなど）が十分に普及していることなどが、乳製品消費が伸び悩む理由としている。

　中国の業界分析メディア大手によれば、2023年の中国のベーカリー食品の小売市場規模は5614.2億元（1兆1402億円：1元＝20.31円^（注2））とされ、前年比9.2％増の伸びとなった。同社の市場分析担当者は、29年には8595.6億元（1兆7458億円）に達すると予測している。消費者の主力は月収が5000〜1万5000元まで（10万1550〜30万4650円）の層で、全体の55.8％を占め、また、90.6％以上の消費者は週に1回以上、ベーカリー商品を購入しており、中国消費者には既にベーカリー消費が定着したとしている。
　他方で、ベーカリーチャイナに出展したベーカリー向け原材料の卸売業者は、同業種の主要企業の24年の売上額は、23年に比べて軒並み下がっていると指摘している。また、同社ではベーカリー商品が中国人の食事の主食になることをもって「ベーカリー商品が中国に定着した」と考えているが、朝食にベーカリー商品を選ぶ者が出てきたのは上海市の若者層ぐらいであり、中国でベーカリー商品が定着するまでにはほど遠い状況にある。

　（注2）三菱UFJリサーチ＆コンサルティング株式会社「月末・月中平均為替相場」の2025年5月末日TTS相場を使用した。

　中国では景気の低迷に伴い、小売業、飲食業ともに成長が鈍化し、また、関係企業の利益率は下がっているとされている。そのような中でもベーカリー市場は比較的伸びているとされ、消費が伸び悩む乳製品企業は市場開拓を目的にベーカリーチャイナに出展したと考えられる。
　中国乳製品企業最大手の「伊利」（写真1）は2025年、さらなる成長と健康な消費の牽引を目指し、「栄養性」と「高次加工」を二大戦略として掲げている。「栄養性」の追求として、例えば、同じく中国漢方業界トップクラスの「同仁堂」と共同開発し、中医学の知恵を取り入れた効能性乳製品7種を新たに発売した。ベーカリーチャイナでは、牛乳だけでなく加工品であるホイップクリームやアイスクリーム、また、これら製品を用いた製パンの機械による自動製造の実演などにより存在をアピールした。
　また、出展した乳製品企業の多くが、「ワンストップサービスの提供」（牛乳、バター、クリームなどの原材料の提供はもとより、チーズケーキやパンなどの商品開発まで一貫して支援を行うこと）をアピールしていた（写真2）。