米国6州、補助的栄養支援プログラムから清涼飲料水などを除外(米国)
最終更新日:2025年6月17日
米国では、国内の低所得世帯の栄養的に適切な食品の購入に対する補助として、補助的栄養支援プログラム(SNAP:Supplemental Nutrition Assistance Program)が運用されている。第二次トランプ政権下では、同プログラムを所管する米国農務省(USDA)を中心に、運用を変更する方向で対応が続いている。特に最近では、各州において清涼飲料水(soft drinks)などをSNAP対象品目から除外する動きがある。
1.米国におけるSNAPの概要について
米国には、低所得者、高齢者、障害者などが、本人や各世帯の家族を養うための支援として、SNAPが存在している。SNAPはクレジットカードのように食品の購入に利用できるカードが給付され、毎月電子的に入金される仕組みとなっている。SNAPを利用して購入できる品目は、連邦政府によって大まかに定められており、野菜や肉、乳製品、穀物類のほか、菓子やジュースなどの飲料もその対象となっているが、アルコール飲料やコーヒーなどの嗜好品や調理済み総菜などは対象外となっている。SNAPの対象となる具体的な商品や給付対象となる世帯年収の基準は州ごとに異なっており、各世帯によっても所得状況や人数に応じて給付額が異なっている。
SNAPは、米国農業法に基づくプログラムの一つであり、連邦政府がSNAPの給付費用の全額を負担し、プログラムの運営費用は州と分担している。SNAPに対する予算は非常に大きく、2025年度(24年10月1日〜25年9月30日のUSDA予算2133億米ドル(30兆9007億円:1米ドル=144.87円(注1))のうち、1233.3億米ドル(同17兆8661億円)がSNAPに割り当てられ、予算額全体の約6割を占めている(図1)。農業法に基づくプログラムの中でも最も予算規模が大きく、歳出の削減を目指す第二次トランプ政権下では、連邦議会で審議されている包括的な税制および歳出に関する法案である「大きく美しい法案( One Big Beautiful Bill )」の中で、SNAPの受給要件の変更や管理方法の変更などにより予算を削減する方向で調整が進められている。
(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2025年5月末TTS相場。
2.SNAPにおける清涼飲料水などの除外の動き
これまで、SNAPにより購入できる品目については、ソーダなどの清涼飲料水も含まれていたが、米国保健福祉省(HHS)の長官に就任したケネディ氏は、SNAPから加糖飲料(sugary drinks)を除外することを公言していた。また、第二次トランプ政権下では、米国内での健康に関する課題に対する原因の調査・解決を行うためMAHA委員会(注2)を設置しており、同委員会が25年5月22日に公表した最初の調査報告書では、SNAP受給対象世帯の子供は、非受給対象世帯と比較して、加糖飲料を多く消費する傾向があり、疾病発症率も高いとされている。
(注2)MAHAは、「Make America Healthy Again」(米国を再び健康にする)の略。
このような中で、ネブラスカ州、インディアナ州、アイオワ州、アイダホ州、ユタ州、アーカンソー州の6州は、SNAPの対象品目を変更した(25年6月10日時点。図2、表)。SNAPの運用については、州政府から変更の申請を行い、USDAが承認するプロセスが必要となるが、ネブラスカ州については25年5月19日に承認が行われ、今回SNAPの対象品目に設けられた具体的な除外項目を変更した最初の州となった。同州では、ソーダやエナジードリンクが対象品目から除外された。また、インディアナ州、アイオワ州については、いずれも5月23日に承認が行われた。インディアナ州では清涼飲料水およびキャンディ(注3)が、アイオワ州では清涼飲料水やキャンディやガムなど課税対象となるすべての食品(注4)が、それぞれSNAPの対象品目から除外された。さらに6月10日には、アイダホ州、ユタ州、アーカンソー州の3州について承認が行われた。アイダホ州は清涼飲料水、キャンディ、エナジードリンク、ユタ州では清涼飲料水、アーカンソー州ではソーダ、青果物の果汁50%以下のジュース類などの飲料、キャンディなどがそれぞれ除外された。 アーカンソー州を除く5州での除外は26年1月1日から、アーカンソー州は26年7月1日からの施行となる。
(注3)英語圏、特に米国では、飴やチョコレートを総称してキャンディといわれる。
(注4)アイオワ州では、食肉や野菜などの食材は非課税であるが、清涼飲料水、キャンディやガムなどは課税対象である。なお、ケーキやジャム、プレッツェルやポテトチップスのようなスナック菓子は非課税である。

これら6州のほか、21の州が同様の変更を行うべく検討などを行っているとされており、複数の州がUSDAに対してSNAPの運用の変更について申請を行っている。これらの動きに対し、米国飲料協会(ABA)は反対の声明を発表している。声明では、清涼飲料水やキャンディなどが制限対象となる一方で、ケーキやスナック菓子などは対象とならないことは矛盾していると指摘している。
【調査情報部 令和7年6月17日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9533