中国農業展望報告(2025−2034)を発表(野菜編)(中国)
最終更新日:2025年6月17日
中国農業農村部は2025年4月20日および21日、中国農業展望大会を開催し、今後10年間の農業を展望する「中国農業展望報告(2025−2034)」を発表した。同大会は14年から毎年開催されており、今回は24年の総括と34年までの農畜水産物の生産量や消費量の見通しが報告された。
本稿では同報告のうち、野菜について紹介する。
1.2024年の野菜需給動向
2024年は、作付面積が3億4800万ムー(2322万ヘクタール、前年比1.5%増)とわすかに増加したものの、生産量は8億2992万トン(同0.1%増)と前年並みになった(表)。これは同年7月から9月にかけての天候不順の影響とされている。同期には南部生産地域で断続的な降雨と局地的な高温が発生したことで露地栽培の播種・定植作業が遅れ、一部品種で生産量が減少した。また9月には、東北部、内モンゴル自治区の中部や西部、華北北部などで発生した急激な気温低下や長雨が収穫に影響し、冷涼地域の一部品種が早期に切り上がった。一方、これらを除いた時期では野菜の生育に有利な条件が整っていたことから、市場全体での供給は比較的充足していたとされている。
輸出量は、1497万トン(同12.8%増)とかなり大きく増加し、輸出額も186億6100万米ドル(2兆7034億円:1米ドル=144.87円(注1)、同3.1%増)とやや増加した。このうち、主要輸出品目であるにんにく(乾燥品および加工品を含む)は、野菜輸出総量の17.5%を占め、次いでトマト(加工品を含む)が同9.6%、たまねぎ(加工品を含む)が同8.4%となった。
消費量は、6億1230万トン(同0.3%増)と前年並みになった。前年に続き、健康志向の高まりから、野菜や果物の需要が高まっている。EC販売が拡大する中、コールドチェーンが発展したことで、野菜の流通効率は向上している。
価格面では、主要野菜28品目(注2)の全国平均価格が1キログラム当たり5.20元(106円:1元=20.31円(注1)、同2.4%高)とわずかに上回った。年間の価格は、おおむね例年の季節変動に沿って推移したものの、夏から秋にかけては歴史的な高水準となった。具体的には、2月は春節(旧正月)の需要に加え、寒冷な天候の影響で季節的な高値を記録したが、3月以降は天候の回復により供給量が増加したことで価格は下落し、6月には季節的な安値となった。その後、夏季には豪雨などの頻発で収穫や輸送が困難になったことや、一部の野菜では浸水による品質劣化で廃棄が増加したことで、7月から価格が上昇し、9月に最高値に達した。
(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2025年5月末TTS相場。
(注2)主要野菜28品目:中国国内で消費される野菜のうち、国が定期的に価格調査を行っているだいこん、にんじん、たまねぎ、れんこん、にんにく、しょうが、ばれいしょ、山くらげ、ほうれんそう、はくさい、ねぎ、セルリー、レタス、にら、キャベツ、チンゲンサイ、カリフラワー、花にら、とうがん、レンズマメ、きゅうり、かぼちゃ、なす、ピーマン、トマト、ズッキーニ、ひらたけ、しいたけの28品目。
2.2025年の野菜需給動向予測
2025年の生産量は、主産地でのインフラ整備の安定や、野菜の収益性が比較的高いことなどから、8億3110万トン(前年比0.1%増)と前年並みが予測されている。
輸出量は、1512万トン(同1.0%増)とわずかな増加が予測され、大幅な輸出超過が維持されるとみられている。
消費量は、引き続き順調に推移するものと見込まれることで、6億1319万トン(同0.1%増)と予測されている。
価格面では、24年下半期の価格が高水準で推移したことで生産者の増産意欲が高まり、作付面積が小幅に増加するとの見込みから、1キログラム当たり4.80〜5.00元(97円〜102円)と前年を下回ると予測されている。一方で、天候不順が多発する可能性も示されており、価格変動の可能性も指摘されている。
3.2034年までの野菜需給動向予測
野菜産業は量的成長から質的向上への転換期にあり、生産構造の最適化、施設栽培の生産性向上、技術革新の推進により、生産量と品質の倍増を達成し、市場供給の安定性と持続可能性を確保するとされている。これにより、2034年の生産量は8億3875万トン(基準期間比<22〜24年の平均値からの増減率>2.3%増)に達すると予測されている。政府による「全国現代施設農業建設計画(2023〜2030年)」では、今後、野菜の施設栽培の発展を強化することが提唱されており、30年までに施設栽培の作付面積が約30%増加することで露地栽培の面積がそれに応じて節約されると予測されている。
輸出量は、世界の貿易の複雑化などの影響により、中国の野菜輸出はより厳しい状況に直面するとされるが、栽培コストや気候条件の優位性のほか、輸出先や貿易対象品目の多様化により、34年には1724万トン(同29.3%増)に達すると予測されている。野菜の主要輸出先は日本、韓国、米国、ASEAN、EUなどであり、輸出主要品目はにんにく、きのこ類、トマト、しょうが、ピーマンなどが見込まれている。
消費量は、健康意識や高品質な野菜需要の高まりに合わせて今後も伸びていくとされ、34年には6億2145万トン(同3.3%増)に達すると予測されている。食生活の変化や共働き世帯の増加などの社会構造の変化から、調理済み野菜需要の増加など、消費者の野菜に対するニーズは多様化し、今後これらに対して野菜産業は適応していくとされている。
価格面では、野菜全体の供給量は潤沢であるが、価格は季節的な変動に基づいて推移する中、農地、人件費、生産資材などの生産コストの上昇に伴い、着実に上昇する可能性が高いとされている。また、消費者のニーズに合わせた高品質なブランド野菜の生産がますます増加していくとされ、それに伴い野菜単価の上昇も予測されている。
【峯岸 啓之 令和7年6月17日発】
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